第19話 圧倒的な力と互いを思う力
今回2人ほど新しい名前が出ますが、まぁモブ程度の扱いなので、いちいち覚えないでもらって構いません。
「それで大、今日の午後からは遂に準決勝だな!」
本戦1回戦と2回戦が終わり、昼食タイムとなった今、誠は大と2人で話しながら食べていた。
「うん。ただ、次の敵のリーダーの『ドラス』っていう人は、ちょっとチート級に強いんだよ……」
「あ、そういえばさっきから、そのドラスってやつの名前が、あちこちで聞こえるけど、ナニモンなんだそいつ?」
決勝戦に戦うかもしれない敵の事は、できる限り把握しておかないとな……
誠はそう思っていると、大は顔を強張らせて言った。
「多分このクラスで1番強い女の子だよ。彼女はドラゴンを召喚する異能を持っている。
その強さは常軌を逸脱していて、ドラゴンなしでも戦闘能力が高いんだ」
「それでも勝てよ!俺は決勝戦で大達のチームと戦いたいからな!」
誠がそう言うと、大はグッチョブサインを出しながら言った。
「もちろん!そして誠のチームも倒すからね!」
そう言って大は行ってしまった。
「まぁ、こっちも誰にも負けるわけにはいかねぇんだよ!色んな理由があるからな!」
誠もそう言って、歩き出した。
○○○○○○
大は誠と別れた後演習場に入り、試合直前でチームメイトと話していた。
「僕はこの試合でどうしても勝ちたい!そして決勝で倒したい相手がいるんだ!」
僕がこう言うと、2人のチームメイトは真剣な顔で言った。
「当たり前でごわす!絶対勝つでごわす!」
「うちらが勝っちゃおうぜ!大!」
ゴッツ……それに、アカネ……
「ありがとう!僕はこんな体型だけど、しっかり武術は会得してるから、足は引っ張らないよ!」
大が言ったその時、十文字先生の声が聞こえた。
「それではこれより準決勝!『ドラスチーム』VS『太田チーム』の試合を行う!
その声とともに、僕たちは戦闘モードに入った。
○○○○○○
「僕が敵で1番強い『ドラス』と1対1で戦うから、2人はそれぞれ強化系統の人を倒して!そしたら3対1でドラスを倒せる!」
戦場の中、そう僕が言うと2人は揃って言った。
「分かったよ!それまで負けるなよ!」
「負けるなでごわす!」
おう!って言うか、まず索敵に何分を要するか……もし向こうが若干余裕があるなら……速攻で仕留めるはずッ!
そう思った刹那、遠くで轟音が鳴り響いた。
あれは白いドラゴン!こっちに向かってくるし!
って言うか、チート級だよね!全長10メートルはあるでしょあれ!
大は若干怖気付いていたが、その後何とか気を取り直した。
「って考えてる暇ないな!僕はあのドラゴンに乗ってるドラスと戦うから、2人は急いで他の2人を倒してきて!」
「「了解!」」
そう言って2人は、他の2人を探しに行った。
敵の2人はあのドラゴンを強化するから、あのドラゴンの周りに必ずいるはず。
だから俺は心配せず、ドラスと戦わないとな!
そう言って大はドラゴンの近くまで行った。
「とりあえずッ!僕の拳を食らえ!ドラゴン……ってあれ?」
ま、まさか……な。僕は地球ではボクシングやってたから、走る事以外には自信があるんだけど……
「なんで!何故このドラゴンは僕の拳を受けても、HPの変動がほとんど0なんだ!」
大が恐怖のあまりに言うと、目の前のドラゴンに乗っている女の子は、無表情で言った。
「貴方は何故この学園に入ったのですか?」
あ?何こんな時に……まぁ良い。時間稼ぎには最適だ。
「僕は異世界転移者だ。だから、まぁ一言で言ったら、成り行きだな」
ただ普通に異世界転生をして、学園に入れと言われて入って、面白そうだから今こうして闘っているのだ。
「へぇー。なら一つ言っておくわ。この先貴方は、絶対に私には勝てない。
何故なら、貴方は戦う意義を感じていないから!理由がないから!信念がないから!」
な、何スレイヤさんみたいなこと言ってるんだ……この人は。
「確かに、僕が君を倒すのは難しい。でも君も僕を倒せない。何故なら僕は……回復出来るから!」
そうさ。僕は君が与えたダメージを回復できる。つまり時間稼ぎができる。この勝負、僕の勝ちだ!
「ふっ……貴方は何を言っているのですか?回復?ふざけないでください。そんなの回復させる隙を、与えなければ良いだけですよ」
さぁ、この技はあのドラゴンには効くかな?
「は……ッ!必殺、コークスクリューブロー」
どうだ!僕が地球時代に使っていた、ボクシング技の一つ!
さらに、異世界転生時にあげてもらった攻撃力!これなら多少は……ってあれ?
「そんな攻撃、私の龍には効かないわよ。ドラっち、龍王息吹をお願い!」
『はいよ!そいじゃあやりますか!』
何だあのドラゴン、喋ることができるのか……って言うか、なんかやばいのが飛んで来たし!
「痛えーーー!!今のあのドラゴンの技強すぎだろ!HPの減り方が凄い!でも……負けられない!」
「へぇ〜今のを喰らって耐えるんだ……でも私はこんな所で、立ち止まってられないんだ。ドラっち、もう一発やっちゃって」
『はいよ!相変わらず扱いが荒いね!まぁいいけどよ!』
また来たか!でもこれを避けないと、おそらく俺は勝てない……どうすれば……。そう思った時、大の目の前に人影が現れた。
「大!!!わいらが盾になるから!回復の準備を!」
ゴッツにアカネ、2人とも!なるほどッ、了解!
確かに僕は、走る事だけは苦手なんだよな……
「まぁいいや!回復発動!対象は僕達3人。回復量は全回復!所要時間は……30秒!
2人とも!30秒間耐えてくれ!頼む!」
大がそう言うと、2人は笑って言った。
「勝つ為なんでしょ?ならうちらは、死んでも守るよ!」
「わかったでごわす!リーダー」
ありがとう!アカネ、ゴッツ!
「あら貴方達、意外とやるじゃない。まぁいいわ。私が力の差を見せてあげる」
「やっちゃいなさい!ドラっち!3回目の龍王息吹!」
『もうだいぶ、体力切れなんだがな……まぁいいよ!」
向こうのドラゴンにも体力の限界があるのか……それなら勝機も……って集中!
近くでは、アカネとゴッツが守ってくれてるんだから。
「あら?これも耐えるんだ……でもそっちのHPはほとんど無い。もう終わりね。ありがとうドラっち、あとは私がやるわ」
そう言うと、ドラスはドラゴンを降り、1人で近づいてきた……回復まであと10秒!何とかなってくれ!
「それじゃあ3人とも、なかなかいい戦いだったわ。でも、私は勝たないといけないの。全ては弟の為に……」
あと3秒!2、1、0!来た!
「じゃあ御愁傷様!」
そう言って彼女は、消耗している大たち3人を殴ろうとした、その刹那!
「回復!!!間に合えーーーーー!!!」
「あれ?私の拳を耐えた?もう体力は残ってないはずなのに!」
そう焦るドラスに、大は笑って言った。
「僕達は……はっきり言って個々の力で、貴方に勝つことは不可能だ。でも、互いが互いを信じることで、この力は何十倍にもなるんだ!」
そう。僕達は互いが互いを思った。だから、今の君の攻撃に耐えられたんだ!
「そうよ!私達は3人で貴方を倒すわ!」
「そうでごわす!わいらは3人揃えば無敵でごわす!」
ふ、2人とも……僕は体型もダメで、神のご加護が無ければただの人間だよ。
だけどそんな僕でも、最高の仲間とともに今、最高の時を過ごしてる!
「だから僕は……負けたく無い!」
そう僕が言うと、ドラスはかなり焦った表情で言った。
「ムムム……絶対使う予定じゃなかったし、使ったらバレる可能性もあるけど……もう使うしか無い!
ドラっち!最後に一発だけ、無理を承知でお願い!龍星群!」
『もう限界だぜ!……って言っても聞かないんだろ!あぁもう分かった!やってやるぜ!』
何かが……くるッ!って空から流星群!いや、違う!さっきから放ってた龍の息吹がたくさん降ってくる!
これを逃げ切るのは、難しいか……僕の足の速さだと恐らく範囲外には間に合わない。
2人はもう何発か龍星群に当たってHPが0になったし……
「貴方、詰めが甘かったわね。上ばかりに気を取られて、私のこと見てなかったでしょ」
目、目の前にドラス!……フッ、
「フハハハハ……」
大はおかしさのあまりに笑ってしまった。
「な、何がおかしいのよ!貴方!」
「いや、最初は高飛車だったドラスさんが、僕達の事を恐怖し焦った。いや、僕達が恐怖させ、焦らずことができた。
これは快挙なんじゃ無いかなと思ってさ」
「ま、まぁいいわ。確かに貴方達は強かった。瞬殺では倒せなかった。それは認めるわ」
そうか。それは良かった。
「だから敬意をもって言うわ。ナイスファイト!また闘うわよ!貴方!」
「貴方じゃ無い。僕の名前は太田 大。とっとこデブ太郎とでも言ってくれ」
すると目の前の彼女は、笑いながら言った。
「分かったわ。それじゃあまた、デブ太郎!」
その次の瞬間、僕の意識はなくなった。
後で聞いた話だが、僕は負けたのに笑っていたようだ。
全くおかしな話だけどね。
おい作者!大のキャラは、もっとおっとりしているぞ!と思った貴方、まぁ人間は正念場になればおっとりしないものです。(多分)
ですので今回は、大が本気を出したとでも思ってください。