第16話 戦場の殺戮姫
よろしくお願いします
「霧が晴れたッ……って敵がいない!」
何だ?どうなったんだ?
この霧を発生させた目的が俺たちの分散なら、俺らに一人ずつ敵が付いてくるはずだろ!
と思いながら、誠は急いで二人を探していると、やがて焦った顔のスレイヤを見つけた。
「おいスレイヤ!どうした……っていうか敵はいるか?」
「誠!それがいないのよ。一体どうなってるの?パトラが言うには戦力を分散して、一人ずつ倒すんじゃないの?」
「わかんねぇよ。だから今考えてんだ」
何故だ?矢久座達は分散したほうが効率がいいはずだ。そしてそれは実行された。
なのに俺らの方には敵がいないってことは……敵は裏の裏をかいてきたんだ!
俺はあの3人組を、頭の中筋肉のおバカキャラと仮定していたが、それは空想だった。さらにパトラの推測には欠点があったんだ。それは……
「スレイヤと1対1で戦って勝てる可能性は、100%じゃないんだ!」
すると隣にいたスレイヤは、急に声を上げた俺に驚いて尋ねてきた。
「ちょっと誠。急に大きな声出さないでよ!って言うか、分かったの?この現状を」
『フッ』と俺はドヤ顔を決めた後、スレイヤに教え始めた。
「いや、パトラが言うには、全員が1対1をすれば負けると言ったが、それは必ずじゃないんだ」
「どう言うこと?」
スレイヤはまだ分からないようで、口をぽっかり開けている。
「それはな、お前が発動系統の異能使いだからだ。
つまりお前と1対1で戦っても、負ける可能性がある。だから矢久座達はそれを恐れて、確実な方法を選んだ」
ここまで言うと、スレイヤも納得したようだ。開いた口が閉じている。
「つまり、3対1の状況を作ればいいんだ。それも、相手は絶対に勝てると矢久座達が見込んだ相手」
「やっと分かったわ。要するに、強化系統の異能の持ち主であるパトラを3人でフルボッコにしてから、確実に勝てる状況を作ると言うことね」
「そう。恐らくそんなことだろう。だから、こうしちゃいられねぇ!今すぐパトラを助けに行かないと!」
そう言って、俺がスレイヤの手をつかもうとしたその刹那、スレイヤは笑って言った。
「なら私たちの勝ちね」
そうスレイヤが言った時、森の奥で轟音がした。そして、奇妙な笑い声と大きな悲鳴が聞こえた。
☆☆☆☆☆☆
同時刻……
「霧が晴れた!……って敵が3人!一体どうなってるの?」
やっと霧を抜けたら、敵が全員私のところに?まさか読みが外れた?
すると目の前の敵、矢久座が私に言ってきた。
「えぇと、あんたの名前はパトラって言ったか?今から楽しい集団いじめの始まりだぜッ!」
集団いじめ?どう言うことなの?ここは情報がないと何も分からないから、収集しないとね。
「矢久座さん。集団いじめってどう言うことですか?教えてください」
そう聞くと、彼らはまるでパトラを惨めな小動物でも見るかのような目で言った。
「ヘッ、そうだな。今からいじめちまう奴なんだから、情けの一つくらいかけてやらねぇとなッ!教えてやんよ。
お前の異能は、ただの強化系統だろ!そんな弱い敵に3人で確実に勝つ。するとノーリスクで必勝ってわけよ!」
「え?今私の事なんて呼んだ?教えてよ矢久座さん」
「あぁ何度でも言ってやるよ。お前は、たかが強化系統異能の雑魚だ!グァッハハハハ………!!!」
あ、このクズども、私のことなめてる。見下してる。哀れだと思ってる。私こういうのって……
「大っ嫌いなんだよね!テメェらみたいなクズどもが、あたいの事侮辱すんのってよ!」
「おい、パトラ!テメェが3人相手にかてるわけねぇだろ!テメェがクズなんだよ!」
あ?そんなこと言ってる奴らは、みんなまとめて首切って血だらけにして、何も言えねぇ状態にしてやんだよ!
「テメェら全員、あたいをなめたことを後悔すんだな!『威力増加』」
そう言った刹那、まるでパトラは鬼のように無差別に近くの木をなぎ倒し、あっという間に周囲一帯を真っ平らにしてしまった。
「お……おいなんだよアイツ!マジでヤベェぞ!でも3人で行けば何とかなる!オメェら異能をどんどん使え!」
矢久座達は焦っているのか、次々と異能を使ってくる。まるで哀れな子羊のようだ。
「『岩石落下』」
だがしかし、そんなもの……
「あたいにとっちゃあ、ハエと同じなんだよ!」
その次の瞬間、パトラの上空にあった岩石は、粉々のかけらと化していた、
「あ、兄貴の『岩石落下』が粉砕されたッ!じ、じゃあ俺の異能でッ!
『磁力増幅』」
フッ、今度は大きな磁石で板挟みにするか……
「そんなの虫けら以下なんだよ!」
その次の瞬間、パトラを挟もうとしていた大きな磁石も、粉々に粉砕された。
「う、嘘だろッ!ふ、二人の異能がダメなら、ここは一回引くしかない!
『周囲濃霧』」
チッ!逃げようって言ったって、あたいが逃げさせるわけないだろ!
「テメェらがあたいに勝てるわけ……ゼッテェないんだよッ!」
その刹那、どんどん濃くなっていく霧はまるで強風でも吹いたかのように消えていた。
「さて……どうするかな……?」
そして身ぐるみの剥がれた3人に対し、少女は笑いながら言った。
「HPが0になるまで。いや0になっても、あんたらのことを殴り続けないとね……」
「な、な、なんで!なんでそんな笑顔で言うんだよ!お、俺らの負けでいいから!もう許してくれ……よ……」
すると少女は、笑いながら言った。
「許す?グァッハッハッハッ!!!!馬鹿を言え!あたいの事を侮辱したくせに!」
「そ、それならなんで普段からこんな性格にならないんだ!お、俺らは散々お前の容姿を侮辱してきたぞ……」
「容姿?そんなものはどうだっていいんだよ。あたいが重要視してるのは、『弱い』と思われた事なんだよ!」
するともう戦意を喪失したのか、ガラの悪そうな男3人が、少女の前で土下座をし、号泣して謝った。
「す、すいませんでした!俺らが間違ってました。だから……だから……」
「ふーん。戦意喪失したんだ。でもあたいには関係ないよッ!」
その刹那、真っ平らだった土地は処刑場と化し、奇妙な笑い声と、大きな悲鳴が鳴り響き、そしてその後静かに十文字先生の声が聞こえてきた。
「そ、そこまで……勝者、伊達チーム……」
次もお楽しみに〜
ちなみにわからない方に言いますが、この回は途中から物語の視点が変わったので。