第2話
不定期更新です。思い付いた話を書いてみました。おかしい所があるかも?
ボロボロの人を治療した後、私の死を確かめる為に見つけにくるかもしれないので、偽物の遺体を作っています。もしもの為に作り方を習っておいて良かったですわ。なんでも無駄にはならないものですね、習っている時はこんなの必要性を感じないのに、と思っていましたが思わぬところで役に立ちました。
「君は誰だ?何を作っている?」
ボロボロの人が目を覚ましたようですね。でも、邪魔はしないで欲しいですが。
「私の遺体を作っているところですわ」
内緒で、昔から神殿にいた巫女様に教わりました。攫われたりする事が、昔はよくあった為だそうです。
「え!遺体?」
驚いてますね、普通は簡単に作れるものではないですから、誰も知りませんけど。
「私、殺されましたの。帰る積りがないので、生きている事を気付かれない為の処置ですわ」
怪訝な顔してますね、生きているのに遺体を作っているのですから仕方ないですね。
「は?生きているだろう!死んでないのにか?」
言われましたね、でもやめないですが。本当は繊細な作業でこんなに簡単には出来ないですが、私にはさらっと出来ます。
「嫌ですわ、生きて戻っても面倒臭い事に巻き込まれるくらいなら、死んだ事にした方が自由になれるでしょう?」
私を殺そうとした事で沢山の人が処刑されますわ。事故で亡くなった思われる方が、謂れのない人たちまで巻き込まれる可能性が低いですからこの方が被害が少ないですわ。
「戻ったら殺されるのか?」
確実にそうなるでしょうね。国が混乱する事が目に見えるようです。
「ええ、間違いなく人知れず殺されるでしょうね」
私がそう答えると、悲しそうな顔をして自分と一緒だと。
「それでは、私と一緒だな。戻っても誰にも歓迎されない」
肉親にでも裏切られたのでしょうか?人の事情を聞く気にはなれませんけど。
「それでは貴方も要りますか?遺体。今なら、ただで作ってあげますよ。口止め料ですわ」
お互い生きていられる事が知られると、厄介ですから同じ傷持ちの方が秘密が守れそうです。
「そうだな、帰っても喜ばれないのだからお願いしよう」
彼も、訳ありな人みたいです。お互いの口止め料としては中々な物だと思いますよ。自分の遺体を見るのですから気持ち悪いと思いますが、大きな特徴があったら言ってもらいたいですね。
「分かりました服脱いでくださいね。遺体に着せますから、装飾品は諦めてください」
男ですから潔くお願いします。赤くならなくてもいいから服ください。
「ぜ、全部か?素っ裸になれと?」
遺体に着せるのだから当然でしょう。分かりきった事聞かないでもいいと思いますが。
「当たり前でしょう。生きているのが知られたらいけないのだから」
早く諦めてくれると助かりますが、それ着せたら遺体の完成度が上がります。
「は、恥ずかしいのだが…女性の前で素っ裸は遠慮したい別の服はもらえないか?」
別に気にしませんが?前世あわせて言いたくない年齢になりますから。
「私が、男の人の着る服持っているはずないでしょう。しょうがないからこのマントでも羽織ってて」
マントを渡すと、素直に脱いで私に全部くれました。初めから素直に脱いでくれれば良かったのに、気にしてないのに意識されても。
「ところで、身体に特徴とかあるかしら?見せてもらえると助かるけど。」
聞くと驚いてます。同じにしないとダメだから身体に黒子とか傷とか、大事な物の大きさとかだいたい似せてないとばれるわ。
「は?いや、マントを捲らないでくれ!」
焦らなくてもちょっと見せるだけでいいのよ。気にしなくていいのよ。
「見られたくらいで減るわけないでしょう。完璧に模写しないと、偽者だと思われたら困るのは貴方よ」
逃げなくても…襲うわけではないからあくまで模写のためよ。
「いや、減る!確実に減る!勘弁してくれ!」
逃げた拍子に、マントを踏んで倒れたのでチャンスと近付いて捕まえました。
「男でしょう!しのごの言わない!ばれたら私が困るの!」
えい!とマントを取って遺体を作らせてもらいました。何も泣かなくても、いい歳した男なんだから経験くらいあるでしょう?
「死ぬ訳じゃないから泣くのをやめなさい。ちょっと見られたくらいで女の子みたいだわ」
「死ぬ!確実に私の心が折れる!」
「まあ、それだけ叫べるのなら大丈夫ね」
「流された!軽く流されたよ!初めてだこんなに蔑ろにされたのは」
「前の貴方が、どんなに偉いか知りませんが、身分を失くした今はただの平民よ」
「……」
そう言えば名前も聞いていなかったわね。捨てられて鳴いてる、子犬みたいなボロボロの人は分かっていないようだわ。こんな状況に大丈夫かしら?とこちらが不安になるくらい頼りなさそうです。少なくとも、近くの町にでも連れて行き、常識くらい教えてから放置した方が、罪悪感が湧かないからと思い一緒に連れて行く事にしました。
後で、あの時そのまま放置しておけば良かったと、後悔するとは思いませんでした。