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刹那の王は独り嘆く  作者: 黒猫
模擬戦編
13/35

第13話 強くなりたいと思う理由

今回はすごく大事な回だと自負しております!


「やっと…終わった…グハッ…」


 俺は、初日から二人にたっぷり鍛えられたお陰で、現在瀕死状態にある。

 そんな俺に対する声のかけ方は、その人自身の人情が現れる物である。


「大丈夫?流石に、初日から鍛えすぎちゃったかな?」


 あおぉ、パトラよ。其方は神か?天使か?それとも女神か?俺のことを、心配してくれるなんて…


「大丈夫でしょ。それより今日の練習で瀕死状態なら、先が思いやられるわ。

 チームの戦力が誠だけ低くなりそうな気がして、私はそっちの方が心配よ」


 おぉ、スレイヤよ。其方は悪魔か?魔王か?それとも堕天使か?俺のことじゃなくて、あくまでチームを気遣い俺のことを雑魚キャラ扱い。

 その性格は、一体どうやったら生まれるのだろうか?


「もうスレイヤったら、素直に大丈夫?って言えばいいのに!」


「こ、こ、こんな男に大丈夫?など私は断じて言わない!」


「すまんスレイヤ。お前がツンデレだったことを忘れていた」


「い、いきなり口を開けばツンデレって、は、ほんと神経どうかしてるわ!

って言うより大丈夫なの誠?もう疲れは取れた?」


「おう。スレイヤもパトラも心配してくれてありがとな」


「「うん」」


 そうだよ!こう言う展開を望んでおりました!

最初は異世界でハーレムは無理って思ったけど、もしかしたら行けるかも!ウシシシ……


「誠?なんで急ににやけてるの?なんか気になるな、私!」


「パ、パトラ!何でもないよ!」


「私にもお聞かせ願おうかしら。なんだか、ものすごく嫌な予感がするのだけれど」


「ス、スレイヤまで!」


 ヤバイヤバイ…何か話題を変えないとこれはマズイ!

考えろ……考えろ……


「そ、それよりこの後スレイヤが、何でそんなに練習に対して本気なのか聞くんじゃなかったっけ?」


 そう誠が言った途端。陽気なムードは過ぎ去り、暗い顔になった。


「い、嫌ならいいんだけど、どうしてあの不良二人組に対してみたいに、どうしてそんな真剣なんだろう?って思ってさ」


誠がそう言うと、二人はようやく口を開いた。


「分かったわ。私がこの学園で何故本気で強くなろうとしているのか聞か約束だものね。

それじゃあパトラの家に行きましょう。そこで話すわ」


「分かった…ってええええ!!!!

じ…女子の家…家!この俺にはそんな耐性はないぞ!って言うかパトラは良いのか⁈」


 異世界より行ってみたかった、『女子の家(てんごく)』に行けると分かっただけで、俺はもう魂の90%が昇天しているんだが……


「う、うん。私とスレイヤは、訳あって一緒に住んでるから」


 なにその情報!初耳学認定!


「まぁ、とにかくそろそろ行くわよ!パトラも誠も!」



こうして現在興奮状態の俺は、引きずられるような形で、パトラの家に行ったのであった。






☆☆☆☆☆☆






「やっと着いた…ってここ、こないだのゴブリン戦のあった場所のすぐ近くじゃねぇか!」


 確かここは、俺たちがゴブリンから逃げていた時に通り過ぎたような気が……


「そうよ、この家半壊したから修復大変だったのよ!」


いや、俺に言ってどうするんだよスレイヤ……


「でも、本当に大変でした。しかも修復が完了するまでの間は、壁が無くてすごく寒い日々でした」


 おぉ、それは大変だったなパトラ。

 何故だろう、スレイヤには大丈夫か?とは思わなかったのに、パトラには思った。

 多分普段の行いの差だな。と言うか……


「そろそろ中に入らないか?」


 目の前に天国があるのに、入らないのはもどかしいではないか!





「あぁ、人生でこんなに幸せだった事はない…」


俺氏は今、人生の絶頂にいるのである!と、誠は独りで喜びを噛み締めていた。


「私やっぱり誠のことクズ男って呼ぼうかしら。

もはや脳内が丸見えなのだけれど」


「誠、ちょっと目が……」


「と言うより、そろそろ聞きたいな。スレイヤの事について」


誠がそう言うと、二人はやっぱり暗い表情になった。


「それじゃあ話すわよ。でも一度しか言わないからよく聞いてね」


そう言ってスレイヤは語り始めた。


「ちょっと前に遡るけど、キルタ村について勉強したでしょう?」


「あぁ。魔王の拠点とするために全壊させた村のことだろ。確か生存者は0だとか」


「そこなんだけど、実は違うの」


「違う?」


 誠は訳がわからず聞き返した。


「実は私、キルタ村出身なの」


「え?どう言うことだ?」


「あの日、村は崩壊していった。村指折りの強者も、魔王たちによって殺され、建物は崩壊。逃げ道は無くて、私たちはみんな死ぬ寸前だった。


 でも、私の父は異能持ちで、しかもすごい異能を持っていた。その異能の名は、空間転移(テレポート)

 1日1回のタイムラグがある代わりに、好きな人を一人、どこにでも飛ばせる異能だった。


 私はその父の異能によって、今生きている。

 でも魔王軍に私は、家族も故郷も仲間も奪われた。だから私は魔王軍を心から滅ぼしたいと思う。これが私が本気で強くなりたいと思う理由よ」


 そう言っている彼女の目には、宝石のように綺麗な涙が溜まっていた。


「だがおかしい。それなら何故キルタ村にいた事を公表しないんだ」


 誠はまだ疑問が残り、スレイヤに再び訪ねた。


「そんなの当たり前じゃない。そんなこと言ったら、私は魔王のターゲットにされるからよ。

 それとこれは後に分かったことなんだけど、キルタ村が襲われている時、そこで見たの。

 金色で長い髪を持つ()()に」


「おい……それってまさか……」


「本当なのスレイヤ?」


 パトラもこのことは初耳だったのか、スレイヤに尋た。


「そうよ。その少女の名前は、()()よ」


「え?どう言うことだ?キルタ村襲撃の時にいた奴が、魔王軍を倒すための人材を育成するための学園の校長?

もうさっぱり分からねぇ!」


 そう誠が叫ぶと、パトラは困惑したような表情をしながら尋ねた。


「ねぇ、スレイヤ?この事実を公表しないの?」


「ううん。まだしないよ。知らないことが多すぎるし、まだ魔王軍を倒す力も手に入ってない。

これじゃあ反抗しても勝ち目はないしね」


「でも要するに何処かで必ず闘う相手ってことか?」


「まだ決まったわけじゃないけどそうね」


「なんか、マジですごい事になってきたな」


誠は口を開けて唖然となっている。


「私達、どうなっちゃうんだろう?」


 パトラはそう言って頭を抱えている。誠もそれにつられて頭を抱えた。


「とにかく私達は色々な理由で強くならないといけないの。

 この件は心の奥にしまっておいて、私達が強くなったら、考えよう。今はとにかく強くならないと」


「なんか俺も、初めて魔王軍を倒したいって思った。

スレイヤの親父さんの話を聞いてな」


「私も、ミラ校長のことは気になるけど、魔王軍を倒したいな!」


「それじゃあ、また明日から本気で特訓するわよ!」



誠達にまた一つ、強くなる理由が増えた。


次もお楽しみに〜

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