ショッピング1
ピンクやら黄色やら青やら紫やらの賑やかな色彩が俺の網膜を刺激する。
ここは色とりどりの花が咲き乱れる楽園。
辺り一面に広がる繊細でいて鮮やかな花たち。
そしてそれを手に取り微笑む美しい妖精たち。
下賎な下界の者共(男)は何人たりとも入ることができな不可侵の領域である。
そんな選ばれし神々たちの楽園に何故か俺はいた。
つまり、
女性物の下着屋さんだ。
ここはとある市内の大型ショッピングモール「ヨヨポート」の一角にあるお店、「ヘブンズゲート」。
なんだか昇天してしまいそうな名前である。
もっとも俺の心境にはピタリと一致する名前だが。
・・・まさかこんなに堂々と下着屋に入ることになろうとは。昨日までの俺は夢にも思わなかったろうな。
正直目のやり場に困るし、いづらい。困惑する。
どれくらい困惑しているかというと、冒頭でよくわからない枕詞を並べてしまうくらい困惑している。
女性ばかりのお客さんに混じって、俺みたいな男が入っていていいのだろうか?
そう思うと縮こまり、挙動不審に辺りを見回してしまう。
完全に不審者である。
「何言ってるの。コウは今は女の子じゃない。」
そうでした。
的確なツッコミを青山にされるも、俺の心中は穏やかではいられない。
右をみても女性下着、左をみても女性下着である。
恥ずかしさのあまり赤い液体を吹き上げるオブジェになってしまいそうである。
そんなことをしたら間違いなく出禁になるだろうから頑張って我慢するけど。
「これなんかいいんじゃないかしら?」
そう言って手に持ってきた聖衣はあまりにも面積の少ない胸当てであった。
「ちょ、香織先輩、完全に見えちゃうやつじゃんこれ!」
トップレスブラとかいうやつであった。要するに丘の頂がコンニチワするやつである。
って、そんなのつけられるか!なんてものを持って来るんだ香織姉。。
真っ赤になりながらじと目で香織姉を見る俺と青山。
「ダメかしら?」
頬を手に当てて可愛らしく首をかしげる。
俺が着けるんじゃなければダメじゃないです。
あ、でも恋人とかにはつけて欲しくないかも。。いや、でも、あああ、、
「はいはい。それは戻してきて。そもそもまずはサイズ計らないと、あ、店員さんー!」
そうか、そもそもサイズがわからないと下着は買えないのか。パンツはともかく上のやつはちゃんと合わせた方が良さそうだ。
「こちらの方の採寸ですね」
見事な営業スマイルでこちらを伺う店員さん。
「あ、はい、あの初めてなのでよろしくお願いします。」
そう言うと、なるほど。という顔をして手を引かれて奥の更衣室へと向かった。
何がなるほどなのだろう。。
更衣室に入るとさあ脱いで脱いでと促してくる。
・・・異性の前で裸になるのはちょっと抵抗あるな。もう異性じゃないのは分かってるけど!
パーカーのチャックを下ろし、Tシャツをめくると、何も守るもののない素肌が外気にさらされる。
一緒に更衣室に入っている店員さんの「ぉぉ・・」という小さなため息が聞こえ、若干何かを憎むような眼差しを胸に向けてくる。
あのそんな、親の仇を見るみたいな目で俺の胸を見ないでください。
思わず両手で隠してしまった。
はっとなって気をとりなおしたように店員さんがメジャーを取り出し採寸する。
ピトッ
ひやっとするビニールの感触が肌を刺激する。
ひうっ、、、
もう、なんでこの体はこんなに敏感なんだ・・!
「G65ですねー。(憎い)」
・・・さりげなく憎いって言わなかった?顔をちらりと盗み見るとにっこりとしている。
気のせいかな。
「コウ?サイズどうだった?」
外から青山の声がしたので、カーテンから顔だけだしてサイズを教えてやったら
思いっきり「G65だと!?」叫びやがった。
「ゴッド、、、神よ、、、」
やめて!恥ずかしいからやめて!
サイズとかよくわかんないけど叫ぶほどでもないだろうに。
店員さんと入れ替わるように青山が入ってくる。
「おい、なんで入ってくるんだよ!」
「・・・おぉ、、これがコウのナマチチですかぃ。。」
食い入るように視線を送ってくる。視線が熱い。。
鼻息が荒い。
・・・あの、近寄らないでくれます?
ごくり。と唾を飲み込む音が聞こえると、青山が手を伸ばしてきて、
不可侵の領土は容赦なく蹂躙された。
「やぁぁぁっ!?」
うわ、おっぱい揉むなばか!!
容赦なしに揉みすぎだ!俺だってちゃんと揉んだことないのに!!?
思わず女の子みたいな声を上げてしまう。
「柔らかい、そしてすべすべしておる・・、柔らかくもあり、張りもある!見事な円錐型ぁぁぁぁ!!極上じゃぁ!極上の乳じゃぁぁ!!」
ふにふにふにふに
やめろ!揉むな!そして詳しく品評してそれを声に出すなぁぁぁ!!!
乳の評論家と化した青山が止まらない。
あうううう、、
な、なんだか、体が暑くなってきた、、もじもじ。。
あの、ほんとそろそろやめて!?
思わず涙目になってしまう。
「どうしよう?コウ、興奮してきちゃった・・」
熱っぽい目をするなばかやろう・・!
ううう、俺もなんだか変な気持ちに、、、
「こーら」
カーテンから救いの女神が手をかざし、不届き者の頭に神雷を落とした。
チョーップ!
「更衣室ではしゃがないの。周りの人に迷惑でしょう」
崩れ落ちる青山。
悪は滅びた。
「さてコウちゃん、下着いくつか持ってきたけどどれか気に入ったのある?」
腕に抱えた聖衣たちを見せてくれる。
正直なところ、ちょっとまともに下着を選べる自信がない。
見ているだけでなんだか恥ずかしくなってしまうのだ。
「・・・うーん、よくわからないからお任せしてもいい?」
ガバッと青山が起き上がり下着を矯めつ眇めつ眺める。
「あたしはこれがいいと思うわ」
青山が手にしたのは胸元にリボンをあしらった、クリーム色をベースに薄ピンクのチェックが入った上下セットである。
「そうね、派手すぎず、地味すぎず、コウちゃんにはいいかもしれないわね」
香織姉も納得のようである。うん。わからんけどいいんじゃないでしょうか。
「つけてみてよ」
えぇー、ここで付けるのぉ・・?
と思ったけど、付け方もわからないのでココで付けられなければ家でも付けられないだろう。
それにサイズが合わなかったらやだしな。
レクチャーおねがいします。
青山と香織姉がつけ方を教えてくれる。
ほうほう。まずは逆につけるのか。。
慣れない手つきながらもなんとか装着する。
ブラジャーをつけた自分の姿を鏡で見つめる。
・・・変態だ。。変態がいるぞ。
客観的にみれば少女の下着姿というだけなのだが、俺には変態がいるように見えてしまう。
だって俺の顔したやつがブラジャー付けてるんだぞ?
俺はげっそりとした顔で二人を見るが、二人は満足気だ。
あ、似合ってますか。そうですか・・。
・・まぁ、胸に安心感は、あるね。
下着に罪はないので、とりあえずこれをもらうことにした。
換えもないといけないので、他にもいくつか見繕ってもらったら結構いいお値段でして、俺の諭吉が飛び去っていった。サイズの大きい商品は他よりも値段が張るらしい。
巨乳が憎い。
なんだかんだとあったが、ひとまず最難関の下着選びを終えて外にでる。
ちなみに一着はその場でつけて出て行くことになった。
洗濯してからの方がいいとは言っていたが、この後服も選ぶことになるし
ノーブラはマズイということだったので仕方なかった。
外に出ると男3人が顔を赤くして明後日の方向をみていた。
・・・お前らなんか聞いたか?
聞いたのか・・・?
ん?
手近なアキラに詰め寄ると
「じ、G・・・」
とだけつぶやいて目を逸らした。
俺は羞恥のあまり涙目になって走り去った。
すぐに追いつかれました。
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よう。昭次だ。
男3人、俺たちはやることもないので適当に周りの店を見て回っていた。
しかし、コウが女性下着を付ける日が来るとはな・・・
人生本当に何があるかわからない。
・・・女になったコウ、本当に可愛くなったな。
顔は同じでも、醸し出す雰囲気が男の時と違う。
なんだか柔らかくなった気がする。
別にトゲトゲしていたわけではないが、男のコウは結構凛々しい顔を見せることがある。
この間のナンパされている他校の女子を助けた時もそうだ。
あいつは大して喧嘩が得意なわけではないが、困っている人を見ると放っておけないタチらしく後先考えず飛び込んでいってしまう。
他校の女子を見て、あーあ、厄介そうな奴らに絡まれてんなー、と俺が傍観してたら顔をキッと引き締め颯爽と走り寄っていった。
小さくて華奢で、女の子みたいなくせにさ。
かっこいいのだ。あいつは。
ただ、そのままだとあいつも女の子と間違われて連れてかれそうだったんで、横槍を入れに行ったが。
かっこかわいいあいつをこれからも見ていたいと思う。
だから、俺は俺がしたことを後悔しない。
あいつに何かあったら、俺が守ってやる。
なんてことを考えてたら、下着屋の側まで来てしまった。
お店からキャイキャイと声がする。
・・・コウ達だな。
うるせーなあいつら。店の迷惑になるだろうが。
顔をしかめて目線を送っていたら「G65だと!?」なんて声が聞こえてきた。
これ、もしかして、コウの胸のサイズか?よくわかんねぇけど、Gカップってこと・・・?
・・・ぅゎぉぉきぃ・・・
思わず鼻に手を当ててしまう。
なんでかって?
わかんだろ。
なんとなく気まずくて、店から目を逸らしていたら、妙な男が目に入った。
周りの店で商品を見るフリをしているが、目線は常に下着屋を向いている。
・・・普通の客じゃねぇな・・・
俺の視線に気がついたのか、男はこちらを一瞥すると、どこかへと消えていった。
気がついたらコウ達が出てきて、アキラの言葉に泣きそうなって走り出したので慌てて追いかけた。
バランスを崩したところで手をとってコウを諌める。
「走んな。転ぶぞ」
こいつは多分まだ女の体に慣れていないんだろう。うまくバランスが取れてないみたいだ。
ったく、危なっかしい。
あーあ、真っ赤になっちゃって。子供扱いされて恥ずかしかったのだろう。
若干プルプルしていたがおとなしくなった。
さて次は服か・・?
まったく、女の買い物は長いな。
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どうも。下着屋の店員です。
お店にはめちゃくちゃ可愛い中学生くらいの子がきています。
ダボっとしたパーカーにジーンズという色気のない格好なのに、なんだかとっても色気があります。
こう、全体から、女神〜、姫〜というオーラがでているのです。
そしてなによりも色気を放出している箇所があります。
そう。胸です。
思わず二度見してしまうサイズのお胸がゆさゆさと揺れています。
お連れの年上の女の子(こちらは高校生かな?)に声をかけられたので、女神女子のお胸の採寸をすることになりました。
初めてですか。なるほど。中学生ならばそれもそうかもしれませんね。
急激に発育したのでしょうか。
・・・予想通りのGカップでした。
巨乳が憎い。
私なんて24にしてこの大きさだというのに。中学生の分際でGだそうです。GODDESS?
最近の中学生は発育が良いですね。
ずるいです。
うらやましくなります。
私も素敵な彼氏に揉んで大きくしていただきたいものです。
素敵な彼氏なんておりませんが。
絶賛募集中です。
あ、外の高校生とかかっこいいですねー。背が高い。バスケしてそう。
巨乳中学生が選び終えたみたいです。お会計を済ませお店の外に出て行きます。
先ほどの男の子と合流していきます。
・・・あなた達の連れでしたか。そうですか。
神様、世の中は不平等です。
さてさて一応8話まできましたが、ちゃんと続いていくかな。
息抜きスタンスは忘れずに行きたいです。