第10話 各々の異能
色々予定があって、2週間ぶりぐらいの投稿になってしまい、すいません。
「おじさん!唐揚げ定食を1つ!」
授業を終えた誠は、いつも通りに寮の食堂で唐揚げ定食を頼んだ。
「はいよ。お前さん、また一人ぼっちか」
「う、うるさいな…仕方ないんだよ。
元からぼっち体質だったのに、みんなに怖がられる異能を持つ。
何でこんなに人生って残酷なんだよ!」
とは言いつつも、誠はスレイヤやパトラの方を考えると、そこそこ良い生活じゃないか?と思っていた。
「まぁ、人生は谷底が見えれば雲の上が見えることもある。
強くなれよ!」
このおじさん良い人だな…と思いながら、誠は1人で席に座り食べていた。
すると周りから、自分に対する哀れみの声が聞こえて来る。
そして居場所のなくなった誠は、さっさと食べ終えて教室に向かうのであった…
☆☆☆☆☆☆
寮を出た後、教室に着いた誠は、スレイヤとパトラと話していた。
「2人に正直に言って欲しいんだけどさ…はっきり言って俺の異能って全異能の中で、1番弱くないか?」
俺はどうしても聞きたくて、2人に尋ねると、意外な返答が待っていた。
「私はそんなことはないと思う。
確かにその異能は、おそらく成長はあまりしないし、タイムラグもある上に一回に止められる時間も少ない。
でも、頭を使えば何でもできると思う。
例えば、この間のゴブリンと会った時のように、逃げることにも使えるしな」
スレイヤは、きついこと言うけど優しいところもあるじゃん。
と思っていたら、パトラも答えてくれた。
「私はその異能強いと思うよ。だってその5秒間は言っちゃえば無敵だよ。
私はそんな異能が欲しかったなー」
なるほどパトラ。そう言う考え方もあるのか。
「そうか。でもやっぱり15分間に1回しか使えないから、他の時間も戦えるようにしないと、今度の模擬戦も戦えないよな…」
「なら私とパトラは両方、鬼人流武術を使えるから、教えてあげましょうか?」
「まじか!スレイヤ、パトラ!」
「う、うん。チームが強くなるし、誠も強くなるし、私達でよければ…」
「マジか!ありがとな!
ところで今日授業で、キルタ村って言うところについて習ったんだけど、可哀想な村だよな」
そう誠が聞くと、2人は急に真剣な顔になって、うつむいてしまった…
と、そのときちょうど、十文字先生がやって来た。
「お前ら!今から異能の授業だが、今日は実際に異能を使う!」
と、先生が言った瞬間、クラスに歓喜の渦が巻き起こった。
「俺、初めてだ!異能使うの!」
「みんな、僕の異能に惚れろ!」
「先生マジ神っす!」
「それじゃあ、みんなついてこい!
演習場まで走るぞ!」
☆☆☆☆☆☆
「はぁ…はぁ…はぁ…
おい…俺たちをどんだけ走らせんだよ!軽く10キロは走ったぞ!」
元引きこもりの誠にとって、この走っていた1時間は今までの人生で最も天国に近かった時間であった。
「おし。それじゃあ今からこの演習場の中で、自由に異能を使って良いぞ。
人生初だろうから、楽しんで使え!」
そう先生は言うが、誠を含むクラスの全員に、もはやその気力は残っていなかった。
そんな状況を察して、先生が言った。
「おいどうした。まぁ、さすがに疲れたか。
それじゃあ、そこにある施設の中に、温泉があるから一回浸かってこい。ただ、終わったらちゃんと異能を訓練しろよ!」
と、その途端にクラスの全員が歓喜の渦に包まれた。
「神、神が降臨したぞ!!!!」
「うぉーーー!!」
「早く浸かりに行こうぜ!」
「じゃあ俺も行くか。スレイヤたちが女湯だから、俺はぼっちで」
そして誠は、1人でぼーっと疲れを癒したのであった。
☆☆☆☆☆☆
「それじゃあ全員整列!全員風呂から上がったか?」
「「はい、上がりました。ボス!」」
もはやクラスのほとんどが、十文字教の信者となっていた。
「おし、それじゃあ今からこのだだっ広い演習場で、自由に異能を使っていいぞ」
そう言われたのと同時に、みんなが異能を使い始めた。
「それじゃあ俺も使おうかな…時間停止」
「………」
やっぱりこの異能は…
「クズ異能だ!!!」
そう誠は悲しみに浸っていたところに、スレイヤとパトラがやって来た。
「誠の異能は、本当に頭を使って使わないと、強くないわね…」
「おい、スレイヤ!人が悲しみに浸かってる中、なんでそんなことを言うんだ…」
「そうだよスレイヤ。誠の異能は、魔王の異能なんだよ!」
おい、2人とも何を言ってるんだ。
スレイヤは、俺の異能は頭を使わないと弱いって言ってるし、パトラのフォローは結局この異能の1番嫌なところを言ってるだけじゃないか!
「やっぱり、俺の異能は弱いよな…」
誠の気分がさらに暗くなって言ったその時だった。
「でもその異能は、いつか必ず必要になる時が来るから。前のゴブリンと会った時のように」
パトラ…
「私達は、もっと強くならないといけない。その為には、もう既に、誠の異能が必要なのかもね」
スレイヤ…
「ありがとう2人とも。なんか元気が出たよ!
あ、ところでパトラ、今から異能を使ってくれないか?」
「え?どうして?」
「いや、スレイヤの異能は見たことあるけどパトラのはまだないから」
「それは是非、私も見たいな。お願いだ、パトラ。今から使ってくれないか?」
「分かった。それじゃあ誠、まずそこの木を思いっきり殴ってみて」
「え?どう言うこと?」
「まぁ、とりあえずお願い」
「う、うん…とりゃー」
木を思いっきり殴ったが、誠の拳はこの木に傷の1つも与えることはできなかった。
「それじゃあ今から私の異能を使うね。「威力増加」。それじゃあ、もう一回この木を殴ってみて」
パトラの異能がいくら威力増加だとしても、流石にそこまで差はないだろ…
と思いながらも、また木を殴ってみると、
「え…嘘…だろ…」
今度は誠が殴った木に穴が開いていた。
「パトラの異能って、マジで凄いやつだな…」
「いや…そんなことないよ…」
「さすがパトラね。パトラと同じチームで本当に良かった」
あの…そのセリフ、俺まだ言われてないんですけど…
と言っている間に、もう授業が終わってしまった。
すると十文字先生が鬼のような事を言った。
「家まで走って帰れ!」
「「嘘だろ!」」
誠だけでなく、クラスの全員がその瞬間、ショック死しかけた。
次もよろしく〜