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美少女男子高校生の日常  作者: くろめる
第二章 夏
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七夕祭り3

辺りも暗くなってきた。

ケータイの時計を確認すると19時を回ったところだった。


そろそろ集合場所に向かおう。

目的地は神社の裏手だ。


ここの神社は長い階段を登った上に建っているので、見晴らしが良い。

神社の裏手から花火大会の会場である大きな河を一望することができる。


「彼山さん、大分乾いてきた?」

「あ、うん。ありがとーお姉さま!タオルは洗って返すね!」


そのまま返してくれてもいいんだけど、案外こういうところはちゃんとしている彼山である。

因みにアキツグに渡して汗をたっぷり吸い込んだタオルは既に返却されている。

それこそを洗って返すべきだと思うけどな!

まぁ、その辺は長い付き合いなのでお互いに気兼ねしない。


彼山たちも一緒に花火が見たいということで同行することにした。

よし、向かうとするか。



社へと向う途中の丁度店が途切れた辺り。

暗がりで女の子に膝枕をさせているカップルを見かけた。


おー、おー、こんなところでお暑いですなぁ…。

ん?よく見たらあれは黒居と富岡じゃないのか?

ずいぶん進展があったみたいだね?


「ねぇ、ねぇアキツグ…あっち」

「ん?お。へぇー。富岡もやるじゃねーか」


野次馬根性丸出しでにやつく俺とアキツグ。

黒居は顔を赤くしてちょっと目が泳いでいるが満更でもなさそうだ。

富岡の方はなぜか知らないが左ほほが赤く腫れている。大方黒居を怒らせてビンタでもされたことだろう。


んーどうしよっかな。あまり声をかけるのも悪いかとは思うけど、ここの花火は開始も見応えがあるから、見逃すのはもったいないし。と逡巡してたら彼山が声をかけにいってしまった。


「ほらほら先輩たち!そんなところでいちゃいちゃしてないで、花火始まっちゃうよ!」

「い、いちゃいちゃ!?」


黒居と富岡は唐突に声をかけられてびっくりしている。


「か、かほちゃんっ、お邪魔しちゃ悪いよ〜!」

「だって、この人たちが行かないとお姉さま移動しなそうなんだもん」


すまんな。

でも本当に始まっちゃうから行こう。


「い、イチャイチャなんてしてないデスッ!」

「ごっ!?」


黒居が勢い良く立ち上がったので、膝の上に載っていた頭はストンと地面へ落下した。

地面が土でよかったな富岡。


「はいはい。わかったから行って下さい。もー、独り身の前であんまり見せつけないで欲しいわー」

「本当ですよねぇ」

「……」


あ、あれ?彼山に賛同したら白い目で見られたぞ?

そしてアキツグの方を見て大きくため息を吐いている。

なんだというのか…。



神社の裏手はフェンスが張り巡らされていて、木も生えているがちゃんとポジション取りをすれば目の前に大きな花火を見ることができる。

なのにあまり知っている人はいないのでほとんど貸切状態だ。

というのも、一見神社の裏側に回れそうなところがないからだ。探せばちゃんと通れる道があるんだけどね。

知る人ぞ知る穴場スポットってわけさ。


俺たちが着く頃にはすでにアキラとマコト、木嶋さん香織姉、青山、そしてユウとハルカが来ていた。


「コウ、ギリギリじゃないの。すぐ始まるわよー!」


「お待たせしました。アキツグ行こうっ」

「おう」


青山たちに急かされて小走りでフェンス付近へと向う。

花火大会開始の挨拶がながれ、開始を告げる大きな花火が次々と打ち上がった。


夜空には大輪の花が燃え上がり、一拍遅れてドドーンという身体中を震わせるような音が辺り一帯に鳴り響く。


ここで花火を見るのは今年で2回目だ。

去年の夏頃、アキツグ達とこの辺りを散策していたときにたまたま見つけたんだよな。

ここからなら花火が良く見えるんじゃないかと、大興奮したっけ。

実際に七夕祭の日見に来て、予想以上に綺麗に花火が見えて、あまりの凄さに言葉も無かった。


ここから見える盛大な景色は変わらないな。

俺の性別は変わってしまったけれど、それでも変わらないものもあるもんだ。

辺りに目をやればみんな夜空を見上げて一言も発していない。


近くにいた黒居に声をかけてみる。


「お祭り、楽しんでますか?」


「…中々、悪くないデス」


夜空から目線を逸らさず、少し不満そうに口を尖らせてそう言った。


その様子を眺めて少し笑い、俺もまた空を見上げた。


願わくば、来年もまたこいつらと一緒に花火が見れますように。


すでに過ぎた七月七日のお願いを、今したのだった。



◇◇◇



コウたちが夜空を見上げているすぐ側の木には、闇に溶けるような深い黒色のカラスが一羽。

何かを監視するかのようにジッと辺りを見つめていた。



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