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異世界に飛ばされたら神様がオタクだった  作者: 戦国長男
第一章
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2話 白の少女

俺は走っている。

ただただ走っている…いや、正確には逃げている。

何からかって?

決まってんだろ…あの白い悪魔からだよ!!

俺は今、ジ〇ン軍のMSパイロットの気持ちを痛切に実感してるとこだよ!!

ったく、なんで1日に二度も謎生物にたま狙われなけきゃいけないんだ!!


─ゴォウッ!


「ひょあぁぁ!?」


心の中でぼやいていると、俺のほんの右数十cmを轟音と共に岩石が打ち抜く。巨大な殺意を纏った大きな岩石が。

俺はその巨大な殺意を背に感じながら必死に走っているのだ。周りの情景は最早幾重もの緑の線となって背後に抜けていく。そして、超高速で迫り来る木々や蔦、茂みなどの間を俺はこれまでにないほどの集中力を発揮し、ぬうように走り抜ける。真っ直ぐに走っていては良い的なので不規則に左右に動く…が、ヤツはしっかりと俺の背後につき、その巨大な殺意を放ってくる。


もちろん、今の巨大な岩石を俺めがけて打ち出しているのは例の白兎──もとい一角兎だ。


(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬっっ!死ぬってこれはァァァァァ!!)


頭の中で白いマスクを着けた赤軍服の人が「当たらなければどうということは…」とか何とか言った気がするが無視。てか仮に当たればどうということじゃ済まない。死ぬ。確実に。


ついさっき命のやりとりの覚悟を決めたはずだが、もう折れそうだよそんな覚悟。

だって2秒で巨大岩石を生成して超高速で打ち出してくる白い角の生えたウサギに勝てるとでも!?殺せるとでも!?寧ろ殺られる側だわ!!狩られるわ!!削がれるわ!!(混乱)


─ゴォッ!


「ひょえっ!?」


俺はほぼ反射的に体をひねる。すると岩石は右肩を掠め突き抜ける…そして木に直撃。その幹は大きく抉られ岩石も爆散する。そしてその木はメキメキと音を立て、大きく傾き…重々しい音を立てながら倒れる。


(ひいぃぃぃぃぃ!!なんだあの威力!?あの木太かったぞ?直径1mはあったぞ!?それえぐりとるとかどんなだよ!!?魔法か!?これが魔法と言うなものなのかァァァァ!?)


その木の横を俺は全力で駆け抜ける。

直後、それは轟音と共に倒れ、地面を小さく揺らす。



「──っ!?」


少し、後ろに気を配りすぎた為に前方への注意が薄くなっていたらしい。俺は地上に顔を出した木の根に足を取られ、大きくバランスを崩す。


「し、しまっ─!」


かなりスピードが出ていたため、次の一歩が間にあわず俺は思い切り地面に叩きつけられる。しかし、受身をしっかり取れたためさしたるダメージはない。反動を利用して直ぐに立ち上がり、木陰に飛び込む。一角兎が俺の立ち上がりを狙ってくることを警戒したからだ。

しかし、予想した攻撃は来ない。不審に感じた俺は、木陰から少し顔をのぞかせる。

あれだけ執拗に追いかけてきたものがこんなにもアッサリ引き下がるとは思えない

様子を伺うが、そこには倒れた木があるだけでやつの姿はない。

むこうも身を隠した…?不意打ちを狙っているのか…?

そう考えた俺はやつの気配を探ろうと、耳に意識を集中させた。すると小さくだが鳴き声が聞こえた。どうもあの倒れた木の近くから聞こえてくるようである。もう一度顔を覗かせ、あの白い体を探す…。


「──!?」


そこには白い装束を身にまとった少女が居た。倒れた木の幹に腰掛けて、胸に白いウサギ…もとい一角兎を抱いている。一角兎は依然警戒した目でこちらを睨んでいる。

てゆうか、いつも間に?どこから現れたんだあいつ…。さっきまで確かに居なかったぞ…。

硬直している俺に、少女は静かに語りかけてきた。


「やぁ、ボクの使い魔がとんだ無礼を働いてしまったようだね」


凛とした、良く通る声だ…見た目は中学生なのだが、どこか大人びた雰囲気もあるので、違和感が一層引き立っている。

俺は木の陰から出て、改めてその不思議な雰囲気をまとう少女に目を向けた。

なんの混ざりものもない、よく冷えた夜に積もった新雪のような白い髪が腰まで流れ、そして透き通るような白い肌…。身に付けているワンピースのような衣装でさえ驚くほどの白さだ。それとは対照的に鮮やかなルビーの様な光を帯びた赤い眼はしかと俺を見据えている。若干の幼さを残したその顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。


「この子は仲間意識が強くてね、少し怒っちゃったみたいなんだ」


胸に抱く一角兎を優しくなでながら少女が言う。

あれで少しかよ…と思わなくはないが、言わないでおく。


「──だろうな…でもあの場面じゃ仕方ないだろ?死にかけたんだ、大人しく構えていられる程、俺は強くないんでね。」


「いや、すまない。別に君を責めているわけではないんだよ…。たしかにあの状況では仕方ない…ボクが君の立場でも同じことをしただろうね」


「…もしかして見てたのか?」


「途中からね…。この子が教えてくれたんだ。この森に珍しいお客さんが居るとね」


少女はニッコリと笑顔を浮かべ胸の一角兎を撫でた。この子とは、やはり一角兎の事であるようだ。


てゆうかそれよりも…見てたんなら何で助けてくれねぇんだよ!!こちとら死にかけてんだよ!しかも、そのスライム撃破したが故にその使い魔に強襲かけられてまた死にかけるとか!!珍しいお客さんにとんだおもてなしだなオイ…!無礼はどっちだこの野郎!!

不満を全て乗っけた視線を少女に向けると、少女は苦笑して頭をかいた。その仕草ひとつとってもひどく可愛らしい。


「いやぁ…すまないね……つい面白くってさ。この森のモンスターは人に慣れてなくてね、結構攻撃的なんだ。しかもなかなかに強力な個体も多い。高レベルの冒険者でも苦戦することがあるんだよ。だからこんな奥地まで人が来ることは滅多にないんだ…」


「いや、なら余計に助けろよ!!死んだらどうすんだ!?スライムはともかくせめてそいつは止めろよ!」


俺は少女の胸にうずくまっている白いやつを指さして言う。すると、そいつはグルルッとうなってこちらを睨んでくる…。

少女はまあまあと一角兎を宥めながら、苦笑する。


「もちろん死にそうになったら助けるつもりだったさ。でも、この森に唐突に放り出された異界の少年が、初めて見る生物と合間見えた時、どう立ち回るのか…興味をそそられないかい?しかし、まさかあんな豪快な手段で撃退するなんて…いや、見ていたかいがあったというものだよ」


そそられるか!人が死にかけてるの見てそそられるってお前はサディストか!?ドSか!?

そう思うと同時に、やっぱりここは異世界なのか…と憶測が確信に変わった。まぁ、最初にあった一角兎──正確には彼女の使い魔──、いきなり襲ってきたスライム、モンスターやら冒険者といったような単語…これだけでも充分だか、やはりここの住人にまで言われると疑いの余地はない。

俺は大きくため息をつくと少女にもうほとんど疑問でもない疑問をぶつけた。


「──ここってやっぱり異世界なのか…?」


少女は腰掛けていた木から軽く飛び降りて言った。


「うん、まぁそうなるね…でもどうしてここに君が来ちゃったのかは分からない。すまないね」


少女は本当に申し訳なさそうに言う。

俺がここに来た原因が分からないと言うことは、無論帰る方法も分からないのだろう。少し期待したが、そこまで大きな落胆は無い。


一呼吸置くと少女は「それにしても…」と口を開いた。


「君は酷く落ち着いているね…普通こんな状況に一人で突然放り出されたら、パニックになってもおかしくないと思うけど…そこが異世界なんて言われた日には尚更さ」


それは俺も思った…最初こそ流石にパニクッたが、早々に落ち着けた。今に至ってはここが異世界であるという非日常極まりない状況をすんなり受け入れられている。これは、まぁ異常なのだろうが落ち着けているならそれはそれで良い。パニックに陥っているよりは100倍マシだ。それ落ち着けていたからこそスライムの一件やその後の一角兎の件について比較的冷静な対処が出来たのだから。


「まぁ、最初に会った一角兎もそうだし、スライムもどう考えても俺の世界にはいないしな…どうも夢でもなさそうだからある程度の覚悟はしてたさ」


少女は一瞬考えるような仕草を見せたあと直ぐに「あぁ…なるほど」と呟いた。


「この子の名前は『ミミー』だよ。種族名は『ナルウェール・ラビット』。一角兎も良いね、そのまんまだけど…。一応この森ではそこそこの上位種族なんだよ?見たでしょう?この子の魔法」


少女はいかにも可笑しそうにクスクスと笑いながら一角兎…もといミミーを撫でる。

ウサギにミミーと名付けるのも、無難というかそのまんまな気がするが…そこはあえて口にしない。

それよりも、やっぱりさっきの岩石砲は魔法だったのか……いや、まぁそうだろうな。魔法でもないのにウサギが何も無いとこから岩なんて作れないもんな…いくら角が生えてるからと言っても…。ん?つの関係ないか。


「魔法…魔法ねぇ…やっぱり異世界には魔法は付きものだよな…。なぁ、それって俺にも使えたりするのか?」


俺は少し興奮気味に少女に問うと、少女は不思議そうな顔をして言った。


「うん、『岩石弾ロックバレット』と呼ばれる土魔法だよ…。それより、君の世界には魔法はないのかい?それってかなり不便じゃないかい?」


「あぁ…ないな。でもまぁ不便じゃないかな…この世界の文明レベルは知らないけど、たぶんここより科学技術の水準はかなり高いと思う」


魔法のある世界では大抵の場合、科学的な分野がかなり遅れ気味になる…んだと思う。異世界をモチーフにした小説や漫画などでは、あまり科学の発展したものは見ない。ほとんどが中世ヨーロッパぐらいの文明レベルの世界が多い。まぁ、これは俺の──読書の──経験なので確信的なことは言えないが…。

俺は少女を手招きするとバックからスマートフォンを取り出し、軽く操作する。もちろん圏外だが、保存した動画くらいは観れる。

少女は不思議な様子で小走りで近付いてくる…この娘には警戒心がないのか…?あまりに無警戒に近づいてくる少女に少し飽きれるが、まぁ今は置いておこう。

動画を再生し、少女に画面を向ける。

興味深そうに俺の手元を見ていたその大きな目が一層大きく見開かれる。


「──!!こ、これが魔法ではないというのかい…!?こんな小さな箱のいったいどこに人が…これは小人族?それにこれは海かい!?…凄い…初めて見たぁ…綺麗だなぁ……」


うわぁ…と、頬を紅潮させ画面に見入っている。

俺が見せたのは、今流行っている恋愛ドラマのワンシーンだ。夕暮れの海辺を二人の男女が手を繋いで歩いているというテンプレ的シーンだ。

──っていうかそれよりも…近い!顔が近い!うわわ…身体そんなに押し付けるなぁ!!

興奮あまり紅潮した頬と吐息がとてつもなく近くにある…あと10cmも近づけば頬と頬が触れ合いそうなほどに近いーー少女が見やすいように少し屈んだのが裏目に出たか…!

その上これも興奮からか、少女は俺にしがみつく様ににしているため腕にささやかな──それでいてしっかりとした──胸部のフニフニとした感触も二の腕に伝わってくる…正直、健全な男子高校生には刺激が強い…。って、睨んでる!ミミーさんめっちゃこっち睨んでるよ!!


その時パッと少女が離れた。

少し名残惜しいが、ともあれ助かった…。


「凄いね!!こんなのこの世界にはないよ!それが魔法じゃないなんて…!!それが、君の言う『かがく』かい?」


「あ、あぁ…そうだ」


さっきのは全くの無意識なのか…と少し気まずくなって目線を逸らす…。

少女はまだ興奮が冷めないらしく、すごいなぁ…綺麗だなぁ…と目を輝かせている。


──発達しすぎた科学は魔法と見分けがつかない──


誰が言った言葉だったか…なんにせよよく言ったものだと思う。

自分達には当たり前でもそれを知らない者達からすればそれは『魔法』なのだろう。原理もなにも理解して使っているわけでないけど、今自分達が使っている物…例えば携帯やTV等は、ほんの100年前の人達からすれば『発達しすぎた科学』つまり『魔法』だったのだ。だとしたら、『発達しすぎた魔法』はいったいなんなんだろう?『超発達しすぎた科学』?それとも『(発達しすぎた)^2科学』?

そんなことを考えていると、少女が声をかけてきた。


「それはそうと、長い間この森に留まるのは良くないよ、なるべく早く抜けたほうがいいかな」


先ほどとは打って変わって真剣な表情で言った。

その変わりように俺は「あ、あぁ…」と曖昧な返事を返すことしか出来なかった。

まぁ、もとよりそのつもりだったはずなのだが…一角兎やスライムのせいで『森を抜ける』ことよりも『無事に生き延びる』ことにいつの間にか目的が変わっていたことに今更ながら気付いた。


「まぁ、またスライムやらそこの白いのみたいのに襲われたらたまらないからな」


「それもあるけど、言ったでしょ?この森のモンスターたちは人に慣れてないって」


少し皮肉を込めて言ったのだが、ものすごく真剣に返ってきた…。

あれ?こんな雰囲気だったっけか?さっきまでもうちょっとこう…軽い雰囲気だったろう?

どうやらここからは真剣な話らしい…ちょっとふざけててすみません。ちゃんとやりますから…。


「この森のモンスターが人になれてないのは、ただ人がこの森に入り込めないからなんだよ。なぜだかわかる?」


「なぜって…そんなもんここのモンスターが強いからじゃないのか?てか、さっき自分でそういったじゃないか」


「まぁ、それもあるね。けど別に侵入不可なほど強いわけでもないんだ、ソロでは苦戦するだろうけど数人のパーティー…グループで行動すれば死ぬ事はないだろうね。個体にもよるけどさっきのスライムレベルなら一人でも問題ないしね」


どうやら、この世界でもスライムはそれほどお強いわけではないらしい…。あれで弱いとか…この世界怖すぎ…。

それにしても、モンスターがそんなレベルならなんでまた人が入って来れないのか…。それはモンスター以外の驚異がこの森に存在しているということだ…だとするとそれはいったい…。


「モンスターを超える…何か別の脅威の存在…?」


「その通りだ少年」


少女はビシッと人差し指を俺に向ける。キメたつもりなのだろうが、その外見の幼さも相まってあんまりキマッてないがそれは言わない。

というか少年って…どう見ても君の方が年下だろうに…。


刹那、俺は小さな違和感を覚えた。

何かを忘れている…が、何を忘れているのかさえ忘れているというような…。

胸の隅っこに小さくうずくまっていた何かが小さく顔を上げたような気がした。


──そう言えば、こんな小さな少女がなぜ一人でこんなところに?

この娘によればここは高レベルの冒険者でも足を踏み入れるのが難しい所なのだろう…?今までまるでなにも思わなかったが、この少女は一体何者なのだろうか…。

それに、俺は何故今までここまでなんとも思わなかったんだ…?

まるで、この少女がここにいるのが当然のように…。

朝の電車で舟を漕ぐサラリーマン、駅までの道のりですれ違う学生、スーパーで品定めをしている主婦の様な…。

そこにいるのが当たり前、いてもほとんどのものが気にもとめないほど自然に…だ。

そのうえ、俺はこの娘に一切の敵意を持たなかった。

突然現れた、名前も知らない謎の少女に…。普通はもっと警戒する筈なのに…パーソナルエリアに入り込まれてもなんともおもわなかった…。

それに最大にして最初に気づかなければならない違和感…そう『言葉』だ。少女が話している言語は俺の慣れ親しんだもの…つまり日本語なのだ…。

これほどまでの違和感に何故気づかなかったのか…それは恐らく少女の自然さが原因なのだろう…この娘は自然すぎる…ありえないほどに自然体なんだ…。


「……き、きみは…」


何者なんだ?


そう続けようとした時、少女は人差し指を立てその唇に触れた…そしてニヤリと笑った。

イタズラを成功させた子供のような…無邪気な笑み…。

だが、俺はその笑みに何故が恐怖を覚えた…。

この娘がもし、俺を殺すつもりでいたら…?

そして、あの自然体で近づかれたら…?

はたして俺は今、生きていただろうか…


「まずはこの森を抜けよう。ついて来て、最短ルートでいくから。このにいると、遅かれ早かれ今日中には死んじゃうよ?」


そう言うと、少女は俺に背を向け歩き出した。どうやらこの森の外に案内してくれるらしい…。

俺は無言で頷くと少女の後を追った──今、この状況ではそうする以外にない──この世界はいったいなんなのか、どうすれば帰れるのか、そしてこの少女は何者なのか…分からないことだらけだが、今はまず生きなければ、答えはそのうちわかるだろうから。

途中で設定変更やらなんやらやったので少し変なところがあるかもしれません。その時は申告宜しくお願いします。

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