我が郷愁の? 「世界の名著」 中央公論社 概観と解説そして思い出
世界の名著 中央公論社。とは、、「世界の大思想」シリーズと同じころ刊行された思想書の叢書全集です。
これは世界の大思想シリーズが原書完全訳であるのに対して、世界の名著シリーズは抄訳、部分訳がほとんどです。、まあ要点だけを部分訳すればいいというのも正論ですが。
でもそれだと原典の香りというか、風格が著しく損じられるという欠点があると思うのですね。
で、、私ははっきり言って、あまりこのシリーズはお勧めしません。
というわけで全巻は紹介しません。
若き哲学徒として、存在論と認識論そして世界観学を全霊で追及していたころこの名著シリーズも神田の古書店街で探しては、読みふけったものでした。懐かしい青春の?思い出です。
以下
わたしが気に入った?ものだけの紹介になります。また、「世界の大思想」シリーズと、重複するものも取り上げません。
世界の名著1 バラモン教典/原始仏典
これはインドのの原典からの翻訳であり画期的な名訳です。
特に、、ウパニシャッドとヨーガ根本聖典が素晴らしい、
「古典シャーキャ哲学外観」も参考になる。
ヴァーツヤーヤナの「論証学入門」はインド論理学の何ぞやがわかる。
併載されている、
原始仏典のほうはわたしてきには。つまらない。原始仏教って、しょせん単なる道徳論にすぎないからです、大乗仏教のような壮大なロマンもないし、神秘的なサトリもないし、私は原始仏教を「死とあきらめの仏教」と呼んでいます。対して大乗仏教は「生命と歓喜の仏教」と呼んでいます。私は原始仏教には何の興味もありません。
世界の名著2 大乗仏典
中論。倶舎論、唯識論が素晴らしい。当時、私はこれで初めて大乗仏教の神髄を会得した。
と同時に、鎌倉仏教が、いかに、低俗なものかを痛感した。
仏教哲学の崇高さを封じてまで民衆教化せざるを得なかったということではあろうとも。
一般民衆を教化するには、わかりやすく単純さが必須だということは私も理解しますがそれだけじゃあ?駄目でしょう?
そんな中では「教行信証」「正法眼蔵」は理論書?なので読みごたえはあります。
まあこれらはそもそもが一般信者向けではないのですけれどね。
世界の名著とは全く別のシリーズ、「大乗仏典」インド編、全15巻も併せて読むと、より効果的です。中公文庫化もされています。
世界の名著とは全く別のシリーズ、「大乗仏典」インド編、全15巻も併せて読むと、より効果的です。
世界の名著8アリストテレス
「形而上学」、、のこれがまさに元祖です。これを読むと形而上学がわかります?
メタフィジークのこれが元祖?
世界の名著9 ギリシャの科学
アリストテレスの自然学 自然哲学の面白さ?がわかります。
それにしても今「自然哲学」ってないですよね?
世界の名著13 キケロ/エピクテトス/マルクス・アウレリウス
ストア派の禁欲と自制と隠棲などがわかります。でもストア派ってキリスト教のモラルと似てませんか?これらの語録や独白には、人生の機微に触れる内容がたくさん含まれていて今読んでも参考になりますね。特にエピクテトスの「語録」は必読です。
小話や逸話、例えばなしで、人生の要諦を解き明かす。、
目からウロコの内容なのですよ。エピクテトス「語録」は、岩波文庫にもありますが絶版です。
エピクテトス「語録」(鹿野治助訳)
エピクテトス「要録」(鹿野治助訳)
マルクス・アウレリウス「自省録」(鈴木照雄訳)
世界の名著26 ニュートン
「自然哲学の数学的諸原理」(河辺六男訳)
これはいわゆる「プリンキピア」の全訳であり、本当に素晴らしい訳です。
このほかには、
学術書としてのちに別訳者。別出版社で、完全訳も出されていますが、値段がすごく高くて買えません、ニュートンは「光学」も必読です。岩波文庫にありますが絶版です。
世界の名著35 ヘーゲル
「法の哲学」(藤野渉・赤澤正敏訳)
法哲学についてのヘーゲル流の見解が述べられています。法がなぜどんな根拠で法たりうるのか?
「精神現象学」と並ぶヘーゲルの代表作。
この本で述べられているのは「法律学」ではないです。
あくまでも、「法哲学」です。お間違えないようにね。
「精神現象学」と並ぶヘーゲルの代表作。必読書ですね。
世界の名著〈続8〉 オウエン/サン・シモン/フーリエ
オウエン「社会にかんする新見解」(白井厚訳)
オウエン「現下窮乏原因の一解明」(五島茂訳)
オウエン「社会制度論」(永井義雄訳)
オウエン「結婚・宗教・私有財産」(田村光三訳)
サン・シモン「産業者の教理問答」(坂本慶一訳)
フーリエ「産業的協同社会的新世界」(田中正人訳)
マルクスエンゲルスは、これらを「空想的社会主義」として馬鹿にしてコケにして?一蹴した。
だが、、今現在振り返ってみればマルクスこそが社会の現実も、人間性の裏表も全く無視したとんでもない「空想主義者」だったと誰でも知ることとなったのだ。ポルポトの大虐殺もスターリンの1000万人の粛清も、チャウシェスクの暴政も、マルクスがその種をまいた張本人だったのだから。共産主義はその理想とは真逆に、人間性の深い闇を見過ごして、結局、人間の心底に宿している醜い「魔」に対するあまりにも無知さかげんを露呈するだけになったのだ。政治とは究極は、制度ではない。結局それを運用する人間の側の問題だったのだ、つまりその人間が悪だったら、いかに良い制度でも悪用してしまうだけだからなのだ。。一見理想の共産主義も、、つまりどんな良い制度を作ってみても、、それを運用する、毛沢東が、ポルポトがスターリンが、チャウシェスクが人間の諸悪の塊みたいな醜い欲望と権力志向のそういう悪者に一任されたとき、とんでもない悪の制度となるという、かなしい歴史的事実を我々はこの目で見てきたのだから。
結局、政治って「制度」じゃないんだ。「人間」なんだという真理ですよね。
世界の名著51 ブレンターノ/フッサール
ブレンターノ「道徳的認識の源泉について」(水地宗明訳)
フッサール「厳密な学としての哲学」(小池稔訳)
フッサール「デカルト的省察」(船橋弘訳)
フッサール「ヨーロッパの学問の危機と先験的現象学」(細谷恒夫訳)
これでブレンターノとフッサールの要点がわかるという優れものですね。
認識論に一石を投じた「現象学」それは認識とは吾の指向によって認識されるという、認識対象の現象学的還元を宣言するものだったのだ。
世界の名著58 ラッセル/ウィトゲンシュタイン/ホワイトヘッド
ラッセル「外部世界はいかにして知られうるか」(石本新訳)
ウィトゲンシュタイン「論理哲学論」(山元一郎訳)
ホワイトヘッド「観念の冒険」(種山恭子訳)
ところで?
ラッセルもホワイトヘッドも今読む人いるのかなあ?
ウイトゲンシュタインは絶大な人気を誇るけどね。
「語りえないことについては沈黙せよ」
これで科学哲学、数理哲学がわかるというスグレモノですね。
形而上学との不毛な論争に終止符を打ったとウイトゲンシュタインは確信した。だから大学をやめてスイスの小学校の教師になったのだ、ウイトゲンシュタインが小学校の教師?こんな似合わないものってないでしょ?
「語りえないものについては沈黙せよ」
「世界と生は同一である」
世界の名著65 現代の科学1
ドルトン「化学の新体系」(廣重徹訳)
ラプラス「確率についての哲学的試論」(樋口順四郎訳)
ヘルムホルツ「力の保存についての物理学的論述」(高林武彦訳)
リーマン「幾何学の基礎をなす仮説について」(近藤洋逸訳)
マックスウェル「原子・引力・エーテル」(井上健訳)
マッハ「認識と誤謬」(井上章訳)
ボルツマン「アトミスティークについて」(河辺六男訳)
ボルツマン「理論物理学の方法の輓近における発展について」(河辺六男訳)
パブロフ「条件反射」(千葉康則訳)
メンデル「植物の雑種に関する実験」(山下孝介訳)
世界の名著66 現代の科学2
プランク「物理学的世界像の統一」(河辺六男訳)
ポアンカレ「科学と仮説」(静間良次訳)
ヒルベルト「公理的思考」(静間良次訳)
アインシュタイン「物理学と実在」(井上健訳)
アインシュタインほか「科学者と世界平和」(井上健訳)
ボーア「原子物理学における認識論的諸問題にかんするアインシュタインとの討論」(井上健訳)
ハイゼンベルク「量子論的な運動学および力学の直観的内容について」(河辺六男訳)
シュレーディンガー「量子力学の現状」(井上健訳)
ノイマン「人工頭脳と自己増殖」(品川嘉也訳)
ウィーナー「科学と社会」(鎮目恭夫訳)
ワトソン、クリック「デオキシリボ核酸の構造」(井上章訳)
マッカロー「なぜ心は頭にあるか」(品川嘉也訳)
キスホルム「精神の未来」(井上章訳)
セント=ジェルジ「医学の将来」(井上章訳)
レダーバーグ「人間の生物学的未来」(井上章訳)
現代は科学の世紀といわれますね。そうした科学のここに定礎がある。
世界の名著〈続2〉 プロティノス/ポルピュリオス/プロクロス
プロティノス「善なるもの一なるもの」(田中美知太郎訳)
ポルピュリオス「イサゴーゲー」(水地宗明訳)
プロクロス「神学綱要」(田之頭安彦訳)
プロティノスは善と一者を求め続けた。その一者とはまあ言ってみれば神そのものです。
新プラトン主義について知るにはこれは便利です。プロティノスの邦訳ってほかには手軽に手に入りませんから。もちろんわたしもこの本は持っていてしばしばひも解いてますよ。
プロティノス全集全5巻ものちに出てますが、今アマゾンで調べたらなんと1冊1万円です。
世界の名著〈続3〉 禅語録
「菩提達摩無心論」(柳田聖山訳)
「六祖壇経」(柳田聖山訳)
「臨済録」(柳田聖山訳)
「洞山録」(柳田聖山訳)
「祖堂集」(柳田聖山訳)
臨済録とか碧巌録とか無門関とかそういうあまりおなじみではない禅語録がここで読めます。貴重ですね。こういう禅宗の淵源にまでさかのぼることが今必要なのではないか?
道元だってこういう中国禅の まあ、受け売りなんですからね。
世界の名著〈続5〉 トマス・アクィナス
「神学大全」(山田晶訳)(抄訳)
大部な全10冊とかの神学大全の全訳。邦訳本ならあるが、それは高価で求めずらい、こういうコンパクト版で神学大全が読めるなんてすばらしくないですか?アリストテレスとキリスト教をうまくくっつけるという難事をやっちまった神学書です。
世界の名著〈続9〉 フィヒテ/シェリング
フィヒテ「知識学への第一序論」(岩崎武雄訳)
フィヒテ「人間の使命」(量義治訳)
シェリング「ブルーノ」(茅野良男訳)
シェリング「人間的自由の本質」(渡辺二郎訳)
シェリング「哲学的経験論の叙述」(岩崎武雄訳)
今フィヒテとかシェリングを日本語で読めるとなると、これくらいしかない、
この二人、哲学史では、カントの亜流?くらいにしか価値はないとされているのだがどうして改めて読むと面白い>?>ですよ
世界の名著〈続10〉 ショーペンハウアー
「意志と表象としての世界」(西尾幹二訳)
この邦訳本以外にショーペンハウアーの主書を読む方法がない、。
かってショーペンハウエル全集があったがそれは絶版で非常に求めづらい。
ニーチェが感動したというこの本。この世界とは意志としての背秋があると同時に、表象としての世界もある、吾の意志としての働きかける世界、表象としての、映し出される世界、。
世界の名著〈続15〉 近代の芸術論
フィードラー「芸術活動の根源」(山崎正和・物部晃二訳)
ハリソン「古代芸術と祭式」(喜志哲雄訳)
コリングウッド「芸術の原理」(山崎正和・新田博衛訳)
パノフスキー「人文学の実践としての美術史」(柏木隆夫訳)
ヴェルフリン「美術作品の説明」(新田博衛訳)
メルスマン「音楽の現象学他」(滝本裕造訳)
シュタイガー「文芸解釈の方法」(新田博衛訳)
これで芸術哲学(美学)がわかります?
以上が私的な
世界の名著シリーズからのおすすめ本ですよ。これら以外は
世界の大思想シリーズのほうが原典・完訳版ですからそっちが良いですね。
ああそれにしても、、
40年前私は若くて哲学者になろうと、
奮励努力していたんだなあ。
まあ先ほども述べたように、、
いろいろありまして、、
結局私は哲学者にも、。
大学教授にもなれませんでしたが、、
まあ大きなくくりでいうならば
それもまた運命です。
受け入れるしかありませんよね。
「昔を今になすすべなし」、、ということわざ通りですよ。
仕方のないことなのです。
というかそれでよかった?のです。
そういうことですよね。
それしかなかったのですから今更どうこう言っても無意味ですよ。
じゃあ
そういうことで、、、
付記
昭和55年頃「人類の知的遺産」というシリーズが講談社から発行されたようであるが実はそのころ私自身は、とある地方で食うために労働に完全に埋没しきっていたので、このシリーズには全く関知してません。そんな余裕もなかったそのころは、哲学など忘却して、私は完全に食うために労働生活に埋没していた時代でしたからね。