林檎殺人事件 ―D倶楽部の悲劇―
・・・・どうしてこんなことになったのだろう・・・・。
・・・・“ドッキリ”にしてはひど過ぎる・・・・。
リーダーのH後は痛みとも快感とも取れない違和感を振り払いながら生き延びるため、必死に林檎をねじ込んだ。
・・・あれは2日前のことだった・・・・・・。
「明後日から急に雪山ロケが入りましたので、当日の朝は寒くない準備をして来て下さい。」
マネージャーが久しぶりに三人一緒の仕事が取れて嬉しいのか、喜び勇んで三人に告げた。
「着こんで来てもどうせロケはふんどし一丁だろー」
U島が嬉しそうにニヤニヤしながらマネージャーに言った。
「どこでロケだよ」
リーダーがマネージャーの持っていた番組の企画書を見ながら、
「ああ、この山かぁ。この山の奥にいい温泉宿があるんだ。明日は休みだから明日から先に行って久しぶりに三人でゆっくりするか」
「雪が凄くて奥までは行けないだろー。それにリーダー行ったことあるのかよ?」
G門が心配そうに言った。
「夏場に一度行ったことがあるんだ。ちょっと歩くけど一本道だから行けるよ。それに今年は雪も少ないだろー。なあ、行こうよ!雪見酒もいいよ〜」
《これが彼らの悲劇の始まりだった》
・・・・どうしてこんなことになったのだろう・・・・
G門は既に済ませこの家の主人から許しを頂いた。
早く俺もこの林檎を入れなければ・・・・。
「すごい装備だなー、G門は」
G門の冬山用の重装備を見てリーダーが笑った。
「ハ、ハ、ハ、そんなに着こんで来ても明日のロケはスッポンポンだけどな」
おどけて一番軽装なU島も笑った。
三人は明日の雪山ロケを前にリーダーが一度行ったことのある温泉宿に泊まろうと雪山の奧の奥へと向かった。
雪山の奥は行けば行くほど下界とは打って変わった積雪量と吹雪で冬山に慣れていない三人は前後不覚になり、ついに遭難してしまった。
「リーダー!宿はどこだよー!」
「こんな状況でわかるかー!」
「このままだと遭難しちゃうぞ!」
三人は吹雪の中をさまよい続け、寒さと吹雪から身を守る場所を探した。
どれくらいさまよい続けただろう。すでに辺りは真暗闇で、このままでは三人とも死を覚悟しだしたころ、前方にぼんやりと灯りを見つけた。
「助かったぞ!」
三人はその家に泊めてもらおうと戸を叩いた。
『男三人なんて泊められるか!』
冷たい家主の返答が返ってきた。
・・・・どうしてこんなことになったのだろう・・・
・・・・とにかく林檎を入れなければ・・・・もう少し、もう少しで俺も助かる・・・・
リーダーは必死で林檎をねじ込んだ。
「お願いします。一晩だけです。いや、この吹雪きがおさまるまででも結構です。冷えきった体を暖めさせてください!」
三人は必死で家主らしき老人に懇願した。
三人は体が冷えきり、唇も真っ青で、確かにこのままでは凍死しそうにさえ見えた。
「この天候でほったらかしたら確かに死んでしまうな・・・。よし、俺の言う約束を守るのであれば一晩だけなら泊めてやろう。」
「守ります、守ります、守りますから一晩泊めてください。」
三人はとりあえず中に入れてもらった。
家の中に入るときれいな娘がいた。どうやら老人の孫娘でこの家で二人で暮らしているらしい。
「ところで約束って何ですか?」
体が暖まってきたU島が孫娘を舐めるように見ながら老人にきいた。
家主の老人はU島を睨みながらたしなめるように言った。
「約束とはな、この孫娘のことだが・・・。見てのとおり美しく、可愛く、スタイルもいい。この娘に絶対に手を出さないと約束してくれれば一晩だけなら泊めてやろう。」
「なぁ〜んだ、そんな簡単なことですか。手なんか出しませんよ。絶対に!でも、こんな山の奥にいるにはもったいない本当にいい女ですねぇ〜」
U島は睨み付けている老人を気にせず厭らしい目付きで孫娘を見ている。
「おい!Rちゃん!変な気起こすなよ!」
リーダーがU島をたしなめた。
「約束は絶対守りますので一晩だけお願いします。」
三人は老人に懇願した。
『絶対だぞ!絶対に守れよ!守らなかったらおまえら殺すからな!脅しじゃないぞ・・・!』
三人は約束し一晩泊めてもらった。
・・・・どうしてこんなことになったのだろう・・・・自業自得とはいえどうして・・・。
―翌朝― 老人が目覚めるとかわいい孫娘は居間で泣いていた。
「どうした!どうしたんだ・・!」
孫娘はただ泣くばかりで何も応えない。
「奴らだな!奴らに・・・・。畜生共がぁー!」
老人は事態を察し、怒り狂い、しまっておいた猟銃を取出し三人の部屋に向かった。
部屋に入るなり、天井に向け一発放った。
三人は銃声に驚き飛び起きた。
「おまえら〜!よくも、よくも、約束を破ったな!このケダモノ共が!殺してやる!」
三人は老人の形相に震え上がりながら平身低頭謝り、娘に手を出してしまったことを悔いた。
しかし、老人は許すはずもなく、三人を縛り上げた。
「ただ殺しても怒りが治まらない。一人一人じっくり時間をかけて殺してやる。それまでそこで己の行いを悔いてろ!」
老人は外から部屋に鍵をかけた。
「俺たち本当に殺されるな・・・」
G門が呟いた。
・・・・どうしてこんなことになったのだろう・・・・俺と入れ代わりに出ていったU島はまだ帰ってこない・・・・ヤツのことはいい・・・・早くこの林檎を入れなければ・・・・
何時間たっただろうか。老人が部屋に姿を現した。
「どうだ反省したか。まあ、反省し悔いようとも許しはしないがな。」
「水を下さい・・」
G門がかぼそい声で老人に哀願した。
「水と食物を・・・・」
リーダーが頼んだ。
「何を勝ってなことを言っている!オマエらの話など聞く耳はない!」
老人は猟銃を三人に向けながら今にも引金を引きそうな勢いで三人を睨み付けた。
《三人は死を覚悟した》
その時、老人が、ニャリとし・・・・呟いた・・・。
「ワシは見てのとおりこの山の中で孫娘と二人で暮らしている。食物に困ってはいないが、近頃旨い果物を食べていない。この先の温泉宿に行けば冬とはいえ宿泊客用の高級な果物が置いてあるはずだ。それを分けて貰ってきてくれないか・!そしてある条件をクリアすれば許してやろー!吹雪も治まってきた。どうだ、このゲームをやるかね!」
《三人は生き延びるためゲームを受けた》
「三人一緒に行けば逃げるのは分かっている。一人ずつ行け!まずおまえからだ!」
老人はG門を指差し行くように促した。
残りの二人はG門が帰ってくるのを待った。
しばらくすると、玄関の戸が叩かれた。どうやらG門が帰ってきたようだ。だが、G門は二人が待っている部屋とは違う部屋に連れていかれた。
「G門大丈夫かなぁ〜」
U島が心配そうに言った。
G門が帰ってきて30分ぐらいたった頃、老人が二人のいる部屋に入ってきた。
「よし、次はおまえだ!」
老人はリーダーを指差した。
リーダーは温泉宿に向かった。温泉宿には確かに宿泊客用の高級食材や果物があった。
リーダーは旨そうな林檎を分けて貰うと、老人が待つ家に戻った。
「よし!よく戻ってきたな!林檎か。林檎を持ってきたか・・・・。よし、こっちへこい!」
―連れていかれた部屋にはG門がいた―
老人はリーダーの林檎をマジマジと見ながら話を続けた。
「ただ買ってきただけではダメだ!その林檎をおまえのケツの穴にいれろ!」
『エッ!!!』
リーダーは老人が言ったことが分からずG門を見た。
「入れろ!リーダー!入れないと殺されるぞ!この人は本気だ!」
G門がリーダーに言った。
「G門、おまえ入れたのか・・・?おまえ・・・何を買ってきた?」
G門は黙ってバナナを見せた。
『バナナかぁ〜』うらやましいそうにG門を見た。
『早くしろ!』
老人は猟銃をリーダーに向けた。
・・・・どうして、どうしてこんなことになったのだろう・・・・もう少し、もう少しで林檎が入る・・・・
リーダーがこれで助かると思った瞬間、急に笑いが込み上げ吹き出しそうになった。
「プ、プッ、プッ・・・プッ・・」必死に堪える。
『リーダー!笑っちゃダメだ!条件を忘れたのか!』
・・・・そうだもう一つ条件があったんだ・・・入れるだけではダメ・・・・入れている途中に笑ったら殺すと・・・・。
リーダーは必死で堪えた。だが、もう少しで大きな林檎が入る瞬間、堪え切れず
『ワァッハハハ・・・・ハッハッハッ・・・・・』
“ドーン”
猟銃が火を吹き銃声が部屋に響いた。
G門がリーダーに駆け寄る。
『どうしてだよ!どうして笑ったんだよ、リーダ〜・・・・・・・・!!!!!』
リーダーが指差す窓の外には、
スイカを抱えたU島が立っていた。