伝説、ここに再び
ぐすっ・・・ひっ・・うっく・・・・・
「・・許さない・・・・。私はお前を絶対に許しはしない‼︎許さない‼︎」
まだ人間〈ひと〉と呼ばれし者が誕生する遥か昔の事、天上と呼ばれる場所に神々がいた。神々が居るその世界はまだ一つの世界としても統一されておらず、混沌と化していた。そんな混沌とした世界を統一しようと立ち上がった神がいた。一人は今日までの天上界に語り継がれている“創生の帝 天照大御神”。
そしてもう一人、天照大御神と一緒に立ち上がった者がー
ー序章ー
「それが伝説と呼ばれし神女〈みこ〉、“照葉”〈てりは〉と言うわけなのですね?」
「左様、その者は創生王をお助けして今日までの天上界の平和の礎を創生王と築かれたお方。強い神力をお持ちで、その神力で蔓延る閻妖〈えんよう〉を従える従属神と一緒に滅したと」
ここは人間〈ひと〉の住む領域から隔たれた神々の住む世界、ー天上界ー。
そして先程からしているのは今日まで語り継がれてきたこの世界を創り、統一した伝説の創生王と神女の話である。
この世界には人間〈ひと〉の住む“地上界”と、神々の住む“天上界”と二つの世界があった。そしてここ天上界は中つ国と呼ばれる都所を中心に栄えていた。その中つ国には天上界を統べる天帝の住まう場所“高天原宮”があり、その天帝は代々創生の帝と同じ“天照大御神”の名を継承していた。
そして今、高天原宮では伝説語りを交えた会話がされていた。
「それではその伝説の神女“照葉”の血を継ぐ者の力があれば今危機に瀕そうとしているこの世界は救われるのですね?天帝」
天帝と呼んだその者。名をスサノオと言い、現天帝の弟にあたり主に天帝の補佐を務めている。
「それはそうなのですが・・・・・ただ・・・・・それが・・・・・」
歯切れ悪そうに話しているこの女性。彼女がこの天上界を統べる天帝“天照大御神”である。
この天上界は創生王の時代から今上の天帝の時代まで閻妖と呼ばれし魔が現れる事なく平和が保たれていた。だがここ最近ではこの中つ国とは外れた場所に閻妖が現れ、人々が襲われる事件が相次いでいた。最初のうちは何とか自分達で事態を解決出来ていたが日を追うごとに力の強い閻妖が現れ始め、そしてとうとうこの天上界の都“中つ国”にまで閻妖が及ぶようになってしまった。
このままでは天上界が再び昔のような閻妖達の巣窟になってしまう。この事を憂いた天帝“天照”が弟であり、側近でもあるスサノオと打開策を話していたのだ。
「ただ?どうされたのですか?早い話、その閻妖を滅す程の強い神力を持った“照葉”の血を継ぐ者を探して連れてくればよろしいのでしょう?でしたら早速私が赴きに向かいますよ、姉上」
そう言って踵を返して行こうとするスサノオを天照は
「待ってスサ!それなんだけれど実は、この世界にはその血を継ぐ者がいないのです・・・・・。」
「ー⁉︎どういう事なのですか⁉︎姉上⁈」
「そう、その照葉の血を継ぐ者はこの天上界にはいないのです。こことは別の場所にいるのです。」
そう静かに天照は告げた。
「こことは別の場所?」
それをスサノオもまたオウム返ししていた。
「その者はこの天上界にはおらず、創生王が天上界を統べた後に別の場所へ移り住んだと聞いています。」
「その場所は?」
スサノオは静かに天照の次の言葉を待つ。
「・・・・・そこで貴方にお願いがあるのです。」