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美少女男子高校生の日常  作者: くろめる
第二章 夏
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vs黒居ねむ1

黒居さんが転校してきた日から3日程度過ぎた頃、学校がなんだかすごいことになってきていた。


校庭では、腕に赤い布を巻いた生徒と黒い布を巻いた生徒がにらみ合っていた。

この人たちが何かと言うと、コウたんファンクラブとねむたんファンクラブ会員である。


腕の布には刺繍が施されており、よく見ると赤い布には「紅命」の文字が。黒い布には「ねむ命」の文字がみえる。

そしてのそれぞれの一団はカラーギャングよろしく、赤と黒とで対立を始めているらしい。


…まじでか。


俺が学校に登校すると、赤い布の一団が近づいてきて、俺のことをとり囲んだ。


「コウさん、ここは危険です。ワシらがガードしますので、離れないようにして付いて来てくだせえ」


そう言って俺に向かって会員カードを提示してきたのは、コウたんファンクラブNo.0010の知床 大河(しれとこ たいが)くんとNo.0009の姫路 美咲(ひめじ みさき)さんだ。

説明したかもしれないが、二人とも俺のクラスメイトだ。知床くんは柔道部の副主将だ。かなり大柄で熊のような男だ。腕が立つ。

姫路さんも薙刀部の副主将だ。いつもハァハァしている。マコトと気が合いそうだ…。

ちなみに何時ぞやの争奪戦では二人とも富岡と共にチーム世界遺産の一員として活躍していた。


俺は知床くん達の無言の圧力に負けて、おとなしく10人程度のメンバーに取り囲まれながら登校する。

みんな運動部の実力者達らしい。よく見ると俺の所属していた剣道部のメンバーもいる。

なんとなく気まずくなって目の前の知床くんに「布かぶるのやめたんですね。」なんて話を振ってみたら


「我々の活躍をご覧いただけていたようで嬉しい限りですぜ。しかし対立する相手ができた以上、堂々と素顔を晒し、誰がどちらの傘下であるかはっきりさせる必要がありやす。なんで、皆覚悟を持って布は脱ぎ去りやした。」


という決意に満ちた表情で回答された。

それにしてもクラスメイトなんだしもうちょっと砕けた話し方でいいと思う。他人(ひと)のことは言えないけれど。


「ありがとうございやす。しかし今は任務中ですんで。公私は分けませんとな。」


任務だったのか。。

なんていうか思った以上に統率のとれた組織なのかもしれない。アキラ恐るべし。


昇降口付近まで近づいた辺りで黒い布を巻いた生徒と目があった。

すると彼は口に手を当てて小さく呟く。


「貴様が噂の女神こと神崎 紅か…ククク。確かに神々しい美しさだが、胸に付いた駄肉が全てを台無しにしているな。これでは我らの信仰するねむたんの足元にも及ばない」


こんな罵倒のされかたは初めてだ。どう反応したらいいかわからなくて怒りも湧いてこないな。

だが、俺の周りのファンクラブ会員たちはそうでもなかったらしい。


「きっさまぁ!!コウたんの胸を駄肉だと!?巨乳の素晴らしさがわからない愚か者め!」

「はっ!胸の大きさを誇るなど、中身がないと言っているようなものではないか!それに引き換えなんと貧乳の素晴らしきことよ!庇護欲をそそる幼き姿!また小さき胸を恥じらう仕草こそ至高!」

「馬鹿者!乳は母性の象徴!全てを優しく包み込む聖母のごときコウたんのお胸の良さがわからないとは…!もう一度生まれなおしてくるべきだな!」


うあああ!!!やめろーー!!人の胸のことを品評するのはやめろ!!

そしてそのことで言い争うのをやめろーーー!!いいじゃない!大きくても小さくても!好みは人それぞれでしょう!?


「おお…さすがコウたん、敵方すらも包み込む包容力の高さよ…」

「くっ、さすが女神と謳われることだけはある。今日のところはそちらの主神に免じて引いてやろう」


そう言って黒布グループは去っていった。

ああ、なんかもうどっと疲れたんだけど。



教室に入ると、俺の席の近くで何やら人だかりが出来ていた。


「ヤダ〜、みなさん面白いデスね〜」


中心には黒居さんがいて、周囲を取り囲むように男たちが群がっている。

そして順番に手品やらモノマネやらを披露して、黒居さんの興味を引いているみたいだ。わーお。


「今日一番面白かったのハ〜、富岡くんデスね☆」


おお〜!とかくっそ〜!とか一喜一憂している。富岡も何か出し物していたらしい。

ていうかお前、、寝返ったな…。ついにブレやがった。先日の俺の尊敬を返せ。


「じゃ、じゃあ、い、いいかな…!?」


そう言って黒居さんに向かって頬を突き出す富岡。


「モチロンデス〜…ちゅっ」


わわわ!黒居さん、富岡のほっぺにチューしてる!まじか!え、なにそんな特典があるのこれ!

うわーうわー。思わず顔が赤くなってしまう。ほっぺとは言え、キスをされた富岡の顔はゆでダコのように真っ赤になって、スライムのように表情がとろけている。恐るべしほっぺにチュー。


一部始終見ていた俺に気づいたのか、富岡が気まずそうに目を逸らした。


「…ごめん、神崎さん…!僕は、神崎さん一筋で行こうと思ってた、思ってたんだけど…!!目の前につられたニンジンに食い付いてしまったんだぁぁぁ〜〜〜!!!ねむたん〜〜〜〜〜!!!」


叫んで廊下に走って行った。

正直どうでもいい。


だが知床くんは「信じられない…まさか富岡が手中に落ちるとは…」と驚愕している。

姫路さんも「あんなポッと出の金髪にしてやられるなんて、、富岡も落ちたものですわ…」と憤慨している。

二人とも同じ世界遺産ネットワークとしても裏切られた気持ちなのだろう。


黒居さんはどういうつもりなのだろうか。ただの人気取りにしてはやりすぎな気がする。

真意を問うため黒居さんに目線を送ると、ニヤリと挑発的な笑みを返してきた。


「きひっ。ワタシが人気者になるのが気に入らないですカ?それとも、神崎サンの子分を貰っちゃったのが気にさわりましたカ?」

「…別に子分ではないですが…」


別に子分じゃないし、人気とか、ファンクラブとかどーでもいい。

…けど、こいつに取られるのは、なんかむかつく…!!


いいぜ、そっちがその気なら、受けて立ってやろう。

俺とお前で、どっちが多くファンを獲得できるか、な!!!


黒居の目を無言で見つめ続ける。向こうも目を細め、楽しそうに返してきた。

俺の黒色の瞳と黒居の碧眼が交差する。

おそらくこの瞬間、戦いの火蓋が切って落とされた。



◇◇◇


とある一室にヒョロリとした男が立っていた。

前髪に隠れて顔の様子がわかりにくいが、どうやら疲れているみたいだ。


「…まいったね。まさかあの子が送り込まれるとは思ってもみなかったな。」


予想外だったと、ひとり顎を撫でてごちる。


「強引に退学させたところでまた戻ってくるだろうし、イタチごっこになると迷惑がかかるのは周囲の人間だものねぇ…しばらくは監視を強化するぐらいしかないかな?」


ふぅっとため息を一つ。


「場合によっては、全力で排除するけどね。…彼女を奪われる訳にはいかない」


髪の隙間から覗く瞳には強い意志が見て取れる。


「一応上には報告しておこう」


ばさりと音がしたと思うと男の姿は無くなっていた。

彼がいた場所には一枚の純白の羽が落ちていた。



さぁ〜、コウたんとねむたんの巨乳貧乳対決が始まった〜〜!!

…嘘です。でも、勝負自体は開始されました。

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