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美少女男子高校生の日常  作者: くろめる
第一章 春
37/67

到着王子様

連投その3

[追記]9/24一部加筆修正しました。

ヨヨポートで今後の計画を立てた俺を、青山家のヘリが迎えに来てくれた。

ヘリなんてお前・・と青山を見たら「金は使うもの」と返された。異論はございません。

しかし、勝手に空から侵入したら犯人にバレてしまうのでは?と思ったが


「どのみち時間をかけるわけには行かないから、一気に突っ込みましょう」


という青山の案を採用した。

案外男らしいやつだ。

だがその意見には賛成だ。時間がねえ。さっさとしないとコウが何をされるか・・!

下手したらもう、何かされている可能性だって十分にある。


ヘリを飛ばして犯人宅へ一足飛びにやってきた。

無駄に敷地が広いせいで、余裕で着陸できた。

ヘリの中からあたりを伺うが、誰か出てくる様子はない。


ならば堂々と探索しよう。


俺たちは手分けして石山宅を見て回った。

すると、ハルカが何かを発見したようだ。


「兄貴!こっちに地下に通じる道がある!」


怪しさ抜群だ。普通に家の中に閉じ込められているという可能性だってあるが

声を出されることを警戒したら地下に押し込めるのがベストだろう。

地下室があるなら、そっちのほうが可能性が高いよな?多分。


全員でそっちに向かうことにした。

ただ、向かう途中に妙な施設が目に入った。


「なんだこれ・・。教会・・・?」


建物はなく、教会の内装がそのまま外に出たような、施設がそこにあった。

言ってしまえばこれは・・


「なんか、結婚式場みたいッスね・・」


だな。なんでこんなもんが敷地内にあるんだ。

金持ちの考えることはわけがわからん。


とにかく、地下室だ。さっさと行こう。

地下へ続く坂を俺たちは慎重に降る。


「この先が入れるといいんだけど、、」


降った先にあるのは大きな門だった。

柵のようになっており隙間はあるものの頑丈そうな作りをしていて、鍵を壊して入るというのは難しそうだ。

隙間も人が通るには狭すぎる。手を出すのが精々だな。

取っ手の横には電子ロックだろうか、カードを差し込むスリットがついている。


「ここにカードを入れれば、開くのかしら・・」


「カードか、、それはきっと犯人が所持しているのだろうな。どうしたものか。」


だよなぁ・・。運良くこの辺に落ちてたりなんてするわけがねぇ・・。


「おや、カードだ。」


!!!?


マコトの言葉に振り向くと、手にはカードが握られていた。

お、落ちてたのか?


「うん。もしかしたらこれは、コウくんが用意してくれたのかも知れないね。ほのかに彼の香りがするよ。(くんくん」


そ、そうか。。

カードをスロットに差し込むと、ピッという音と共に門がスライドしていく。

俺たちは頷きあうと、そのまま奥へと進んでいった。


若干薄暗い。

奥には数台の車が止まっている。

高級車に混ざって一台だけバンが止まっていた。

もしかしてこいつでコウのことを連れ去ったのかもな。


右手を見るとそこにもう一枚扉があった。

こちらは人が通ることを想定して作られているサイズだ。

てことはこの先は室内かもな。


・・よっと、


ピッ


その扉も同じカードで開いた。

ここまではスムーズだ。いいぞ・・!


だが、その先にいたのは


「よぉ、坊主ども。不法侵入だぜ?今なら見逃してやるからそのカードを返してさっさと帰りな」


短髪のサングラスの男が一人立っていた。

こいつ・・・

目の前の男からは妙な威圧感を感じる。

喧嘩慣れしてるというか、戦い慣れしているというか、俺たちとは違う世界で生きているような感じだ。

そいつの気配に俺が飲まれているとアキラがスッと前に出た。


「この男の相手は俺がしよう。お前たちは早く奥に進むんだ。」


手には木刀が握られている。

有事のことを考えて持ち込んでいたみたいだ。

アキラの顔色を伺うが強張っている。


「・・へぇ、俺とやりあうってのか?おもしれえ」


こいつがどれだけやり手なのかわからねーが、アキラだって全国ベスト4に入る男だ。

正式な試合じゃない喧嘩でさえその強さは遺憾無く発揮されている。


「わりぃ、頼むぜ」


申し訳なく思いつつも、今は時間がない。すまんが俺たちは先へ進むぞ。

と、そんな俺たちを通さないように男が立ちはだかる。

男の手にはいつの間にか警棒が握られていた。

そいつで俺たちに襲いかかってくる!が、

アキラが木刀でそれを制した。

何か驚いたような顔をして、アキラに向き直る男。


「・・その太刀筋・・・やるなぁ!オマエ!!」


「ぐっ、、」


頼むぜアキラ!あとでなんか奢ってやるから持ちこたえてくれ!

後ろ髪惹かれる思いを振り切り、奥へと進む。

だが、そこらじゅう扉だらけだ!

おいおい、これ一個一個探すのか!?

どれもこれも、ピシッと扉が閉じており、防音機能なんかもありそうだ。


その時だった。


「いいよぉぉ〜〜!じゃ、じゃあ次はこっちにお尻を突き出してみようか〜〜」


「は、はぁい」


ゲスい声と甘く耳朶に響く声が聞こえた。


俺は一瞬で理解した。

そこに犯人とコウがいると。


先ほどまでグラサンの雰囲気に飲まれて萎縮していた心が、熱を取り戻す。

一気に頭に血が上り始める。

コウ、コウ!

声のする方へ全力失踪し、少し隙間の空いていた扉を外へ蹴り開ける。


ドッガァーーーーーッッ!!!!


「コウーーーーーーーッッ!!!!」


転がるように中に入り込む。

目の前には唖然とした顔でこっちを見るカメラを構えたおっさんがいる。


「なななななな、なんだ君は・・・・!?」


おっさんの問いかけに答える間もなく俺は右手の拳をおっさんの顔面に叩き込んだ。


「ゴブゥフゥゥゥゥッ!!!?」


部屋の隅に向かって3メートルほど男が吹っ飛ぶ。

そのまま壁にぶつかって意識を飛ばして崩れ落ちた。


・・確認しなかったけど、あれが犯人だよな?

ぶっ飛ばしたことで少し冷静になった。

ふとあたりを見回すとすぐにコウの姿が目にはいった。


コウ・・?


長い時間追い求めてやまなかった人物がそこにいた。

今時珍しいブルマ姿で、顔を赤く羞恥に染め、四つん這いでお尻を突き出した姿で。


ぶっ・・


その姿に思わず鼻血を出してしまう。

ぐ、な、なんて格好をしてんだ・・!


「いっ、、、いやあああああああ!!!!」


コウの絶叫が響き渡り、それと当時に両手で俺を吹き飛ばした。

ふぐっ!?


「はっ!?しまった!!!つい・・!!!ご、ごめんアキツグ!!大丈夫か?」


鼻血を吹き出しながらきりもみ状態で吹き飛んだ俺をコウが近寄ってきて、膝の上で介抱してくれる。


「ごめん、ごめんな・・、・・・・でも、助けに来てくれたんだな。。」


顔を赤く、瞳を涙で濡らし、安堵の表情を浮かべた顔がそこにあった。


「わり、遅くなった。」


「ううん、ありがとう。」


そんな俺たちの空気をぶち壊すように、よろよろとおっさんが起き上がり叫び声を上げた。


「ご、ごらああああ!!!きさまあああああ!自分の花嫁に何してるんだぁあああ!!!おい!!葛西!葛西はどこだぁぁあぁぁ!!!」


案外目を覚ますのが早かったな。

死んでもいいくらいの気持ちでぶん殴ってやったのに。


もう一発ぶん殴ってやろうか。

そう思ってコウのぬくもりを名残惜しみつつ体を起こしたら

壊れた扉の向こうから見知った顔がやってきた。


「あなた方の手下なら、拘束させてもらいましたよ。」


扉からアキラ、香織姉、マコト、ユウ、ハルカ、青山が顔を出した。

激しい戦いになったんだろう、アキラは額から血を流し、腕を抑えている。

アキラがいなかったら俺はここまで来れなかったかもしれねぇな。。


コウがパッと顔を明るくしてみんなに向かって叫ぶ。


「アキラ!!それにみんな!!」


「ごめんね、遅くなったわ、コウちゃん」


「コウにーちゃん!!大丈夫!?」


「姉貴!!そこのおっさんが犯人なんだな・・・!!?ぶっ殺す・・・」


「大丈夫かい?コウくん。ああ、香りに変わりがないね。大丈夫そうだ。」


「待たせたな、コウ」


「・・おまたせ。」


ようやく全員揃った。

コウが攫われたと知った昨日の夜から、今日の朝まで。

時間にして12時間程度だっただろうか。

それでもその時間は何ヶ月にも長く感じた。

ようやく、ようやくコウに会えた。


コウにとっても長い夜だったことだろう。

かすかに震えている。


「大丈夫か、コウ。」


「ああ、、その、体も、大丈夫だ。」


コウはアキラの問いかけに顔をちょっと赤らめながらそう返す。

お前も頑張ってたんだな。


「・・・うん。」


くしゃっと顔を歪めた。

今度は間に合った。今度は一番に駆けつけられた。

コウはそのまましばらく俺に体を預けて、嗚咽を漏らしていた。



「ふ、ふざけるなぁあああ!!!お前ら全員ぶっ殺してやる!!」



石山が唐突に外に向かって走り出した。

あいつ!まだ何かする気か!?


「ふひひ!!ここはなぁ、証拠隠滅も兼ねた自爆装置があるんだよぉぉぉ!お前らを閉じ込めて、まとめて吹き飛ばしてやる!」


んなベタな!?

冗談みたいなことを告げてよろよろと走り去ろうとする石山。

待ちやがれ!


「いい加減見苦しいですよ。社長。」


走り出した石山の足元を黒い鞭が絡め取る。

そのまますっ転ぶ石山。

その石山に馬乗りになり、女性が黒い皮のベルトのようなもので、石山を叩き始めた。


「あっ、ぎゃっ!!」


石山が悲鳴をあげるが、女はベルトを振り回す手を止めない。


「あっ、、あはぁぁあっ!」


だんだん悲鳴じゃなくなってきた。


「ほらぁ醜い子ブタちゃん!あんたはもう終わりなのよ!ほら!ほら!醜く命乞いをなさぁい!」


・・・なんなんだ・・。


コウを見るとこっちもぽかーんとしている。


「あ、あの、天岸・・さん?」


「あ、あらやだ!私ったらつい!!」


はっと自分の痴態に気がついたみたいで顔を赤らめ両手で押さえている。


「ぶひぃぃぃ!ぶひぃぃぃ!!もっと、もっと殴ってくださいいぃぃぃ!!」


しかし、手が止まったことが不服だったのか石山が鳴きだすと


「ふっ、醜い、醜いわぁぁぁ!!」


ベルトを振るう手が再開された。

パシィ!パシィ!!


「「「「・・・・」」」」


しばらく室内に乾いた音が響き渡っていた。

誰か説明しろ。。


◇◇◇


えっと、コウだ。

いろいろと混乱しているけれど、ことの顛末を話そうと思う。


結論から言うと、俺はアキツグ達のおかげで無事に家に帰ることができた。

彼奴(あいつ)らには本当に世話になりっぱなしだな。

借りの数が膨れ上がってきた。コツコツ返していかないとな。


さて、俺のことを助けてくれた天岸さんは、あの、女王様姿を動画に収められて、それを弱みにされていたらしい。

この姿を公開されたくなくば、自分のことをしばき続ける専属女王様になれと。


石山・・どれだけ変態属性を付与すれば気がすむんだ・・。


しかしそれをネタに強請られるなんてな。あんだけ楽しそうにしてたんだったら隠すこともないんじゃないだろうか。

そう思ったが、本人としてはそれはもう恥ずかしくて知られたくない出来事だったらしい。

普段ならば誰かをしばきたいなんてこれっっぽちも思わないそうなんだけど、黒い鞭や、蠟燭を見た瞬間にスイッチが入ってしまうらしい。なので


「ぜっったい、法事とか、顔を出せないの・・。ほら、お線香あげるためのロウソクがあるでしょ、あれがダメで。。だからキャンドル飾ったおしゃれなディナーとかも無理なの。。」


なんて言っていた。

たしかにそれは難儀しそうだな。



あの後警察が来て、一連の出来事を説明した。

石山のあの盗撮部屋が動かぬ証拠となり、そのまま現行犯逮捕。

おねーさんや部下の人たちも連れて行かれた。

おねーさんの場合は強制的に従わされたわけだから、酌量の余地はあるそうだけど。

でも弱みの話を警察にするのは辛いだろうな・・・合掌。


ちなみにアキツグが助けに来てくれた時、俺のことが見つかりやすいよう部屋の扉を少し開けててくれたのもおねーさんだ。

おねーさんには本当に助けられた。早く解放されて欲しいものだ。



また、部下の男の一人、リーダー格の、サングラスをかけた人が連れて行かれる時にアキラと少し会話していた。


「なぜ本気を出さなかったんですか」


「・・へっ。俺は本気だったぜ。・・けどまぁ、そろそろ潮時かもなって思っちまった。それだけさ。」


「・・・」


あとでアキラに聞いたことだけど、あの人は本当に強かったらしい。それこそ警棒にこだわらず、寝技なり体術を駆使してきたら敵わなかっただろうと。

けれどなぜかアキラと同じように剣術のみで相対したそうだ。

なんだろう、彼なりの矜持があったのだろうか。


「昔、うちの流派でひどい問題児がいたそうだ。腕は確かだったのだが、とにかく暴れん坊だったのだと。やがて彼は海外の特殊な部隊に所属しただとかなんとか。・・ふっ、、まさかな。」


そんなことをアキラが言っていたのが印象的だった。


俺たちは事情聴取とかもあるのだけれど、全員が疲労困憊だったので、それは後日にしてもらい、その日のうちに家に帰された。

実家に帰った俺は母と父と、ついでに弟に涙をながして抱きつかれてしまった。

心配をかけてしまったな。

気がつくと俺も涙を流して、そのまま家族と抱き合っていた。

暖かい食事を食べ、暖かい風呂に入り、暖かい布団でぐっすりと眠った。


次の日はいつものように学校へ向かった。

1日くらい休んでもいいと母と父は言うが、早く学校のみんなの顔を見たかったんだ。



弟と一緒に地元の駅へと向かう。

そこにはいつもよりちょっと早くアキツグが待っていた。


「よぉ・・・」


「おはよ。」


短く挨拶を交わす。

アキツグがそわそわチラチラとこちらを見てきたが、多分俺のことを心配してるんだろうな。

なので俺は


「俺はもういつも通りだ、何も心配することはないぞ。」


と言ってやった。

あ、でも・・


「ウェディングドレスは、しばらく着たくないな」


と笑って言ったら、なぜかアキツグとユウが凹んでいた。

どうしたお前たち・・・。お前たちのほうが大丈夫か?


学校に行くと、一部の事情を知っている友達が心配したような顔で話しかけてきてくれたが、それ以外はいつも通り過ぎていった。

これまでと変わらない日常が再開されたのだった。



短いようで長かった神崎 昂(かんざき こう)誘拐事件は無事、幕を下ろしたのだった。




◇◇◇



学校へと向かう少年と少女を見下ろす黒い影が電柱の上に立っていた。

その影は虚ろな瞳を静かにつぶり、大きくため息を吐いた。


「せっかく3年も前から仕込んでいたのに、残念だったナァ・・。ま、お楽しみはこれからってことで。きひひ」


小さな呟きを残し、影は跡形もなく消え去っていた。

これで一連の誘拐事件は閉幕となります。

気分的には第一部完みたいな。。

お付き合いありがとうございました。


なんかもう色々と突っ込みどころはあると思いますが、生暖かい目で読んであげてください。。

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