変化
短めです。
気がついたら朝だった。
自室の窓から差す朝日が眩しい。
ボケーっとした頭で昨日のことを思い出す。
・・・確か、アキツグ達とカラオケに入ったんだ。それでいくらか歌をうたって、そうこうしているうちに寝てしまったのか。。な?
うーん。自力で帰ってきた覚えがないから誰かが送ってくれたのだろうか。アキツグあたりが送ってくれてそうだな。あとで聞いてみてお礼を言わなくては。
さて、今日から春休みか!これといった予定がないな!
・・・悲しいな。。
まぁ部活はあるから学校には行くんだが。
ひとまず今日は何もないはずだ。
んっ、と布団の上で背伸びをして違和感に気付いた。
服装は昨日のままみたいで制服のシャツだったんだが、どうにも胸に違和感がある。
なんというか、張ってるというか、膨らんでいるように見える。
「・・肋骨折れたりしてないだろうな・・」
なんせ昨日の記憶がないのだ。帰ってくるときにぶつけた可能性だってある。
痛みは特に感じないが、放っておいていい状態ではなさそうだ。
「うー、、なんともないといいんだけど。。」
恐る恐るシャツのボタンを外していく。
すると、そこには
見事な双丘が存在していた。
これはヤバイ。ひどく腫れている。。どんな怪我をしたらこうなるんだ。母さんに言って病院に連れてってもらうか?
あ、いや、今日は朝からパートにでているかも。
ああ、どうしよう。。なんだか不安になってきた。。
自分だけだと状態もよくわからないし、とりあえず誰かに確認してもらおう。。
弟の勇に確認してもらうか。。もう休みに入っているから、家にいるし。
しかし最近、距離をとられているのか、話しかけてもそっけない。あいつも年頃だからなー。
若干顔を合わせづらいが、そんなことは言ってられない。大怪我かもしれないのだ。
よしっ、と決心すると廊下に出て、隣の部屋のドアをノックする。
「ユウ!朝から悪いんだけど、ちょっといいか!?」
しばらくすると中から気だるげな声が帰ってくる
「んだよ、、まだ6時じゃねーか。。もうバスケの練習もないっつーのに」
そう言ってドアから顔を出した。
弟のユウはアニキの俺が言うのもなんだが、結構なイケメンだ。
しかも背が高い。同じ兄弟なのにこの差はなんなのだと理不尽さに憤りまくりである。
こいつはアキツグと同じバスケ部だった。今年中学を卒業したばかり。
4月には高校生だ。残念ながら俺とは学校が違うのだが。
やはり身長を伸ばすにはバスケなのか。。などと思考がそれていたら
「・・・用がないならしめるぞ・・」と言われてしまった。
「いや、ごめん、違うんだ、用事はあって、とりあずちょっと中にいれてくれ」
お、おう。となぜか戸惑うような返事を返された。やっぱり嫌われているんだろうか。。
しかし躊躇している場合ではない。
「どうも怪我したみたいなんだ、自分ではイマイチよくわからないから見てもらえないか?」
ん?と困惑した様子でこちらを伺っている。
俺はおもむろにシャツのボタンを外して、胸元を開いて見せた。
弟が鼻から血を出して倒れた。
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俺の名前は神崎 勇
今年ようやく中学を卒業したばかりだ。
高校の入学式まではまだしばらくあるし、この春休みはダラダラ過ごすと心に決めていた。
なのにいきなりアニキに朝6時に叩き起こされた。
妙に切羽詰まった様子だったのと、声の感じが、なんだかいつもと違っていたので
眠気は残っていたがさっさと起きることにした。
アニキとは昔は仲がよかった。どこにいくにも後をついて回っていたのを覚えている。
アニキもアニキで俺のことを可愛がってくれていた。
だが、ある時を界に、俺は距離をとるようになってしまった。
あいつは自覚があまりないようだが、ものすごい女顔なのだ。
ただ女顔なのではなくて、とびっきりの美少女顏なんだ。。
やや垂れた柔和な目元。長く伸びたまつげ。特に手入れをしているわけではないのに整った眉。
触るとここちよい色素の薄い柔らかな髪。小さくていて艶やかな唇。
特に目元の泣きぼくろが色っぽい。
そして顔だけでなく、体つきも男とは思えないほど華奢だ。
身長の割に手足が長く、顔が小さい。
アイドルやモデルだってこんなに可愛い子はいない!というくらいの美少女、に見えるのだ。
当然男なのだが。。
小さい頃は全然気にしていなかったのだが、思春期に入り、異性を意識し始めたとき
アニキのことも意識するようになってしまった。
ぶっちゃけてしまうと、初恋の相手がアニキだったのだ。
だってしょうがないじゃないか。クラスメイトの女子なんて比べ物にならないくらいアニキは可愛いのだ。
普段はキリッとしていて、硬派なアニキだが、親しい人に向ける柔らかな笑顔を見てしまったら、一撃だ。
ああ、恥ずかしげもなく言おう。俺はアニキに惚れている。
相手が兄弟で、なおかつ同性の男なのはわかっている。
だからこの恋はさっさと諦めて忘れようと思っていた。
だから距離をとったのだ。
高校もわざと遠くにして、なるべくアニキと顔を合わせないようにようとしていた。
なのに、まさか、こんなことが起こるなんて。。
部屋に入ってきたアニキはおもむろにシャツのボタンを外し始めた。
男だとわかっていても、ドキッとしてしまう自分が憎い。
すると胸元を広げて俺のほうに見せてきた。
そこには目を疑うものが存在していたのだ。
柔らかそうでいて形の良い巨大な双丘がそこにはあった。
だれがどう見ても
おっぱいだった。
俺は鼻血を噴出しつつ、後ろに倒れた。
遠くなる意識の中、アニキは姉貴になったのだと、確信した。
そして、アニキと同じ高校に編入することを心に誓った。