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美少女男子高校生の日常  作者: くろめる
第一章 春
35/67

脱出?

連投します

その1

俺はあのおぞましい部屋を後にして廊下に出た。


ひどいものを見てしまった。しばらくトラウマになりそうだぞ。

なんにせよこの部屋はハズレだったな。特に脱出の手がかりも得られなかった。

こうなったらとりあえず脱出口を探そう。


ひたすら暗がりの中を前進する。


するとすぐにT字路に出た。

左側を向くと大きな扉が目についた。

反対側を向くと下りの階段がある。


んー、多分ココは地下だと思うんだよな。一切窓もなかったし。

となると階段を降ってもしょうがないよな・・?


俺は左側にある扉へ向かった。

かなり重厚そうな扉だ。

電子ロックがかけられているのか、鍵穴のようなものは見つからない。


どうやって開ければいいんだこれ、、


ガチャガチャ


取っ手を押したり引いたりしてみるが開きそうにない。

横にはスロットがついており、恐らくここにカードキーなんかを差し込むのだろう。

くっそ、多分これが出口だとは思うんだけどな。。

すぐに外ではないにしろ、繋がる扉だとは思う。


鍵がどこにあるんだろうな。。問題はそれをどうやって入手するか、だ。

おそらく犯人が持ってるんだろうけど、アクションが一切ないから寝てるのかもしれない。

だったら寝込みを襲って、鍵を奪えるかも・・?


とそこまで考えたところで誰かが階段を登ってくる足音が聞こえた。


ヤバい!隠れないと・・!

踵を返したところで、うっかり転んでしまう。

俺はハイヒールなんて慣れてないんだ!


いたたた・・。


「大丈夫?」


近くにいた人が手を貸して起こしてくれる。


あ、大丈夫です。すいません。

親切な人がいたものだ。


って、助けられている場合じゃない!逃げないと!

それが手を振り払って逃げようとしたところをしっかりと掴まれてしまう。


「まって!大丈夫、危害を加えたりしないわ。私はあなたを助けたいの!」


・・・へ?


◇◇◇


俺を助けてくれると言ったおねーさんは天岸天音(あまぎし あまね)さんというらしい。

俺が言うのもなんだけど、結構な童顔で非常に幼く見える。

なんでも彼女はここの主人であり、主犯であるセキュリティ会社社長の石山 寛次郎(いしやま かんじろう)という男に弱みを握られ、強制的に従わされているらしい。

だが、流石に誘拐したことは許せなかったらしく、自身の危険を顧みず俺を助けることにしてくれたそうだ。

そういえば犯人グループがどうなってるのかと言うと


「石山が持っていた睡眠薬の残り、、あんまりなかったけど、それをココアに入れて全員に飲ませたわ。一応今のところはちゃんと眠っているみたい。」


薬の効果を確認し、俺が自力で脱出したところに合わせて助けに来てくれたそうだ。


「チェーンをどうしたものかと思っていたんだけど、まさかあんな手で逃げてくるとはね」


俺の部屋の鍵はおねーさんがあえてかけずにいてくれたらしい。

ちなみにウェディングドレスに着替えさせてくれたのもおねーさんだ。

よかった〜〜。変なおっさんに体触られたのかと思ったよ。。


情報共有してもらったところで脱出だ。

脱出するには外の扉用の鍵が必要らしいが、おねーさんは持ってないそうだ。

おねーさんが持っているのは室内の鍵を開けられる室内用マスターキーのスペアだ。

室外用マスターキーのスペアがおそらくこのフロアのどこかにあるだろうとのことだが、、手当たり次第調べていくしかないのかな?


「そうなるわ。薬の効果もどれくらい持つかわからない。手分けして探しましょう。」


ところで犯人が眠っているのであれば、犯人から奪えばよかったのでは。

と思ったが、薬の量が微妙だったので、ちょっとした衝撃で起きてしまう可能性があるそうだ。

なので無難にスペアを狙うことにしたと。

ちなみにおねーさんの持つ室内用マスターキーのスペアは、部屋の掃除を任された際に渡されたそうだ。

でも、屋敷全体に監視カメラが仕掛けられているせいで、今まで握られた弱みを探したりは出来なかったんだって。


俺は室外用マスターキーの特徴を聞いて、おねーさんと別れて探すことにした。

室内用マスターキーと同じようにカード型だそうだ。

このフロアの各部屋の鍵はあらかじめおねーさんに開けてもらった。


片っ端から部屋をひっくり返すが、なかなか見つからない。

カード一枚、確かに見つけるのは難しいが、、あまりにも出て来なさすぎる。金庫らしきものもなかったし。

もしかしてこのフロアにないのでは。


俺は一度おねーさんと合流して進捗を確認する。

目を合わせると頭を横に振った。

やはりおねーさんも見つけられてないそうだ。


「そうなるとまっとうな場所には置いてないのかも。。例えば、壁掛け時計の裏とか、そういう特殊な場所に仕舞っているのかもしれないわ。」


・・・特殊な場所か。。

特殊と言われてピンとくるのは、、あの変態部屋だな。。

あそこも一応探したが。

しかし俺の直感はあそこにあると言っている気がする。


俺たちはもう一度、盗撮コレクション部屋にガサ入れをすることにした。

部屋に入ると俺の等身大抱き枕が迎えてくれた。


なんとも言えない感情が湧き上がり渋面をつくる俺。

あまり正面から見たくないので、裏返しておこう。

くるっとひっくり返す。

・・ん?


先ほどは気がつかなかったが、裏返した反対側にも俺の背中がプリントされていた。

そして、お尻の辺りに妙な切れ込みがある。


「・・・これって、そういう目的・・かしら?」


おねーさんが顔を赤くして俺に意見を求めてくる。

やめてください。考えたくもない。


「あ、もしかして。」


おねーさんが何かに気づいたのか、俺の抱き枕の尻に手を突っ込んだ。


やめて!俺のお尻を汚さないで!!

ていうかよく手を突っ込めますね!?


「あったわ・・!」


おねーさんが尻から手を引き抜きニヤリとした。

その手には緑色のカードと、SDカードが一枚握られていた。

そしてSDカードにはご丁寧に「天音・弱み」とラベルが貼られていた。


・・もっと他に隠し場所はなかったのか。

まあ、見つかったのなら結果オーライだ。

ついでにおねーさんの弱みも取り戻せたみたいだし、一緒に逃げましょう!


「ええ!ありがとう!あなただけでも、と思ったけど、思わぬ収穫だったわ」


ところでそのSDには一体なにが・・。


「それは、ヒ・ミ・ツ」


おねーさんが可愛らしくウインクした。

その仕草にドキッとしてしまった。おねーさんかわいい。。

そうだな、人の秘密なんて尋ねるものでは無いな。


とその時、階段の方からドヤドヤと誰かの登ってくる音がした。


「まずい!他のメンバーが目を覚ました!?」


一旦音もなく盗撮コレクション部屋の扉を閉め、相談する。


「今から扉に向かっても鉢合わせするだけだわ、一旦ここに籠もって、やり過ごしましょう」


うまいこと他の部屋を調べてくれてれば、その隙に抜け出す。

あたりを伺うために、少しだけ扉を開けておく。バレやすくなるかもしれないが、このフロアは部屋全般に防音が効いているため、完全に閉めてしまうと外部の音がシャットアウトされてしまう。少々不安だが仕方ない。


ところで、


「天岸さん、残りのメンバーって何人ですか?」


俺は努めて小さな声で尋ねる。


「・・石山を入れて4名ね・・、でも全員が出てくるとも限らないし、・・しまった!」


おねーさんは何かに思い当たったらしい。ハッと顔を上げて、部屋の隅を見上げる。

そこには何もなかった。


「ここには監視カメラは無い、けれど他の部屋にはある。他の部屋に私たちが居ないことがわかれば・・」


真っ先にここにやってくる、と。


俺が手を当てていた扉が外側に開いた。


「こんばんは。お姫様。そして裏切り者。」


そこにはサングラスをかけたスーツ姿の短髪の男がニヤリとして立っていた。

背後には同じような姿をした男が控えている。


おねーさんがとっさに緑のマスターキーを俺の手に握らせて、手前の男に向かって突進した。


「逃げて!」


!!


突然の行動に男が驚いて、押し倒された。

俺はその隙にヒールを脱ぎ捨て、一瞬開いた隙間から外の扉に向かってダッシュした。


後ろに控えていた男が追い縋る。

くそっ、ヒラヒラしてて走りづらい!

男の手が俺のスカートの裾を掴んだ。

まずい!?コケるっ!

その瞬間、背後で男に取り押さえられているおねーさんが叫ぶ。


「そのドレスは300万よ!!!」


その声に男がビクリとして、スカートから手を離した。

今がチャンス!!


すぐさま扉に取り付き、カードをスロットに差し込む。

ピコンッという軽快な音がして扉のLEDが緑色にかわる。

扉に手をかけ、外に飛び出だした。

左右を確認すると右手には車が数台ならび、左手には通路の先に大きな門が見えた。

柵の隙間から、光が溢れている。

恐らくあれが外につながる最後の扉だ!


門までたどり着き、スロットにカードを差し込もうとした瞬間だった。

後ろから何者かに羽交い締めされた。


ぐっ・・・!?


「だめだよぉ女神様。君はこれから自分のお嫁さんになるんだからぁ」


俺の耳元で粘つく声がする。

こ、こいつが、、俺を誘拐した犯人か・・!

もう一歩で逃げられたというのに・・・


「っぁあああ、いいよぉおぉぉその顔。。絶望に歪んだその表情も素敵だぁぁ」


恍惚とした表情を浮かべる犯人。

その表情に俺はおぞましさを覚える。

目の奥が完全に濁っている。焦点が合っていない。。

正気ではないのがその様子だけでわかった。


「あああ、もう、もう我慢できない。。。」


そう言うと男は羽交い締めをやめ、俺のことを両手いっぱいで背後から抱きすくめた。

男の右腕は俺の腰をきつく抱きしめ、左手は俺の胸部に力を込める。


「い、いやっ!!」


痛い!くっそ、力一杯揉みやがって!!

その行為で俺は恐怖ではなく、怒りを覚え、後頭部で男の顔面に頭突きを食らわせた。


ガッ!


「!?んぐああああ!!?」


力の弱まった一瞬の隙をついて、男の手から体を抜け出す。

そのまま扉へ!

としたところで後ろから抱きつかれてそのまま倒れ込んでしまう。

ぐっ・・!


せめて、せめてこの鍵だけでも・・!

俺は最後の力を振り絞って、右手に握っていたカードを門の柵の隙間から外へと滑り投げた。


「こらぁぁ!旦那様に手を挙げるとは、いけない花嫁さんだなぁ・・・!!!」


顔を醜く歪めた男が俺に馬乗りになり見下ろしてくる。


くそっ、、、

俺は再びあの部屋に戻されることになってしまった。









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