プロローグ
少し不思議な高校生日常物語です。多分コメディーです。
薄暗い倉庫のなかに5人の男女が集まっていた。
皆、頭から黒いローブのようなものを被り、はっきりと顔は見えない。
彼らは幾何学的な模様が書かれた魔法陣のようなもの囲むように立っていた。
さらに魔法陣の中央には誰かが寝かされている。
怪しげな儀式が始まろうとしていた。
「よし、準備はできたな。」
「ほ、本当にやるのか?」
「なんだ、ここにきて怖気付いたのか?」
「ふふ、大丈夫。きっと誰も後悔なんてしないわ」
「そうそう!ぱぱっとやっちゃおう!」
場の雰囲気とは裏腹に、明るい賑やかな声がする。
「では開始する」
一人の男がそう言うと全員が両手を掲げ呪文のようなものを唱えだした。
すると中央の魔法陣が光り出す。
だんだん光は大きく膨れ上がっていき、盛大に弾けた。
ーーーーーーーー!!!
やがて光りが収まり、辺りに静寂と暗闇が戻って来る。
誰もが息を殺して中央の様子を伺っている。
「や、やったか?「「おいやめろ」」」「あ、すまん」
中央に倒れた人物の側にヒョロリとした男が近寄り、懐中電灯と手探りで何かを確認した。
それを見ていた別の男が「ごくり」と喉をならした。
なぜか若干前かがみになっているように見える。
ヒョロリとした男が口を歪めて笑い、言う。
「・・・成功だ・・!」
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俺の名前は神崎 昂
これから俺の身に起こったとある事件と、愛すべき友人達との日常の話をしようとおもう。
ことの発端は高校1年の3月。期末試験を終え、卒業する3年の先輩方を見送り、
さーて明日から春休みだな!と思っていたとき事件は起こった。
その日は休み前の日ということもあり、テンションの上がった友人達と学校の帰りに寄り道をしてカラオケ屋に向かっていた。
「アキツグ、お前も今日は練習は休みなのか?」
俺の隣を歩いていた、身長が高めのがっしりした、ザ・バスケ部といった感じの男に話しかける。
うちの学校のバスケ部は全国常連なので気合のいれ方が半端無いのだが。。
「まぁ、たまにはいいっしょ!コウが誘ってくれるなんて滅多にないしな!」
こいつは毒島 昭次。俺の小学校時代からの友人である。親友といってもいい。
一見軽薄そうに見える外見をしているが、なかなかどうして芯の熱いやつで、困っている人は放っておけないような男なのだ。
ついこの間も他校の女子がガラの悪い連中に声をかけられているところを助けていた。
本当は俺が助けに入って追っ払おうとしたのだが、なぜか俺まで「おっ、かわいこちゃん追加!」「キミも一緒に行かない?」などと手を取って声をかけられてしまった。
俺が「ふざけるな、さっさと怪我をしないうちにいなくなるんだな」と声をあげようと思ったところで
アキツグのやつが問答無用で連中にケリを入れて退散させてしまった。
俺の見せ場なかったな。。。
まぁ俺は別に喧嘩が強いわけではないからな。。いんだけどな。。
ただ、ボソッと連中に向かって「汚い手で触ってんじゃねーよ」って言っていたけど、何のことだろうな。
あいつは別にケリしかしてないから触ってないと思うのだけど。
アキツグは強いんだよなぁ。小学生の頃は同じような体格だったのに、、中学のときに俺は150cmを超えたところで身長が止まってしまったが、あいつはグングン伸びていった。。
あれか、やはりバスケ部っていうのは背が伸びるのか。やっぱり俺もバスケ部にすべきだったか。。
そもそもあいつの両親も背が高いしな、、やはり遺伝か?いやいや、諦めたらそこで試合終了だ。
諦めずに毎日やってるぶら下がり健康法を続けていればきっと、、、
と、話が逸れたな。まぁ要するにアキツグは良い奴ってことだ。
「アキツグはたまにはじゃないでしょーが。しょっちゅう部活サボってるじゃん!」
後ろから顔を出してきたのは青山 美代
黒髪ショートボブの美人さんだ。彼女は高校からの知り合いで、出会いは本当に突然だった。
彼女とは同じクラスになったのだが、教室で初めて顔をあわせるなり
「やばい、、めっちゃ可愛い。。」といって座っている俺をいきなり胸に抱きしめたのだ。
あの時は焦ったなぁ。女の子に免疫のない俺は完全に固まってしまって、鼻から赤い液体と口からはエクトプラズムをだしていた。
様子のおかしい俺を見てすぐに離してくれたので、鼻血を付けずに済んだのは幸いだったが。。
いきなり美少女に抱きしめられたら、誰だって鼻から血を流して、口からはエクトプラズムを出すと思う。
決して俺が女の子に弱いからと言うだけではないはずだ。
なんでも彼女は可愛いものが大好きで、そういったものを見かけると自我を制御できなくなるんだとか。。
男としては可愛いと思われているのはちょっと反応に困るところである。
まぁ、抱きしめられたのは悪い気はそりゃ、しなかったけども。
そして実は彼女、突飛な行動とは裏腹に首席で入試をパスした強者である。人は見かけによらないのだ。
「そうだ。お前はもう少し真面目に部活にでたほうがよい。バスケ部の先輩方が嘆いているのを見たぞ?」
この真面目系メガネ男子は高遠 哲だ。
俺と同じ剣道部の1年だ。
こう、見るからに優等生〜、生徒会長〜といういオーラが出ている。
2年の末にある生徒会選挙では絶対会長に選ばれるだろう。なんせすでに今回の選挙で副会長に選ばれているからな。
アキラとはなんとなく気があうというか、趣味が合う。硬派な雰囲気が俺は結構気に入っているのだ。
そしてこいつは腕が立つ。中学時代の個人戦では全国ベスト4に入ったほどだ。
ちなみに俺も中学時代から剣道をやっていたが、良くて県大会入賞といったところだった。
弱くはないと、おもうが、、あんまり強くないのだ、、何故だろう。しっかり練習していたのだがな。
知り合ったのも高校の部活のときだ。
こいつは俺が男子更衣室に入ると、顔を真っ赤にして
「じょ、じょじょ女子更衣室はあっちだ!」
といって追い出しやがったのだ。誰が女子か。股に大事な宝玉が2つ鎮座しておるわ。
まぁ、こういう反応はもはや中学時代で慣れたがな。
手を取って俺の胸に当てさせて「ほら、胸なんてないだろう?俺は男だ」といったら
何故か余計に顔を赤くして倒れてしまった。
よほど自分の間違いが恥ずかしかったのだろうな。
ちなみに剣道部は本日休みである。
「さ、カラオケ着いたわよ。入りましょ。」
みんなを促して先導してくれるこの人は進藤 香織
うちの高校に通う2年生。俺たちの一個上だ。
彼女が何故俺たちと行動しているかというと、俺の幼馴染なのだ。
昔住んでいたマンションのお隣さんが彼女の家だったのだ。当時俺は3歳くらいだったかな。
お隣の彼女のことを本当のお姉ちゃんだと思っていた。
彼女の方も俺を本当の弟のように可愛がってくれていた。
彼女は中学校に入学と同時に引っ越ししてしまい、それっきりだったのだが
高校で奇跡の再会を果たしたわけだ。
昔からなんとなく綺麗な人だなと思っていたけれど、高校生になった香織姉はとてつもない美人に成長していた。同性異性問わずファンが多いのも頷ける話である。
そしてなんというか、こう、お胸が、すごいのだ。体育祭の時とか応援している香織姉のクラスメイトの男子全員が前屈みになってしまったのも仕方の無い話だろう。あれはもはや凶器と呼べる代物だ。
目に入れてはいけない。
そんな彼女だが再会したときは俺の手を取って喜んでくれた。俺ももちろん嬉しかった。
優しく綺麗な香織姉と再会できたのだ。嬉しく無いわけが無い。
ただ一点、ちょっと気になるところがあったのが、俺の手を握った香織姉の鼻息が妙に荒かったことだ。
具合でも悪かったのだろうか。
「・・合法ショタ・・」とかなんとか呟いていたような気もする。意味は良くわからなかった。
とにかく再会を果たしてからは、お昼ご飯を一緒に食べたり、帰り道一緒になったり、会えなかった時間を埋めるかのように仲良くさせてもらっている。
彼女は今年の選挙で生徒会長となった。生徒会長と副会長が帰り道に揃ってカラオケ屋に寄って大丈夫なのだろうか。
不安そうな目でちらりと香織姉を見ると
「バレなければ問題無い」という顔をしていた。
「マコトも一緒にこれればよかったんだけどな。」
俺たちのグループは大体6人で固まっている。今日は残りの1名が参加できなかったのだ。
その一人が大鳥居 誠だ。
あいつとは中学からの知り合いだ。なんていうか、ヒョロくて、暗くて、猫背で、オタクなやつだ。
そして色んなことを知っている。特に独学で覚えた占いなんかは的中率が100%近いという驚異的な記録を出している。俺も何度か占ってもらったんだが、気持ち悪いくらい当たるんだよな。。
あいつは未来でも見えているんだろうか。。
そんな不思議で面白いやつだ。
ただ、たまーに俺のそばまできて大きく息を吸い込んでいることがあるんだが、あれはやめてほしい。
なんかわからんが魂を吸われている気分になる。
大きく息を吸い込んだ後は、なんだかテカテカしているように見えるから、本当に魂を吸われているんじゃないだろうか。。うぅ、想像したら寒気がしてきたぞ。
「あいつは今日はやることがあるって言ってたからな、しょうがない」
「また春休みにいっしょにこようよ!あ、部屋取れたって!行こう!」
二人に促されるようにして俺たちはカラオケルームへと入っていった。
気が向いたときに続きが書ければと思います。
[追記]ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございます。