七夕祭りの裏側1
ものっそい久しぶりです。ちょっと設定が右往左往していました。
ゆっくりでも完結までもっていきたいです。
うん。少し心配だったがネムリアは随分と馴染んでいるみたいだ。
これならば送り出したかいがあったというものだ。
しかし隣にいる男は随分と頼りなさそうだけど……
ネムリアがあの男と結婚するとか言い出したら………
いかんいかん。考え出すと怒りで力が漏れ出してしまいそうだ。
もっと別のことを考えよう。
……たとえば、さっきは私のことをバンバンと水風船で追い回してくれたやつがいたな。
お返しにくちばしでつついてやったら風船がわれてびしょびしょになっていた。
ふふふっあれは傑作だったなぁ。
すっかり意気消沈していたけれど、かわいい女の子じゃなかったら目玉の一つでもくり抜いていたところだ。あの程度で済んだことに感謝して欲しいものだね。
……ふー。落ち着いてきた。うん。ネムリアの趣味に口出ししたらダメだね。
そういうこと言うときっとネムリアに嫌われてしまう。
自重しなくては。
◇◇◇
お祭りとやらの雰囲気に飲み込まれて私としたことが随分とはしゃいでしまった。
私の両手は、綿あめ、りんごあめ、お面に串焼き、ヨーヨーで手一杯だ。
それにしてもヨーヨー釣りのあの釣り針、なんであんなに簡単にちぎれてしまうのか。
あれでは釣りあげることなんてできないだろう。
私が手に持っているヨーヨーも自分で釣り上げたものではない。
一緒に行動している男の子にとってもらったものだ。
私は5回やって一回も釣り上げられなかったのにいとも簡単に釣り上げられてしまい思わずタイキックをかましてしまったのはしょうがないことだろう。蹴られた当人は妙に恍惚とした表情を浮かべていたのが解せないが。
しかしとったヨーヨーを私にくれるとは思っていなかったので口を開いて固まってしまった。
照れ臭さと、蹴ってしまった気まずさもあってさっきから口をきけていない。
うう。なぜだろう。私はこいつの前では外行きの仮面が外れてしまう。
何をしゃべったらいいかわからなくなる。
学校にいる取り巻きどもは何も気負わずあしらえるというのに…。
ちらりと隣を歩く男の子の顔を盗み見る。
あちらもこちらを丁度見ていたのか視線が重なる。
かっ顔が熱くなる。あっちは困ったような顔をして微笑んでいる。
わ、私は一体どうしてしまったんだ…!?
自分の気持ちがわからず思わず男の子を振り払うように前を見ずに突き進んだ。
どんっ、と何かに当たる感触があり思わず顔をあげると、いかにも軽薄そうな男と目があった。
「いってえな、テメー。お、キミ外人さん?かわいいじゃ〜ん」
サングラスをずらし、一瞬しかめ面をされたがすぐに相好を崩し、ニタリとした嫌らしい笑みを浮かべてくる。
まあまあ整った顔をしているが、下心が透けて見えて正直気持ち悪い。
関わり合いになるのも面倒だ。
適当に謝罪してさっさと行くことにする。
「まぁまぁ、ここで会ったのも何かの縁だと思うしさ?一緒にお祭り見て回らない?一人でしょ?」
こんな男と縁を作る予定もないのだが…。
さてどうしたものか。
◇◇◇
ねむたんと一緒にお祭りを見て回っている。
ねむたんはこういうところは初めてらしく、あれはなに?これはなに?と聞いてくる。
その様子がいちいち可愛い過ぎて辛い。
しかも気がつけば周りのみんなはいなくなり、二人っきりで行動していた。
これはいわゆるデートというやつでは…!?
うおおおおおお!!富岡雪次17歳!!初めて女の子とデートしているぞっ!!
それもこんなとびきり美少女とだなんて…。幸せすぎる。
一人感動に打ち震えていたら、ねむたんが目の前のヨーヨー釣り屋で苦戦していた。
あー、あれはなー。釣り針をつないでいるティッシュを水に濡らさないようにやらないとダメなんだよな。
何度かチャレンジしていたようだがガックリとこうべを垂れている。
しょうがない。おにーさんがとってやろう。
そう思って屋台のおっちゃんにお金を払い釣り針をもらう。
んー、この辺が取りやすそうだな……よっと。取れた。
僕は実は手先が器用な方らしく、こういうのが得意だ。型抜きとかもうまい。
難癖つけてくる店主じゃなければそうとう小遣いを稼ぐことができるだろう。
一時期はやりすぎて出禁にされたこともあるが…。
それはそれとして、ドヤ顔でねむたんの方に振り向いたらタイキックを食らった。
いたいっ!?な、なんで…!?
あ、でも美少女からタイキックされるとかちょっと気持ちいいかもしれない…。
「はい、ねむたんこれあげる」
「…えっ!?」
ぽかーんとした顔で僕の渡したヨーヨーを受け取った。
そのあとはなんとなく気まずくて会話もなく歩いていた。
ねむたんはなんだか考え事をしているようであまり前を見ていない。
危ないなー。
なのでうっかり転んだり、ぶつかったりしないようにねむたんのほうを気にしながら一緒に歩いた。
しばらくして、ちらりとこちらを見たかと思うと、顔を真っ赤にして唐突に走り出してしまった。
えーっ!?
止める暇もなく突き進んで行き、やがてサングラスをかけた背の高い男の人にぶち当たった。
ちょ、ねむたん!?ねむたーーん!!?
あ、あかん、絡まれとる…。うわ、うわーーどうしよう!?
…?あれあの人どこかで見たことあるような…?
そんなことより、毒島君!?青山さん!?周りに頼りになりそうな人もいないし、こ、これは僕が行くしかないのか!?
自慢じゃないが僕は荒事はてんでダメだ。血を見るのとか怖いし、殴られるのもいやだ。
だというのに、僕は昔からこの手のアクシデントに見舞われることが多い。
大抵の場合は素直にお金を差し出すか、ヘコヘコ謝れば大事にはならないのだが…。
自分ならともかく、絡まれている女の子を助ける方法なんて知らないぞ!?
ど、どうしよう…




