恋のライバル4
今日は最悪の日だ。
屋上に排除したはずのロリ巨乳は健在だったし、げた箱に仕込んだ嫌がらせはこたえてないし。
まぁ、それはまだよくて、二人は付き合ってないってわかったし。
これで障害は何もないはず!そう意気込んでわざわざ部活が終わるのをじーっと外で待ってたのに、
アキツグせんぱいは私の気持ちに応えてくれなかった。。
こんなに好きなのに!中学の頃からずっと好きだったのに!
アキツグせんぱいの存在を知ったのは、中学の時。バスケットボールの練習試合に、私は相手チームのマネージャーとして参加していた。
そのときのせんぱいのプレイは今でも目に焼き付いている。
夏の焼けるような体育館の空気の中、ひとり涼しげな顔をしてその人は次々と得点を決めて行った。
あの人に集まったボールはどれだけ障害があっても、かならずゴールまで到達して、ボールは吸い付いたようにあの人から離れなかった。
うちの中学も、結構な強豪校だったんだけど、せんぱいには敵わなかったな。
せんぱいはボールを奪おうとやっきになるうちのメンバーを次々とやり込めて、するりと抜け出して、空中でシュート!、、とそれはフェイクで、つられて飛んだガードの後ろから片手でボールを投げた。
空中であんなに綺麗にボールを捌ける人がいるなんて。その洗練された動きにわたしは心を奪われたのだ。
アキツグせんぱいは、やっぱりモテたみたいで、わたしの他にもその試合でやられちゃった子が何人もいたみたいだった。
その頃のわたしは、結構引っ込み思案で、思ったこともあまり口に出せないような子だった。
なので、せんぱいに告白するなんてことはできなかった。
しばらくして、わたしは中学3年生になり、当然せんぱいは高校1年生になった。
せんぱいがF高校に入ったというのは風の噂で聞いていたので、わたしも進路希望はF高校にした。
今度こそ、せんぱいにちゃんと告白しようとわたしの恋心を胸に秘めて。
成績はあまりよくなかったのでいっぱい勉強した。
わたしは高校で変わるんだ!
結果は見事合格、でも入ってみたら、せんぱいは高校でもスーパースターだった。当然ライバルは山のようにいた。
なかでも強烈なのが、通称"女神"だった。
これまで見たことのないくらいの美少女で、顔もちっちゃく、足は長く、腰はくびれてて、そのくせ巨乳っていう
なんなのこの女!・・でも背はちっちゃかったので、そこだけはなんか親近感が湧いた。
こいつが一番のライバルになる!と思ってたんだけど、付き合ってないっていうし、付き合う気もないって言うから
わたしの勝利は確実!・・だと思ってたんだけどな。。
はぁ〜あ、わたしは大きくため息をついた。せんぱいの部活を待っていたのであたりはうす暗い。
なっちゃんも付き合わせてしまって申し訳なかったな。
大体なんなのよ!好きな人がいるとか!聞いてないわよそんなの!むきー!もう、帰ったら課金よ!課金して朝までゴリゴリネットゲーしてやる!
そんなもやもやムカムカした気持ちのわたしの前に、立ちはだかるように地面には空き缶がつき立っていた。
・・なによ、空き缶までわたしの邪魔をする気?くっそー!ばかにしてー!!
カーーーン
思いっきり蹴っ飛ばしてやった。ちょっとだけ気分が晴れた。ふん。
ガッ
「あ痛て!?」
ん?なんだか醜い声がしたわ。だれよそんな汚い声をだしたのは。
正面を見ると頭を押さえながら、金髪で、ヤンキーな方々が近づいてきていた。
・・・あ、わたし、やっちゃった・・?
「に、にげよう!なっちゃん!!」
わたしは急いでなっちゃんの手を取って走り出す。でもすぐに囲まれてしまった。
ど、どうしよう・・!せめてなっちゃんだけでも逃さないと・・!
わたしのせいでこれ以上迷惑はかけられない。。
焦って混乱する頭をなんとか冷却し、方法を探す。えーとえーと、えいっ!「ぐふっ!?」
近くのヤンキーのお腹に一発いれて、よろけたところをすり抜け、なっちゃんとは反対方向に走る!
やった!みんなついてきたみたいだ。これならなんとか、、
でも、わたしの足はあまり早くない。「テメェ!」「ふざけてんじゃねえぞ!」とか怒声が聞こえて来る。
あわわわわ、、だ、だれか助けて・・!
テンパっていたわたしはどんどん人気のない方向に逃げてしまう。
し、しまった!行き止まりだ!
とうとう不良どもに追いつかれて、わたしは再び囲まれてしまった。
「どういうつもりだてめぇ、、いきなり空き缶ぶつけて、ボディーまでかましてくれやがって・・」
「ワビの一つもなしとか、どういう教育受けてんだこのやろう」
「いっちょ体に聞いてやろうか・・?へへへ」
「・・お前ロリコンだったのか・・・」
ヤンキーがわたしの体を舐め回すようにジロジロみてくる。・・きもちわるい・・。こわい・・。
カタカタ手が震えているのがわかる。
「ご、ごめんなさい。空き缶をぶつけたことと、お腹を殴ったことはあやまります・・だから。。」
どんっ
「いったぁ・・」
わたしはヤンキーに突き飛ばされて尻餅をついてしまう。
「もうおせぇよ」
そのままの流れでヤンキーが覆いかぶさってきた!やだ!やめて!!
どうして?どうしてこんなことになったの?わたしが悪かったの?
ごめんなさい。迷惑ばかりかけてごめんなさい。なっちゃんにも怖い思いをさせてごめんなさい。
全部謝りますから、
お願い助けて神様・・!
アキツグせんぱい!!!!
そのときだった。
「俺の後輩に手ェだしてんじゃねーぞ、ゲス野郎!!!」
うす暗い路地裏に、凛とした声が響いた。
・・せん、ぱい・・?
アキツグせんぱいがきてくれた?お願いが届いたの・・?
いや、でもちがう、、せんぱいはあんなに小さくない、、あの人は・・
「神崎せんぱい・・・!!!」
なんで?どうして神崎せんぱいが?
せんぱいの手には固く竹刀が握られていて、いつもの可愛らしい表情は今、恐ろしく強張っている。
「・・だれかと思ったが、可愛いお嬢さんが増えただけかよ・・。びびらせやがって。」
「一緒にひんむいてやろうか?へへhぐぼっ」
神崎せんぱいの突きが、ヤンキーAの喉に突き刺さる。
そのまま崩れ落ちるヤンキーA
「俺は大して強くはないが、竹刀で戦う以上、そんじょそこらのヤンキーなんざに遅れはとらないぞ。喉潰されたい奴はかかってこい。」
「調子こいてんじゃねーzぶふぅ」
「て、てめごぅふ」
せんぱいは瞬く間にヤンキーA,B,Cの喉を潰して倒してしまった。
だけど、そのあとドヤドヤと残りのヤンキーがやってきた!だめ!逃げて神崎せんぱい!
「まったく一人で突っ走るところは変わってないな、お前は。」
「ったく、こちとら練習でクタクタだっつーのに」
「そんなこといって、兄貴は真っ先にダッシュしてきてたじゃーん。かわいいなぁ兄貴は。」
さらに後ろから賑やかな3人組がやってきて、残りのヤンキー達も撃退してしまった。
・・す、すごい。。
「・・・ふん。非常事態だからしかたなかったんだよ。」
アキツグせんぱいと、たしかその妹のハルカちゃんと、副会長だった。
そっか、神崎せんぱいと仲が良いんだっけ?一緒に助けに来てくれたんだ。。
神崎せんぱいはなんか不貞腐れたように言ってたけど嬉しそうだった。
そしてわたしの手をとって起こしてくれた。
「大丈夫か?怖かったな。」
そう言ってわたしのことを抱きしめてくれた。
それは優しくて、暖かくて、なんだかお母さんみたいで、気が付いたらせんぱいの胸で思いっきり泣いてしまった。
・・・あー恥ずかしい。でもすっきりした。
「もう大丈夫そうだな?ほれ、なっちゃんも待ってるぞ、家にかえりな。」
あ、なっちゃんだ。・・そっか、なっちゃんがせんぱいを連れて来てくれたんだ。
ありがとうなっちゃん。それと、、
「あ、ありがとう、、神崎せんぱい」
そうせんぱいに言ったら、ニカッと歯を出してわらった。
その顔があまりにも自然で、男の子っぽくて、不覚にもどきっとしてしまった。
・・本当のことを言うと、せんぱいが路地に現れたときから、わたしの胸はドキドキしっぱなしだった。
本当に今日は最悪の日だ。
ずっと想っていた憧れの人には振られ、
ヤンキーには囲まれ、
恋敵に助けられ、
・・そしてその恋敵に、また恋をしてしまうなんて。
私はもう、この恋を秘めたりはしない。
恋する乙女は止まらないのだ。
竹刀は帰宅途中の剣道部、田尻君からお借りしました。




