第21話 原点回帰と果て無き決勝戦 (前編)
今回は前編後編で分けたので、文字数が少なめになってしまいました。
すいませんでした……
決勝戦の直前、演習場の中に入った俺たちは、最後の作戦を立てていた。
「それじゃあ準決勝の戦い方を参考に、まずは隠密行動でドラスにバレないようにしながら、強化系統使いの2人を倒す。
これでいいかな誠、スレイヤ」
パトラがそう聞くと、俺とスレイヤは真剣な表情で言った。
「「了解!」」
その言葉の直後、頭上から戦いの幕開けを告げる声が聞こえた。
「それではこれより!伊達チームVSドラスチームによる、模擬戦決勝戦を開始する!」
○☆○☆○☆
さて……ついに始まったか。前回の大チームの試合を見る限り、今回もドラスは早めにドラゴンを召喚するはずだ……
そう思った刹那、奥の方で轟音が鳴った。恐らくドラゴンが現れたのだろう。
だが、ここからは殺気や気配を全て消して、他の強化系統の人を倒さないといけないから、動揺はするな!自分!
神経を研ぎ澄まして……
「どこかにいるはず……っていた!1人目!北西の方向!ここはスレイヤに任せて、俺とパトラは二人目の捜索だ!」
誠がそう言うと、スレイヤがこの緊迫した状況の中で笑って言った。
「そんなに真剣に戦っている誠は、1週間前の誠からは想像もできなかったわね。もしかしたら、人って意外と簡単に変われるのかもね」
ふっ、まったく、誰のせいで変わったと思ったんだよ。
「俺らをゴブリンから助けてくれたあの人や、お前のお父さんみたいな、憧れができちまったからな!」
そして、スレイヤやパトラみたいなまっすぐな気持ち、全てが俺を突き動かしてんのかもしれないな。
「それじゃあスレイヤ!そっちは任せた!パトラ、一緒に行くぞ!」
「分かったわ!」
「分かりました!」
まったく、俺の性格はいったいどこで変わっちまったんだか……
そう思っていると、突如上から、予想だにしない
声がした。
「やっと見つけました。と、早速ですが私は貴方達を倒します!全てをねじ伏せてでも!」
ド、ドラスか?まずい。予想より早めに気づかれた。向こうもこのことを想定済みだったのか?
とりあえず、龍王息吹が来る前に逃げないと……
「『時間停止』!行動可能人間、伊達 誠、スレイヤ、パトラ!」
15分に1回しか使えないから、30分のこの試合において、残り使用回数は1回だけど、仕方がない!ここであぶり出されたらすべてが終わりだからな……
「今のうちに隠れて、5秒が過ぎてドラスが移動したら、2人を仕留めるぞ!」
誠がそう言うと、スレイヤとパトラは、分かったと言うように首を縦に振り、木の裏に隠れた。
「5……4……3……2……1……」
来た!時が動き出すッ!
「あら?いきなり消えた!あの3人はどこへ?ドラっち、何故だかわかる?」
よし。ドラスはかなり動揺している。そしてこの後あっちに行ってくれれば……
そう思っていた最中、空を飛ぶ龍が言い放った。
『恐らく時間を止めたんだと思うぜ!だからこの辺りにまだ残ってるはずだ!』
まさか!このドラゴンどんだけ勘が鋭いんだよ!
「そうね。たしかに今回の相手に、時間停止ができる人がいたわ」
おいおいヤベェぞ。ドラスはこっちに来てるし……こうなったら……
そう思った時、パトラが突然ドラスの目の前に行って、言い放った。
「誠とスレイヤは他の2人を倒して!私はドラスと闘うから!」
ナイス、パトラ!それなら勝機がある!
「いえ!貴方の好きにはさせません!二人とも、私の後ろに来て、後方支援をお願いします!」
何故だ!遂に我慢の限界が来て誠は、パトラとともに前に出てしまった。
「おいお前は、ドラスって言ったか?!お前は仲間のことを放置して、自分で勝利をもぎ取るスタイルじゃないのか?
だからこそ大のチームは、ドラスと一人で戦って時間を稼ぎ、他の二人を倒すと言う戦法が出来たのに!」
なんだ?急にドラスの性格が変わった?だとしたら、さらに勝ち辛くなるぞ!
するとドラスが少し恥ずかしそうに言った。
「私は準決勝の時に、デブ太郎と言う方に、互いを思うことが大切だと学びました。
だから私は、 今まで放って置いた仲間を重んじ、全員が生き残る戦い方をするよう、この試合で心がけているのです!」
おい大のやつ!何やってんだよ!
「ところでパトラさん。貴方のチームの残り二人は戦力外ですね〜。まったくパトラさんはかわいそうです」
は?突然ドラスは何言ってんだ?と思った時、隣にいたパトラの目が変わった。いや、気配が変わった。
そしてその気配の変わったパトラが、その言葉に反応して言った。本気の目つきで。
「おいドラス、テメェは殺されテェのか!あ?誠もスレイヤも一緒に強くなろうって誓った、最高のチームメイトなんだよ!
それを戦力外だって?殺すぞッ!」
こ、これがパトラの二つ目の人格……めっちゃいい事言ってるけど怖ぇぇ……
だが、そんなパトラを前に、ドラスは恐怖のかけらもないかのように言った。
「そう、そうです!もっと怒ってください!私は強い敵と戦いたいのです!己のレベルアップの為に!」
ど、どんだけ余裕なんだよ……って言うか、
「おいドラス、お前はさっき、チームメイトを思うみたいな事言ってたのに、キャラ変わりすぎだろ!」
俺が恐怖に駆られながらも言うと、ドラスは笑って言った。
「チームメイトは大切にしています。ですが試合はあくまで、己のレベルアップの為。ですので、より強い相手と戦いたいのです」
あ、こいつ普通じゃないぞ、考え方が……
そう思った時、パトラが恐ろしい顔面で言った。
「誠とスレイヤ!2人はあたいがドラスの隙を作るまで待て!そして作れたら奥の強化系統の異能者2人を仕留めろ!」
うわ!怖え〜。と思いながらも、俺とスレイヤは素直に従い、後ろの木に隠れた。
「じゃあ行くぜ!ドラス!」
「えぇ。かかって来てください、パトラさん」
そして、3秒前まではただの演習場だった場所は、突如として大戦場となった。
次回が模擬戦編ラスト!ようやく本編っぽいものに入れます!