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美少女男子高校生の日常  作者: くろめる
第一章 春
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編入生

はぁ〜〜〜。

・・やってしまった。


俺は教室で自分の席に座り、盛大なため息をつく。

頭の中はゴールデンウィークの出来事が巡っていた。


パーティは楽しかったし嬉しかったので良い思い出なのだが、あの日はいろいろとやってしまった感が強い。


せっかく青山たちが準備してくれたのに、俺は酒を飲んで寝てしまうし、青山の父を殴ってしまうし。

・・しかもあんな女の子みたいな悲鳴をあげて。。


青山も青山の父も気にしなくていいと言っていたが、裸を見られたとはいえ、友人の父に手を上げてしまうなんて。


ひっぱたいた直後、青山父は嬉しそうな、恍惚とした、笑顔を浮かべたままくるりと一回転して浴室の床に転がった。あんまりにも綺麗にヒットしたので意識を刈り取ってしまったらしい。

恐るべき俺のビンタ。。たまたまだけど。。

その後、すっぽんぽんの壮年の男性をソファまで運ぶというミッションが待っていた。

しばらくしたら意識を取り戻したので平謝りした。


そしてその後お詫びという名目で、青山に、青山家のいろんな服を着せられて写真を撮られたので、チャラになったが。。


「なによ、まだ気にしてんの?」


青山。。そりゃ、まぁ。迷惑かけたなーと思ってる。


「気にしなくていいのに。むしろ私のほうがこんなにイイ物貰っちゃって、申し訳ないくらいだわ〜〜」


懐から出してきた写真の束には、いろんな服に着せ替えられた俺の姿が・・!

だめ!そんなのここで出さないで!!


「このバニー姿なんて最高じゃない?きつめの食い込みに、このこぼれそうなお胸、そして羞恥に顔を赤くして、腕を抱き、潤んだ瞳で見てくる美少女が・・うわぁそそる〜〜」


・・お前本当に、そっちの気ないんだよな・・?


「・・うわぁ・・うわぁ・・」


っておい!富岡!お前も覗いてくるんじゃない!

口元を抑えて食い入るように見てくる富岡。やめろ!見るな!目が必死すぎて怖い。


「やめてください青山さん、それしまって。」


「ちぇー」


しぶしぶといった感じで懐に戻す青山。

なんで懐にいれてんだそれ。カバンでいいだろう。


「大事な友人の写真は肌身離さず持っていたいじゃない?」


うぐっ。

どうもこの間の一件から青山がより一層親しくなったというか、馴れ馴れしくなったというか、ふてぶてしくなったというか。。遠慮が無くなった気がする。

青山にとっては家に友人を呼ぶというのも勇気のいる行為だったんだもんな。それが無事終わって、気も緩んだことだろう。

木嶋さん、富岡、彼山含めて、あれから青山に対する態度が変わるようなことはなくて、俺も良かったと思う。


態度が変わったと言えば、もう一つ。


「よぉ、何見てんだ?」


アキツグの様子が元に戻った。

ゴールデンウィークらへんはなんだか余所余所(よそよそ)しかったのだが、誕生パーティが過ぎてからは元の調子を取り戻していた。


・・むしろ俺の方がアキツグのことを気にしてしまう。

何故なら俺は誕生パーティの日、他にも失態をやらかしていたからだ。


アキツグの膝の上に半裸で乗るという。


完全に痴女である。


俺にはその記憶が全くないので、冤罪だ!と叫びたいところなのだけれど。

いったい俺はアキツグと何をしていたんだろう。

そのことを聞いてもアキツグは「・・いや。」と気まずそうに目を逸らすだけだし。


何をしたんだ俺ーーー!!?


ご飯が美味しかった記憶しかないなんて。

ただの食いしん坊さんである。


・・あ、そういえば今日は慌てて出てきたから弁当を忘れたんだった。

そのことも思い出してため息を一つ。はぁ・・。

くそう、それもこれもきっとアキツグのせいだ。そういうことにしておこう。


「なんでもないです。ほら先生来ましたよ。」


担任の岡崎先生が教室の扉を開けて入ってきた。


「は〜い、みなさん、席についてくださ〜い」


そして、その後ろを背の大きな男子がついて来ていた。


かなりのイケメンだが、、どこかで見た顔である。

そいつは教室をキョロキョロ見渡して、俺の方を見て軽く手を上げてきた。


「よお姉貴!」


「ゆ、ユウ!?」


そこには何故か俺の弟が立っていた。

なんでお前がこんなところに?

学校はどうした!サボりなのか!サボりなんてお兄ちゃん許さないぞ!


なんてよく分からないことを考えて口をパクパクしていたら、ユウが俺のところまで歩いてやってきた。


「姉貴、今日弁当忘れただろ?持ってきたぜ」


そういって可愛らしい弁当包みに包まれたお弁当を手渡してくれる。


「あ、ありがとう・・ってそうじゃなーい!なんでお前がここにいるんだ??」


まさかわざわざ弁当を届けるために、この高校まで来たわけじゃあるまい。


訝しんだ視線を向けると、ユウはニヤリと笑うと自分の制服を指差して


「編入してきた」


と言った。


・・


はぁーーー!?


「こらこら、神崎くん、君も自分の教室に戻りなさい。もう用事は済んだでしょ〜?」


「はーい、そんじゃまたあとでな、姉貴」


手を振って去っていく弟の後ろ姿を唖然と見送った。


(今の神崎さんの弟くん?やっぱかっこいいね〜!)

(背高いね!編入してきたって言ってたね〜、あとで教室見に行こっ)

(お弁当持ってきたなんて、お姉さん思いなのねぇ)

(イケメン・・爆発しろ)

(神崎さんと一つ屋根の下なんて、、許せん・・・!!!)

(はぁはぁ神崎さん、唖然としている神崎さんも可愛いですわぁぁ)


周囲がざわざわとしているが、俺の耳には入ってこなかった。

確かに制服はこの高校のものだった。あいつは別の高校、T高校に行ったはず。。

・・編入したって、、本当に?


俺は1限目が終わり、休み時間になると同時に、1年生の教室にダッシュしていった。

何故かアキツグも一緒についてきた。


「さっきの、ユウだよな?」


そう、アキツグもユウのことは顔見知りである。

なんせ二人とも同じ学校のバスケ部に所属していたわけだから。

二人は息のあった良いコンビだったので、ユウが別の高校に行ってしまったことを知ったアキツグは残念そうにしていたな。・・・なのに。


「なんであいつこの高校にいるんだ?」


そんなん俺が知りたいわ。


っと、この辺り1年生の教室なんだけど、、どこのクラスに入ったのかわからないな。。

よしこんな時こそ。


「ちょっと失礼。高山くんか彼山さんいますか?」


ヤツらの教室に足を踏み入れた。


「コウ様!!」

「お姉さま!!」


二人とも一瞬で登場した。恐ろしく素早い。


「今日はどういったご用件「お姉さまどうしたの?」


高山のセリフに食い気味な彼山。

二人の間に目に見えない火花が飛び散る。バチバチッ


神崎 勇(かんざき ゆう)、、私の弟が編入してきたみたいなのですけど、何か知りませんか?」


「ああ、それならそこに」


彼山の指差す先に弟はいた。

ほぼクラス中の女子全員に取り囲まれている。


あいつあんなにモテるわけ・・?

確かに顔は悪くない。あいつも俺に似て若干女顔ではあるが、鍛えているからなのか逞しさと鋭さを感じる顔つきであり、なかなか男らしい。俺もこんなロリ顏でなくあんな風になりたかった。

・・・なんだか無性に腹が立ってきたぞ。

同じ血を分けた兄弟なのに、俺とあいつが何が違うというのかーー!

と、そうじゃないそうじゃない。あいつがなんで急に編入なんてしてきたのか小一時間問い詰めないと。

俺は何も聞かされてないぞ・・?

それにしてもこの教室、何かと縁があるなホント。


俺はずいっと教室中央のイケメン弟を睨む。


その視線に気づいたユウが人垣を分けてやってきた。

おいコノヤロー、なんか俺に言うことあるんじゃないのか?


そう見上げたら、ユウが俺の肩に手を置いて、自分の方に引き寄せてきた。

え?え?


周りからは「きゃーっ!」という黄色い悲鳴が上がる。


「久しぶりッスね、アキツグ先輩。」


「・・よぉ、T高校に行ったって聞いてたんだけどよ?」


二人が対面する。なにか様子がおかしい。二人とも睨み合っている。

あ、あれ?お前らもっと仲良くなかったっけ・・?ていうか俺無視!?

するとユウがぎゅっと俺のことを後ろから抱きしめて


「先輩に姉貴は渡さねぇよ?」


そう言った。








久しぶりの弟くんです。

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