身体測定
俺は今、下を向いている。
気持ちとか運勢とかバイオリズムとかの問題ではなくて、物理的に下を向いているのだ。
何故かって?
それは見てはいけないものが辺り一面に広がっているからさ!!!
今朝のホームルームの時間。岡崎先生から連絡があった。
ーーー
「はい。本日はこの後身体測定があります〜。みなさん体操服に着替えて集合してくださいね〜。」
ふーん。身体測定かー。そういえば毎年この時期だったなぁ。今年は身長伸びてるかなぁ。
・・・期待はできないなぁ。。
周りをみると女子はなんとなく憂鬱そうだ。青山も例に漏れず「ぅー。」と唸っていた。
どうした青山、なんか不都合でもあったか。
「なによぉー、コウは余裕そうねぇ。。こんなことなら昨日調子にのってご飯おかわりするんじゃなかったわ。。」
・・ああ、体重が。。
何故かわからないけど、女子って体重をすごく気にするよな。外見上太って見えなければ問題ないと思うけど。それに男子はちょっとくらいふくよかな方が好きだったりするし。
あと筋肉がついたら痩せてても体重は重くなるんだぞ?
「これはプライドの問題なのよっ!」
そういうもんか。。
「あーあ。着替えますか〜。行きましょコウ。」
ん?行くってどこへ?
「先生の話聞いてなかったの?体操服に着替えろって言われたでしょ。更衣室よ。」
あ、そっか、着替えなきゃか。そうだな俺も着替えてくるか。
じゃ。といって手を上げて俺は更衣室に向かう。
「・・・ってコラー!!!」
ぐえっ。首根っこを後ろから掴まれた。何をするんだね。
「あんた、今男子更衣室行こうとしたでしょ・・・。」
「あっ。」
「・・はあ・・・。コウもそろそろ女子生活になれたかと思ったのに・・目を離すとこれだわ。。」
目頭を抑えて頭を振るな。
ついうっかりしてただけだい!
じゃー、女子更衣室行くか。。。。
・・
・・・え?女子更衣室行くの?
女子に混ざって着替えるの?
それなんて変態?
「あんただって女子なんだから問題ないでしょ。ほら、ビビってないでさっさと行くわよ。」
そう言う青山にズルズルと引きずられ、強制連行されたのであった。
ーーー
そして現在に至る。
うう、、どうしよう。まともに頭を上げられない。上げたら見てしまう。。
見たくないわけではないけれど、こう罪悪感がヤバイ!
と、とりあえずさっさと着替えてしまおう!そしてすぐ出よう!
そう思ってブラウスのボタンを外していたら、近くにいた女子に捕まった。
というか掴まれた。
「わ、神崎さん、やっぱりおっきいなぁ・・・それに柔らかい〜〜」
こ、これが噂にいう女子の揉み合いってやつか!?
それにしても俺の乳はちょっと揉まれすぎてる気がする。そうでもない?
「あ、あの木嶋さん、やめてください。。。」
おっぱいを揉んできた女子の方をみる。
メガネのかわいいおとなしめ女子、と見せかけて結構アクティブな木嶋さんだ。
木嶋さんも着替えの途中らしく、下半身はスカートを履いていたが、上半身は下着しかつけていない。
黄色地に細かな意匠が施されたブラジャーと、それを押し上げる二つの丘が目に入ってきてしまった。
・・・あ、あかん・・・!
生まれて初めて見る女子の下着姿に思わず関西弁で慌てふためく!
「えー、キジーばっかりずるい!私にも触らせて〜〜」
「私も私も!」
「ほんとだ柔らかい〜!」
「お腹もすべすべ!いいなぁ」
「神崎さんかわいいなぁ・・」
「このままお持ち帰りしたい。ぎゅ〜〜。」
あ、あの触りすぎ!あと胸とかお尻とか当たるんですけど・・・!
やめて!そろそろ赤い噴水が出ちゃうよ!
「はぁはぁ、コウさん、、柔らかくて張りもあって、、素晴らしいですわ・・。ああ、いい匂いもしますうぅぅ」
あんたチョイチョイいるね!
青山の方に目で助けを求めると「これが女子の洗礼よ」という顔をされた。
羞恥のあまり意識が飛びかけたところでようやくやめてくれた・・
くっそう青山め!助けてくれてもいいだろうに!
「ごめんごめん。なんだか楽しそうだったからつい。・・おわびにおっぱい揉む?」
もまねーよ!!!
・・・チラッ・・・
・・・もまねーよ!!!!
なんとか体操服に着替えて身体測定の列に並ぶ。
去年までは男子だったから女子の列に並ぶのって変な感じ。
測定場所は男女で別だから、見渡す限り女子しかいない。
なんとなく周りを眺めてみる。・・うちの体操服も、さすがにブルマじゃない。
あれは今や伝説の中の話だ。ふつーに短パンである。
しかしこれはこれでなかなか、、
はっ、いかん。思考がおっさんだ。こんなこと考えてたらうちの息子が・・!
いないけど。
雑念を振り払って他のことでも考えよう。。
そうだなアキツグのこととかー・・
・・アイツまた身長伸びてそうだな・・ずるい。
なんとなくイラっとしてたら俺の番が来てた。あ、すいませんすぐ行きます。
体重計に乗るたびに一喜一憂している女子たちが面白い。
俺は体重とか特に気にしてないのでふーん。ってかんじ。
・・・このくらいって重いのかな・・?
べ、別に気にしてないんだからね!!
さて、次は身長か。去年は152cmだったけど、今年はどうかな〜。
・・・うん。変わってないね。そうだよね。もう成長期終わったね・・!
さようなら俺の成長期。
あ、でも女子になったから少し縮んだとか?だったら男に戻ればまだ希望はあるな・・!
早く男に戻れーーー!
祈ってみたけど変化はなかった。
まぁ、今ここで男に戻ったら大変な事態になることだけは確実なんだけど。
身長、体重と測って、次は胸囲か。
お願いします。
・・
ゴクリって喉を鳴らすのやめてもらえません?女医ですよね?
なんだか手つきのやらしい感じの女医さんだった。
『ちがうの、私はそういうんじゃないの・・!新しい扉を開けないで・・!』
とかブツブツ言ってたけど大丈夫かなこの人。。
気持ち悪かったので手早く抜け出たら、「あっ・・」と悲しそうな声がした。
早く次の人測ってあげて。
視力、聴力、測って、、おーわりっと!
特に問題ないな。
さて着替えて教室戻るか。
・・さっと、着替えよう。さっと。
帰りの着替えの時も危うく捕まりかけたがダッシュで着替えて逃げてきた。
あぶないところだったぜ・・。
測定終わった順にみんな帰ってくる。
手には測定結果が書いた紙が握られていた。
なんだか男子が若干そわそわしている。女子の測定結果が気になるんだろう。
教えてもらえるわけがないだろうが。
俺だって教えないよ?
なんとなく教室を見渡すとアキツグがこちらを見ていた。
あ、目を逸らした。
へぇ・・、アキツグくん。気になるのかい?私の成長具合が気になるのかい?
君の測定結果を見せてくれたら見せてあげなくもないよ?
ニマニマしてそう言うと、目を逸らしたまま無言で紙を見せてきた。
・・身長伸びてやがる。こいつどこまででかくなるつもりだ・・!
く、くやしいぃぃ・・・!!
悔しかったので俺のは見せずにプイッと顔を背けて席に着いた。
アキツグが「えっ!?」っていう顔をしていたけど知りません。
いいじゃないか。俺の測定結果なんて面白くないぞ。
隣の席の男子くんもチラチラこっちを見ていたけどスルーした。
男なんてスケベばっかりだな。




