vs黒居ねむ-ミスコン!-その2
書き直しに伴い、数話整理しました。不具合が出てしまった方には申し訳ないです。
第12回 ミスF高コンテスト
開催日時:
6月20日(土)13:00~
場所:
F高校体育館
審査方法:
1. 自己PR(衣装自由)
2. 手料理
3. 水着審査(種類自由)
各種目毎に審査員によって逐次勝敗を決める。総合的に勝利数の多いほうの優勝とする。
出場者:
2年A組 神崎 紅
2年A組 黒居 ねむ
審査員:
F高校 学校長:大鳥居 伊佐次
2年A組担任:岡崎美々
2年A組 全校生徒代表:富岡 雪次
※審査員の選出については神崎、黒居両名に了承を得ております。
賞金:
優勝:F高No.1美少女 の名誉 + 学食30食無料チケット
運営:
生徒会、コウたんファンクラブ、ねむたんファンクラブ
◇◇◇
どこかで見たことがあるようなプリントが学校の廊下に貼り出されていた。
周囲にはプリントを見てざわざわしている生徒たちがいる。
「コウたんの巨乳を公に観れる!」とか「ねむたんのちっぱいちっぱい!」とか口々に叫んでいる。
叫ぶな。
文字の書かれていない空欄には俺と黒居の制服姿でカメラ目線で微笑んでいる写真が載せられており、二人の真ん中には大きく「VS」の文字が。
今回のミスコンは、異例の一騎打ち形式である。
本来であれば出場者は自薦他薦問わずに広く募集するのだが、現在学校中の人気は俺と黒居によってほぼ二分されていると言っていい。そのためだったら最初から一騎打ちでいいじゃん。ということになった。
そもそもファンクラブ争いの決着のために開催するようなもんだしなー。
審査員については片方に贔屓になりにくい人物が選ばれている。
学校長の大鳥居先生は理事長でもある。
この高校の最高権力者だ。とても真面目な先生で、曲がったことは大嫌いな性格をしている。
なのでミスコンでもどちらかに肩入れすることなく、公平に審査してくれると考えての人選だ。
実はこの人、マコトの父親なのだ。
いつもヘラヘラひょろひょろしているマコトとは全然似ていない。
俺たちの担任の岡崎先生も不正などしないだろう。
ふわっと柔らかく全校生徒をとても大切に思っている先生だしな。
黒居も先生と接して少ない期間ではあるが、その辺は理解している様子だった。
「あの方は私利私欲で動くようには見えマセン」とかなんとか。
富岡については現在は黒居のファンだが、以前は俺のファンだったわけだし、今でも葛藤があるみたいだから中立に近い立ち位置にいる。
現状どちらのファンクラブにも所属していない人物を使うという手もあったが、黒居も俺も富岡に審査してもらうのが一番いいと思っていた。俺にとっては富岡を取り戻し、黒居に吠え面をかかせるチャンスだし、黒居にとっては俺の心を折るチャンスだろう。
今回の戦い、不本意ながら富岡がキーマンとなることだろう…。本当に不本意だけど。
これでケリを付てやるっ!
◇◇◇
そして決戦の日はやってきた。
体育館には大掛かりな設備が整えられ、大きく「ミスF高コンテスト」の文字が。
TV撮影に使うような立派なカメラも数台設置されており、ステージ左右の2箇所に大型スクリーンも用意されている。
また、ところ狭しと並べられたパイプ椅子はすでにほぼ満席だ。
土曜日という授業もない日の高校にこんなに人が集まるとは。しかもミスコンという一つの出し物しかないのに…。文化祭とかならともかくさぁ。
ちなみに、観覧に来ているのが在校生だけかと思ったら、かなり外部の人もいるらしい。
他校の生徒や青山の父親なんかも来ている。なんで青山父が…。
青山に聞いたら
「…コウが前うちに泊まったじゃない?そのときに殴られた快感が忘れられないって言ってて…」
と、複雑そうな顔して語ってくれたが、聞かなければよかったと思った。
そんな話をしていたら黒居が近くにやってきていた。
「コンニチハ、神崎サン。ようやく貴方との決着が付られそうデスね?」
「…こんにちは、黒居さん。どちらが上か、ここではっきりさせましょう」
二人とも不敵にニヤリと笑う。どちらも勝利を確信している顔だ。
俺たちの間には目に見えない火花が散っている。その気配にあてられたのか、周囲がどよめいた。
お互いそれ以上は何も語らず無言で去っていった。
そろそろスタンバイする時間だ。ステージへ向かおう。
ふふふ、吠え面かかしてやんよ!
俺たちは衣装を着替え出場に備えて、舞台袖に待機している。
一審査目の自己PRのためにそれぞれ衣装を用意したのだ。
現在壇上では生徒会の中澤さんによるマイクパフォーマンスが行われていた。
「っさぁ〜〜〜!ついについについに!この日がやってきました!!皆様は今日という日が楽しみで夜も眠れず、夜の営みも捗らなかったのではないのでしょうか〜〜〜!?私はそうでした!!」
何を言ってるんだ。
「第12回のミスコンということでありますが、今回は異例中の異例!なんと美少女2人だけの一騎打ちとなっております!疑問を持つ方もいらっしゃると思いますので理由を説明させていただきますと、なんせこの2名が全校生徒のおおよそ80%をファンとして握っているのですーー!」
どよどよ
「そんな馬鹿な…!」
「そこまでの美少女がこんな高校にいるのか?」
「冗談だろ…?」
「ふふふ、事情を知らない方の疑問の声が聞こえてきますね!おそらくまだお二人の姿を拝見したことがないのでしょうっ!それもすぐ納得の表情に変わるかと思っています!が、その前に審査員の紹介をします!」
壇上には3人の審査員が特設されたテーブルについていた。
「一人目は我がF高の創始者である大鳥居 伊佐次 校長です!一見お堅そうに見える先生ですが、今回のミスコンも快諾していただけました!生徒に理解のある校長先生です!では、一言お願いします!」
「ふむ、高校生の自主的な活動は大いに推奨したい。これからも頑張ってくれたまえ」
なるほど。案外理解ある人物なんだなー。じゃなかったら俺の時の争奪戦なんかできるわけないか。
「続きまして、2年A組担任の岡崎美々先生です!」
「はーい、岡崎です。神崎さんも黒居さんもどっちもいい子だからみんな応援してあげてねー」
岡崎先生とは1年からの付き合いだ。ちなみに俺が男の昂ということも知ってる一人だったりする。
陰ながら色々フォローしてもらってる。
「では、最後は2年A組、今回の出場者2名のクラスメイトである富岡雪次くんです!」
「と、富岡です、まさか自分がこんな席に座ることになるとは思ってなかったです…。」
富岡は若干顔を青くしている。
こんな大舞台に引っ張り出されるとは思ってなかっただろう。
あたりからは「羨ましいぞー!」とか「裏切り者ー!!」とか聞こえる。
まぁ、俺のファンクラブからしたらこいつは裏切り者だからな。
あとこの席は俺たちの姿が非常に見やすい…。いわばかぶりつきの席である。
そのため、前日まで富岡を亡き者にして入れ替わろうとする輩がいたとか居ないとか…。
まさかな。
「この度のミスコンはその熾烈な争いに終止符を打つためのまさに聖戦!どちらが勝利するのか!?非常に楽しみでしかたありません!!私も一切の私情抜きにして、MCを務めさせていただきますっ!
…それでは、待ちきれないボーイズ&ガールズのために、開始と参りましょうか!」
そこで中澤さんが一呼吸を置いて、声を張り上げた。
「F高が誇る、2名の美姫の入場ですっっ!!!!」
わあああああーーーーー!!!!!!!!
会場からは大きな声援が聞こえる。
黒居と俺は目だけで宣戦布告しあうと揃って入場を開始した。




