七夕アタツク
一、
あの
ひとつぼしは
あなたのかたみ
ひっそり
きれいなほど
かなしく
ひかっています
わたしは
いま
ほしのピアノを
きいています
あなたの
声は
どんなでしたか
はなそうとする
そのまえの
うごきを
わたしは
わすれてしまったのです
二、
永遠の川が
天に流れ
きょう
カササギの橋が
架かります
永遠の
愚か者だけが
渡ることのできる
その橋の
アーチのてっぺんで
一対の男女は
なぜだか
少し離れて
思いを込めた
眼差しを
ふたりの
そらに
ほしが
ながれます
ひとつ
ふたつ
みっつ
……
飛びかうのは
かぞえきれない
恋人たちの
メールたち
あ
ひとつ
地に落ちた
ふたつ
海に消えた
みっつ
ぶつかり合って
眩い閃光
浮かび上がる
熱のまなざし
首筋の汗
踏み出した半歩
はじまりの
ゆびさき
三、
こおりのかぜ、
どこから吹いた。
やまのむこう
うみのさき
日の沈むところから。
いいえ。
すぐそばの塀の影から。
まだ忘れられない
昨日の片隅から。
四、
きらきらぼし
弾む
弾む
かたちはないけれど
とても大切な
胸騒ぎ
もしも
世界がすでに
終わっていたとしても
目を閉じている
このひと時だけ
わたしでいよう
五、
なぜ
美しいのですか
暑さの風も
届かないほどの
天蓋の
冷たい闇から
きっと
ひとりで
あなたは
落ちてきたから
この
水たまりの
世界の中へ