第22話 原点回帰と果て無き決勝戦 (中編)
今回出てくる2つの技についての説明です。(作中にも簡単に説明が出てきます)
・鬼人流武術 伍の型 天龍ノ舞
→ 30秒程度空を蹴ることができる。ただし、体力の消費量が激しい。
・鬼人流武術 拾の型 光拳
→ 目で追うよりも早く移動して死角に行き、攻撃できる。ただし強靭なキック力が必要で、これまた体力の消費量が激しい。
私はこの試合に勝ちたい。そして、みんなで笑いたい!ただそれだけなの!だからお願い!
言うことを聞かない体の中で儚き少女、パトラはただひたすら祈っていた。
言うことを聞かない自分の体が、何かを成し遂げてくれると信じて。
「だからあたいは、あんたを倒す!何があっても!」
恐らくドラスは私よりも強い。そんなことは知ってる。それでも!
そう思ったパトラに、ドラスは冷たく言い放った。
「残念ながら、パトラさん。それは不可能なことです。ドラっち、とりあえずいつものをお願い!」
『おうよ!龍王息吹だな!じゃあ早速行くぜ!って言ってもあと四発ぐらいしか打てねぇけどな!』
来た!でもこのエネルギーの塊は、大きくて速い。恐らく避けるのは無理……でも!
「あたいの敵じゃあねぇんだよ!クソが!」
その刹那、パトラに飛んでくるエネルギーの塊を、異能により強化された拳で、迎え撃ちそして打ち消した。
「やるじゃない。でもパトラさんのHPゲージは無傷では済まなかったようね」
確かにその通りかもしれない。たった一回の攻撃で、HPゲージは減った。それは事実だ。でも!
「あたいを舐めるんじゃねぇよ!今度はあたいのターンだ!」
ドラゴンに乗っているドラスを引きずり下ろしてやるよ!
「鬼人流武術、伍の型、天龍ノ舞」
この技は跳躍を行なった後、落下時に再度空気を蹴ることで、まるで空を飛ぶように移動できる技。
つまりこれを使えば、宙を浮いている龍の元へ行けて、ドラスを地に叩きつけられる!
「よし!着いた!」
そしてようやく辿り着いた時、ドラスが少し驚きながら言った。
「あらパトラさん。随分と不思議な武術をお持ちのようで。まさか私の元へ来るとは。ですが、さようなら」
「さようなら?、そりゃテメェの方だ!鬼人流武術、拾の型、光拳!」
パトラがそう言った刹那、ドラスの視界にパトラの姿が消滅した。
「き、消えた……ど、どうなってるの?ドラっち……」
『さぁな?消えちまったぜ』
と、その次の瞬間消えてはずのパトラは、ドラスの背後に回りこんでいた。龍の目すらをも欺いて。
「テメェら、動きがオセェんだよ!反射神経がとろいんだよ!あたいのこと肉眼で見えねぇのかよ!だからこれでも喰らえッ!」
「グハッ……」
よし!私の拳でドラスを龍から引き剥がした!これで一歩前進!
そう思った時、ドラスが笑いながら言った。
「駄目ね私ったら。たかだか1週間程度しか異能を使っていないゴミクズしかいないのかと思ってたら、すごく面白い人がいた!
私の目ったら節穴ね。ドラっち!使っていいわよ!龍星群を!」
『いいのか?ミラにバレるかもしれねぇぜ!』
「全くドラっちは心配性ね。大丈夫よ!この試合に手加減は無用だわ!」
『分かったぜ!それじゃあ……龍星群!オリャァァーーー!!』
くっ、やっぱり使って来たか……しかもターゲットは私ただ一人。一般的に考えれば絶望的……か。でも!
「あたいを舐めるなって、言ってんだろッ!」
龍星群?エネルギーの集合体?関係ねぇ!殴って打ち消す。ただそれだけだろうが!
そう言ってパトラは、まるで雨のように降る龍星群を、全て拳で打ち消した。拳のみで。
「う、嘘……龍星群が……」
あまりの光景に思わず声を漏らしたドラスだったが、いきなり目が本気になり、パトラに向けて言い放った。
「パトラさん。いえ、私の好敵手であるパトラ。今からあなたを全力で倒します!ドラっち、貴方はこのガチバトルには参加しないで。
私とパトラの意地のぶつかり合いだから。それに、ドラッチみたいなチートに頼ってばかりだと、成長しないから!」
そう言うドラスに、ドラっちは漢らしく言った。
『おうよ!なら俺は、この勝負には水をささねぇ。ただ気が済んだら俺に言ってくれよ!
別にこの勝負で重要なことは、あくまでドラスの成長だからな!』
「ありがとうドラっち。じゃあ私はパトラを全力で倒すからッ!」
そう言ってドラスは地に降り立ち、パトラと再び戦い始めた。
「さて……どうするかな……ドラスの格闘術の想像がつかないが……」
とりあえず、ドラスの様子を探りながら少しずつHPを減らしていこう。
そう考えたパトラだったが、ドラスはその余裕すら与えなかった。
「私は間合いを詰めて、パトラに余裕を持たせない戦法なもんでッ!」
まずい!一瞬でお互い殴れる距離にまで近づいた!
しかもドラスは、他のチームメイトの2人の強化系統異能を受けているから、身体能力は高い。なら!
「あたいは意地でもドラスをねじ伏せる!とりあえず……一発殴るッ!」
そう言ってパトラの振った拳だったが、ドラスはそれを避け、逆にパトラを殴った。
「グハッッッ!!痛いじゃねぇか!ただ、これならどうだ!鬼人流武術 拾の型 光拳 !これを連発すれば!」
そういって放たれた連撃は、次々とドラスを捉え、着実にドラスのHPを削った。
「や、やるわね!やっぱりパトラ、貴方が私の好敵手よ!一気に私のHPを10%も削ったなんて」
「チッ、なんだよたったの10%かよ!あたいなんてさっき打ち消した龍星群の反動で、残り60%しか残ってないんだぜ!」
「ふっ、貴方はその程度?」
何を!あたいを舐めるんじゃあ……ねぇ!
「鬼人流武術 伍の型 天龍ノ舞と拾の型 光拳の合わせ技!光龍ノ拳!」
高速で移動しながら空を舞い、そして攻撃する!これは体力の消費が凄いけど、必ず高ダメージを与えられる!
「グハッ……オエッ……ブハッ……え、嘘……一気に残りHPが30%?何があったの?目が追いつかなかった……」
ドラスが……同様……している……体力を減らした甲斐があった。
そう思った時、ドラスが遂に裏切った。
「流石に負けたくないから、この勝負辞退するわね。ごめんねパトラ、―龍王息吹をお願い!ドラっち!」
『あいよ!オリャァァァーーーー!!!!』
そう言って放たれたエネルギーの集合体は、すでに疲労したパトラに避けさせる時間を与えず、そのまま撃ち抜いた。
撃ち抜かれたパトラは、何かに裏切られたような気持ちと、手加減されていたことに対する屈辱、そして怒りを持ち、そしてただ一言、
「次戦う時は手を抜くなよ……」
と言いながら、リタイアしていった。
☆☆☆☆☆☆
「パトラ!嘘だろ……あのパトラが、負けた……」
同時刻、パトラが負けたと分かった刹那、誠は驚きのあまり気を失いそうになった。
だがそんな誠に向かってスレイヤが言った。
「今ならドラスさんもあの龍も疲労しているから、他の2人を倒せる!だから行くわよ!
パトラが負けたからってクヨクヨしないで!ほら誠!」
あぁ、そうだよな。パトラが残してくれたこのチャンス、逃すわけには……
「いかねぇよな!スレイヤ!2人の所まで行って、速攻でHPを0にするぞ!」
そう言うと、スレイヤが真面目な顔で言った。
「いえ、誠が2人の注意をひきつけて、私が絶対氷結を使えば良いわ」
「おいスレイヤ、お前の異能は氷結じゃないのか?」
「それは私の基本的な異能で、今言ったのは私の考えた応用技よ。名前は適当につけたわ」
へぇ〜。要するに異能を頭を使って活用したってことか。そんなことが可能なんだ……
「ちなみに絶対氷結は、周りの木々ごと丸ごと氷結をして、ドームを作って閉じ込める技なの。
まぁ私がそのドームを常に氷で補強していれば、壊れることはないけど、その代わりに作るのに3分くらいかかって、しかもドーム建設地の近くにいないと、作れない技よ」
長々と解説ありがとうスレイヤ。いつの間に作ってたんだな、新しい異能……
「じゃねぇよ!言ってるんだ?それだとHPを0にできないだろ」
だってこれは、敵のHPを0にした方の勝ちだろ?そう思っていると、スレイヤは呆れたように言った。
「誠、先生の話聞いてた?敵が戦闘不能状態と見なされる基準として、HPゲージ制があるだけで、戦闘不能と見なされる。
つまり戦闘に参加できないと見なされれば良いじゃない」
「え?それだとスレイヤは無敵じゃないか!」
そう思っているのだが、スレイヤはやはり呆れたような顔をしている。
「だから、その分作るのが大変なのよ!ほら、早く行くわよ!」
さて、ここからがいよいよ終盤だな。そう思いながら、誠はスレイヤと共に敵の2人の元へ向かった。
書き終わらなかったので、中編を作りました。申し訳ございません。(そんなに律儀に呼んでくれる方がいて下さるのかは、分かりませんが……)