第20話 未来と過去と現在と
今回は区切りが良かったので、矛盾解消をメインに、謎を深める回になりました。
「大丈夫でごわすか?」
「しっかりしてよ!大!」
ん……ここは……保健室か。そっか、僕はドラスに負けて気を失ったんだ。
「大丈夫?貴方、名前は太田くんね」
あれ?今僕の隣にいる人……
「あのすいません……貴方誰ですか?」
「ひ、酷い!!!私の事は異能鑑定の時に見たでしょ!ユリウス先生よ!保健の先生!」
「あぁ〜そう言えば、そんな先生もいたな……保健の先生なのに、老いてるなって思いま……」
『フゴッ!』
な、殴られた……
「す、すいませんでした!」
「別にいいわ」
「そういえばゴッツ、そしてアカネ。負けちゃったな」
「うん確かに負けたよ。でもこれで次の課題とか、色々見えたから、これは負けじゃない。あたいらは、一旦負けておいたんだよ!」
「そうでごわす!また次頑張るでごわす!」
ふっ……2人とも……
「うん!次頑張ろう!僕達は絶対強くなろう!」
「「おーー!!!!」」
そして良い雰囲気のまま……
「おい!大、お前なんでドラゴン相手に素手で戦ったんだよ!勝つ気ないのか?
たとえ大が武術に自信があっても、攻撃力アップの異能でも使わないと、素手で戦うのは無理ゲーだろ!」
終わらなかった……
「誰かと思えば誠か。ただなんでそんな当たり前なこと聞くんだ?」
そう。僕が素手で戦うのは当たり前。まぁ強い異能を持ってればそれで良いけど、僕みたいな場合は素手が1番だよ。
「なんで当たり前なんだよ!大!全然意味がワカンねぇよ!」
「だってそうだろ、僕達異世界転生者は神からのご加護を受けてるんだから」
「は?意味分からねぇよ!神からのご加護?どう言うことだ?」
「おい誠、お前本当に異世界から来たんだよな。もちろん向こうの世界で死んでから」
僕が今まであって来た異世界転生者は、みんな死んでから神様に言われてやって来た、と言っていた。
だが神からのご加護を知らないなら……
「ん?俺は死んでないぞ。向こうの世界で部屋の中にいたら、突然ミラ校長がやって来て……」
「それは本当か、誠。神様にはあってないのか?全ステータスアップは受けてないのか?つまり誠は、異世界転移者なのか?」
「あぁ。俺はミラ校長に異世界に来いって言われてやって来た。それだけだ」
「よくわからないけど、つまり誠は僕達とは別ルートで異世界に来たわけだ。だから全ステータスアップを受けてない。そう言うことか?」
「あぁ。じゃあミラ校長は何者なんだ?」
「「ん……」」
そう言いながら2人は、ミラ校長が何者かについて考えていた。
だがそんなものの答えが出るはずがなかった……
○○○○○○
「お姉ちゃん!僕のことはいいから早く逃げて!お願いだよ!」
「駄目……そんな私だけ逃げるような事をしても、意味がないの!それじゃあ……駄目なの……」
それじゃあ私は、一生貴方に会えないまま、罪という名の重荷を背負って、生きていかないといけないじゃない……
『見つけたぞ、No.18!脱走するつもりだろ!』
くっ……思ったよりも追っ手が早かったわね。
「お姉ちゃん!僕を置いて早く逃げて!僕はこの『魔王の家』で生き延びて、いつか必ずお姉ちゃんに会うから!」
そ、そんな……でもここで逃げないと私は脱走罪で、さらに辛い人体実験をされる……
「わかったわ!絶対また会いましょう!親愛なる私の……」
あれ?急に辺りが真っ暗に……あ……れ……
『おいどうした、ドラスお前また魔王の家での事件を、夢としてみていたのか?』
あぁ……ドラっち、私はあのデブ太郎に勝った後ぶっ倒れたんだっけ?
あれ?そう言えば今見てた夢って何だっけ……
「まぁいいわ。それよりドラっち、さっきは無理に龍星群まで撃たせてごめんなさい。ちょっとムキになっちゃった」
『あぁ、別にあれしきのことで死ぬような、ヘボ龍王じゃねぇぜ!ドラス!』
「ふっ、流石は私の相棒じゃない!」
『当たり前だ!俺とお前は魔王の家時代からだから、かれこれ6年は一緒にいるんだ!そんぐらい理解してもらわねぇとな』
「その事なんだけど、周りの人は異能を使えるようになって、まだ一週間だからなるべくこのことは隠しなさい!
次に龍星群を使ったら、流石に怪しまれるわ。あれは一週間程度で習得できる技じゃないから」
ドラスがそういうと龍王、別称ドラっちは笑って言った。
『おうよ!これは俺とドラスの秘密だ!』
「まったくドラっちは、血気盛んで危なっかしいけど、優しいんだから!」
そう言って、龍王とその主人は他のチームメイトを連れ帰って、勝者の笑みを浮かべていた。
いや、この笑みが本当に勝ったからだけなのかは知らないが、とにかく笑っていた。
☆☆☆☆☆☆
「それで大……まぁ結局惜しかったな」
準決勝が終わり、寮に戻った誠たちは皆で唐揚げ定食を食べていた。
「うん。僕はまた次の機会に、あのドラスさんと戦いたいな!」
「そうか……じゃあ大、あのドラスに勝つにはどうすればいいと思う?」
これを聞いておかないと、勝てない可能性が高いからな……
「えぇっとね。あの龍王息吹は3、4発が限度。龍星群は一発が限界かな」
「まじか!限度があるなら勝てるかもしれない!」
誠がそういうと、隣から矢久座達が割り込んできた。
「大丈夫だろ?どうせまた、姉貴がボッコボコにするんだろ?」
「いや、そうとも限らないんだ。まだパトラの二重人格についてもよくわからないし、不確定だからな……」
「へぇ〜、そう言えば姉貴は、『弱い』って言われるとあの人格になって、俺たちはボッコボコにされたぞ」
「そうなのか、ありがとよ。あ、それよりどうしても気になることを聞いていいか?矢久座……いや、府領に聞きたいんだ」
そう。俺が聞きたい相手は、名字が違うのに3つ子設定という謎の奴。矢久座家三男の府領霧弥だ。
「ん、俺になんか用か?伊達?」
「あぁ。どうでもいいんだがな、模擬戦始まるまで、府領が矢久座達2人といた記憶がなくてさ……
なんだか俺の中では柄の悪い二人組ってイメージだったんだが」
そう。俺が府領と会った時から思っていたこと。それは、柄の悪い二人組で記憶していたはずなのに、府領を含め三つ子だったことだ。
「あぁ〜そりゃそうか。気がついたらいきなり俺が加わってるんだもんな、ビビるのも当然だわ。
実は俺、模擬戦の日まで風邪で休んでたんだ!」
な、なにその新事実!ちょっとびっくりなんですけど。でも超納得だわ。
「ありがとよ!府領、それにみんなも!俺は部屋に戻るよ」
俺はそう言って部屋に帰った。
☆☆☆☆☆☆
翌日、いつもより早めに俺は寮を出て学園に向かった。何故なら何と言っても、今日は決勝戦だからだ!
「おはよう!スレイヤ、パトラ。早速だけど、決勝戦の前に話したいことがあるんだ」
「何?誠、できるだけ早くして。作戦も話したから」
「何ですか、誠?」
「いや、パトラの二重人格といい、ずっと前に言ってた、オーラが見えるとか言ってたのとかさ、一体パトラは何者なんだ?」
一応決勝戦前に、今までの悩みを解決しておかないと、いいパフォーマンスは発揮できないからな。
そう思っていると、パトラが申し訳なさそうに言った。
「そ、そのことなんだけど……実はオーラが見えるっていうのは嘘なの」
へ?ほへ?
「えぇーーー!!!!!」
すると隣のスレイヤは、若干ドヤ顔をしている。なんかムカつく……
「あのね誠、実は私オーラは見えないの。あれは、初対面の人に対しての、いわゆるテストなの」
「テスト?」
「うん。オーラが見えるって言った時に、動揺する人はあまりいい人じゃないの。これ意外と使えるよ」
いや、オススメされても……まぁ俺の中の謎は少し解けたか。
「それから、なんで二重人格になると攻撃力とか上がるんだ?」
そう聞くと、今度はスレイヤが言った。
「誠は、よく質問するわね……まぁいいわ。パトラはもともとあの力を持っているわ。だけど、あの力を最大限引き出すには、怒りのパワーが必要。
従って、怒ればパワーが最大限使えて、そうなると人格が変わる。そういうことなのよ」
ほぉ〜つまり、人格が変わるとパワーが上がるのではなく、怒ることによってパワーが上がって、そのついでに人格が変わるということか。
「ありがとよ!2人とも!」
「いいわ別にこれくらい!」
「そうですよ。それより作戦の話をしましょう!」
そうだな。この決勝戦、敵にどんな思惑があっても、こっちも負けてられないからな!
そろそろ模擬戦も終盤です。模擬戦が終わるまでには、ドラスの謎は解明させる予定です。
乞うご期待!