第14話 虚しき初白星
よろしくお願いしま〜す
誰もいないはずな真夜中の校長室、そこで小さな少女とその執事が話していた。
「ミラ校長。貴方様は知っておられたのですか?
あのキルタ村の生き残りが、ミラ校長が現場にいたと言う事実を知っていたと言う事を」
「えぇ。知っていましたが何か?クラル」
「それはまずい事だと思いますが。今からあの3人共々、私が排除致しましょうか?」
「いえ結構。貴方も聞いたでしょう?あの3人は今戦っても勝ち目が無いから、まだ戦わないと言っていた事を」
「はい……ただ、本当にこのままにして置いて良いのでしょうか?」
「問題ないわ。3匹の召喚獣が、引き続き監視をしているから」
「ならば、よろしいのですが…」
「それでは、私達もそろそろ戻りましょう。
私達の城へ」
刹那、ここには元から誰もいなかったかのように、静けさが戻った。
☆☆☆☆☆☆
「おい…さすがに42.195㎞は、いくら特訓最終日とは言え、走りすぎな気が…もう限界なんですけど…」
誠は現在、スレイヤとパトラと朝練を行なっている。ハード過ぎるほどハードな朝練を……
「ほら!誠、休まないで走る!もっと強くなるんでしょ!もうそろそろ学校の時間なんだから、頑張って!」
「そうですよ…誠…頑張らないと…」
おい、パトラも結構疲れてるぞ
「ほら、行くわよ!」
「「ひょえ〜」」
あの日から3日、誠たちは本気で特訓した。
ありえないほどハードだったが、お陰で俺は元引きこもりとは思えない程良い体となった。
・速くなった足
・強靭とは言えないがそこそこついた体力
・強くなった拳の威力
そして誠はこの3日間で白虎拳以外の全ての課題をクリアした。
そう、白虎拳以外は…
「ほら、この朝練が終わったら、3日ぶりの学校なのよ!
どういう事だかわかってるの?模擬戦よ、模擬戦!ちゃんと白虎拳のやり方は教えてるでしょ。
白虎拳は、殴るというよりもその後にどれだけ速くその拳を引けるかなの!」
「だから、それが難しいんだって…て言うか、42.195㎞走った後すぐに白虎拳の練習は、マジで死ぬんですが…」
「ま、まぁスレイヤ…誠はそれ以外は完璧になったんだし、白虎拳はゆっくり習得していけば良いじゃない」
パトラ。お前は天使か!
「ま、まぁパトラの言う通りね。この3日で誠は確実に強くなった。
まぁ、元々が弱すぎたんだけど」
「おいスレイヤ。それは酷くないか」
「「ハハハ…」」
模擬戦のルールを知らないが、出来る限りの事はした。武術も少しは出来るようになったし模擬戦、頑張ってみるか!
と、誠は気合十分で朝を終えた。
☆☆☆☆☆☆
「あぁ、何とか学校間に合った…朝ごはんに時間かけすぎた…」
さすがに言えない。トーストを食べるのにぼーっとしてて、1時間かかったことなんて。
「遅いじゃない、誠。今日は朝練したから、寝坊はしないわよね」
「お、おうスレイヤ……何でだろうな?あはは……」
「誠!おはよう!今日は何で遅かったの?」
「お、おうパトラ……何でだろうな?あはは……」
「誠それ、私と受け答えの仕方が全く同じなのだけれど」
「何でだろうな?あはは……」
と、誠が窮地に追い込まれている中、十文字先生が来た。
「おう、お前ら。会うのは3日ぶりだな。
それじゃあ、早速模擬戦を始めたいところだが、まずは模擬戦のルールについて説明する」
先生が来たことにより静まった空気は、今急速に燃え上がった。
「っしゃー!ついに俺の異能の見せ場だ!」
「私達の成果、とくと御覧なさい!」
「みんな、僕の異能に惚れろ!」
「うるさいお前ら!今からルールを話すんだ。
少しは黙ってろ!」
「「はいボス!」」
「まず、戦い方だが模擬戦は実戦のように行う。
まず、異能は使って良い。何をしても良いが、武器の持ち込みは禁止だ。
場所は、演習場。1チームvs1チームで、制限時間は30分。その間に何人残っているかで勝敗が決まる。
それじゃあ質問を聞く」
先生がそう言った途端、質問の嵐が起こった。だが、十文字先生は並大抵の先生ではなかった。
「それは総当たり戦ですか?」
「いや、トーナメント戦だ。マッチングは質問の後で決める」
「じゃあ先生、戦うとき、どうやったら自分が戦闘不能状態と見なされるのですか?」
「お、よく聞いてくれた。
戦う時には、皆今から配る戦闘服を着てもらうが、その戦闘服には腕の部分にHPゲージがあり、そのHPが0になったら、そいつは戦闘不能とみなす」
「そのHPとは、どのように決まるのですか?」
「それは、皆等しく設定されていて、人間の死ぬレベルの痛みの5倍まで耐えられる様になっている」
「つまり、致死量の5倍の攻撃を受けるとHP0になるんですか?」
「その通りだ。じゃあこのくらいで良いか?
今からチームのトーナメントのマッチングを決める」
「「フォーーー!!」」
「それでは、その前にチームリーダーを決めてくれ」
と、先生が言った途端に教室はさらに騒がしくなった。
そして、誠も皆の流れに合わせ二人の元へ向かった。
「さて、俺たちも決めるか。どうする?スレイヤ、パトラ」
「そうね。誠とパトラ、じゃんけんにしましょう」
「うん、わかった!でも、勝った人と負けた人どっちがリーダーになる?」
ん、パトラはそう言うところ、しっかりしてるな。
「それじゃあ、勝った人にしないか?」
だって、俺負けたことしかないことで結構、有名だったし……リーダーやりたくないし……
「分かったわ。じゃあそれで行きましょう」
「「最初はグー、じゃんけんポン!」」
俺はチョキ。対してパトラとスレイヤは、二人ともパー。
ん?これはどう言うことを表すんだ?
「じゃあ誠、リーダー宜しく」
「頑張ってね、誠!」
何故だ!今までじゃんけんを一度も勝ったことがないのに!何故だーーーーーー!!!!
と、誠が嘆いている中、続々とリーダーを皆報告している。
「仕方無いか…」
こうして誠は、不服にもリーダーとなってしまった。
と、その中先生が言った。
「それじゃあ、全チームリーダーが決まったので、トーナメントのマッチングの抽選を行う!
リーダーは前に出て、くじを引け!」
えっと…俺の引いた番号は…1番だから、ここか。
初戦の相手は、チーム矢久座って、なんか嫌な予感がするのだが……ヤクザって苗字はまさか……
「オメェらか初戦の相手は。雑魚だな!」
「チーム伊達って、このぼっちの集まりだったか!よかったな、初戦はクリアだ!」
やっぱり…初戦の相手は、不良二人組のいるチームだ!
次もお楽しみに〜