登場人物紹介 5 天雷の秘境編・味方サイド
ニエ・バ・シェロ
本章の舞台となる、魔力を自然発生させる聖域。聖域の特殊な魔力で高度10000M以上に留まる巨大な浮遊島である。ガウスたちはスカイムーンと呼ぶ。広大な万年雲に隔てられ、地上とは互いに観測できない。
地上と似て川も森も土もあり、島の中心には霊山が聳える。ただし年中晴天、空気が薄い、常に風があるなど環境はやや異なる。その影響で独特な植生や生態系となっている。作中では水風船のような実、ファーナスやクェクェといった動物などに触れている。また各所に遺跡や巫女の儀式の台座など古い人工物も点在する。
その正体は空中要塞母艦とでも言える超巨大兵器であり、地下には空飛ぶ巨大な船が多数眠っている。それらは巫女の力で聖域の魔力を操り起動することができる。
最終決戦では「黒鉄の塔」により、巫女の力を持たないガウスが聖域を完全覚醒させた。そして雷を魔力に転換し聖域の魔力を補っていたが、エリーンが魔力の制御を奪還したことで二種の魔力が反発してしまう。その影響で致命的なダメージが発生し、最後は聖域の魔力を失い地上へと墜落した。
なお資源が有限のためいずれ人が住めない土地になる運命だった。
チュピの民
この地の原住民。魔族。やや発音が特殊だが他と同じ言語を使う。特殊な力が発現するという、巫女の血族を長とし暮らしてきた。
ルーツはこの兵器を生み出した謎の一族である。彼らは巫女の血を絶やさないことを何よりも優先し、宗教や兵器を示す遺跡など今日まで続く営みの礎を築いた。しかし真相は続く歴史の中で隠蔽され、エイラの代では地上の存在や兵器の在処すら伝わっていなかった。
作中にてもはやガウスから故郷を奪還することは不可能だと悟り、打つ手もなく支配されていた。しかし故郷を捨ててでも民と自由に生きていきたいという巫女の覚悟を受け、オーガ族の脱出計画に全員で協力することに。最終決戦では犠牲を出しながらも多くが地上に逃れた。
エリーン
巫女の血を引く本家の娘で、垂れ気味の目と下った眉の気弱な少女。母の喪失を経験したショックと、自分は巫女に相応しくないという劣等意識から自己評価が低い。巫女の力で傷を治せることが唯一の価値だと考えており、困っている他人を見過ごせないお人好しな側面もある。
物語は巫女の力を必要とするガウス軍に利用されており、リラたちにより解放されたところで、迷い込んだレンと出会ったところから始まる。
自分のために犠牲が出ることを恐れるあまり奪還作戦にも消極的だったが、そんな心境を置き去りに作戦は進行していく。そして唆されたミィカがレンを刺したことでついに限界を迎え崖から身を投げた。それでも助けられてしまい失意の中、瀕死のレンを守ろうと自ら敵の元に戻る。レンとミィカにより再び解放された後、レンと本音で衝突し自殺願望と決別した。
その後は仲間たち全員で生き残る道を進みたいと決意し、彼らの長、巫女として立ち上がる。そして最終決戦では脱出のため、ガウスの支配から聖域の魔力を開放し戦況を決定づけた。その際に聖域の魔力の深いところに遺されていた母の心に触れ、過去の悲劇とも折り合いをつけることができた。
治癒魔導……巫女の力の使い方の一つで、生命活性作用のある魔力を聖域から抽出し対象を回復させることができる。巫女の魔力が尽きない限り何度でも使える反面、聖域に接触した状態でしか使えず、また最終決戦ではガウスに聖域の魔力が支配されていたため使えなかった。また聖域が失われたあとエリーンはこの能力を失った。
ミィカ
分家の末子で幼い守り人。エリーンとは姉妹のような関係を築いており、強く依存しあっている。激しい人見知りでエリーン以外に心を開かなかった。しっかり者で手当ての心得や島の動植物に詳しい。
エリーンの世話役という名目で、彼女を制御するためにガウス軍に連れていかれた。奪還作戦ではエリーンと共に解放されたが、囮のためあえて彼女とは別行動をとった。
レンからは勇気を買われすぐに認められていた。とはいえ自身は彼を認めておらず、逃走中にネルヴァに唆されて毒ナイフを刺してしまった。しかしその状態でも自分たちを守り戦ったレンに心を動かされ、彼を信用してなかった過ちを認める。本来なら罪悪感で潰れてしまうところだったが、その姿が過去の自分と重なったレンにより救われた。
虫の息のレンを手当てし、共にエリーンを救い出した。そして恩を返すために次は自分がレンの仲間を守ると決意を固め、彼との約束を守り最後までリリカの世話をし続けた。
ベル
ウルーガの息子で、下顎に雷を受け皮膚が赤黒く変色し左奥歯まで露出しているためいつもマスクで隠している。戦闘能力はお世辞にも高くはないが知略に長け、オーガ族やジンたちと重要な協力関係を単独で構築した影の立役者である。
ガウスに支配されたこの地では巫女を守り切れないと判断しており、オーガたちの脱出作戦を察知した彼は巫女も乗せてもらえるよう交渉した。そしてリラに巫女の脱走を手引きさせ、自身は敵の目を引くための行動をしていたところに突如ジンたちが現れる。第七、第九と敵小隊を次々壊滅させた彼らの力は巫女を生かす切り札になると考え、島の案内と脱出船への手引きを条件に協力関係を結んだ。
ジンたちをリーグまで案内し、オーガの本拠地へ連れていくため脱走したミュウ達と合流する。道中氷獄の追撃を受け大怪我を負うが一命を取り留めた。続く最終決戦では全員で生きたいという巫女の願いを受け、マオらと共に驟雨や第一小隊と過酷な戦いに臨む。結果、父を喪いながらも生還した。
ウルーガ
巫女の血筋の分家であり巫女守り人の長。灰色がかった皮膚の筋肉質な男で、ガウスに半面を焼かれ左目と左耳が溶け落ちた恐ろしい風貌をしている。樹木を引っこ抜くほどのパワーに加え、腕を複製し手数を増やす。複製腕は創造魔導の極みたる顕現化でを果たしており切られても消えない。
かつて仕えていた巫女エイラを取り返そうと蜂起を起こしたが制圧され、彼女も喪ってしまったことで強い憎しみを抱いている。息子のことや巫女のこともありガウスの支配に耐えていたが、ジンたちを遺跡を荒らす敵と認識し長年の鬱憤が爆発。激闘の最中、乱入したマーヤからスクーリアを守り重傷を負う。その後レンに送り届けられたエリーンの力で復活し最終決戦に参加する。エイラと比べ気弱なエリーンが気に入らなかったが、最後は自らの狭量さと共に彼女を認め、息子たちに未来を託し戦死した。
スクーリア
分家出身でウルーガの相棒。気性の荒いウルーガの制御役でもある。戦闘力では彼に劣るが理性的であり、ジンたちを誤解していたことをあっさり認めたり故郷を捨てて新たな地へ逃れるという決断にもすぐに理解を示した。
最終決戦では巫女とミュウを無事に船まで送り届け仲間と共に生還した。
リラ
爽やかで色気のある守り人の女性。ベルとは歳が近く親しい仲で、一人で動く彼を心配している。
巫女奪還の隠密作戦の指揮を執っていた。巫女とミィカをレンに託しオーガの里へと向かわせ、自分は囮となってチュピの村へ向かったが捕まってしまう。自身も拷問を受け仲間の首を落とされてもなお巫女の居場所を吐かなかったが、巫女がジンたちを連れて戻ってきたため一命を取り留めた。
最終決戦では巫女とミュウを無事に船まで送り届け仲間と共に生還した。
エイラ
エリーンの母で先代巫女。武力蜂起で大敗した民たちを守るため、ガウス軍に従い巫女の魔力の供給を行っていた。やがて人間族を滅ぼす計画を知り罪悪感に苛まれ、チュピの民の蜂起とその凄惨な結末も重なり精神が不安定になり自殺した。
しかしいつも娘のことを想っており、その愛は聖域に注いだ魔力にも反映されていた。そして娘が聖域の魔力を解放する際に共鳴し最後の一押しとなった。
オーガ族
体が大きく筋力も強い種族。耳は尖っているが目は黒くない。頑丈な建造をする技術に長けており、それに目を付けたガウスに労働力として連れてこられた。かつては親和派イリヤと友好関係にありガウス軍とも戦ったが、レインハルト率いる部隊に破れている。
島の地下にて船の修繕、整備を行っていた。イリヤの意思を貫くため反逆の時を待っていたが、人質として女子供も連れてこられていたため長い間動けなかった。しかしガウス軍が見落とした地下空間と船を発見したことで、人質諸共地上に逃れガウスの陰謀を知らせることができるようになった。
作中では監視する第三小隊の目を欺き巫女さえ到着すれば実行できるところまで計画が進んでいたが、リリカと関わってしまったことで反逆を疑われ粛清されそうになる。最終決戦では死力を尽くして船を守り、犠牲を出しつつも多くの人々が生還した。
グラモール=ダリオ
ひどい不眠症で目の下に消えない隈のある大男。豪快でお人よしな性格で仲間からの信望は厚く、キャング不在時は裏のリーダーとして相談役となる。かつての戦争で活躍した名残でオーガの英傑としてそれなりに有名である。
心象を現実に再現する投影能力と、相手の精神を侵食する幻覚能力を扱う。特に幻覚能力は出力も高く非常に強力だが、コントロールに難があり暴走しやすいため味方が近くにいるときは使えない。さらに睡眠中に必ず悪夢を見てしまい、さらにそれが近くの人に伝播するという重い副作用に苦しんでいる。これが原因で数日に一度、集団の居住地から離れた場所でしか眠らない。
作中では迷い込んだリリカを、リスクを承知で匿った。また彼女の事情を知ると脱出計画まで打ち明けており、その優しさは軽率な甘さだと批判される。実際リリカを探す第三小隊に目をつけられてしまい、隊長ジェインの攻撃を受けた。テレサを救出した後、ジェインを倒したリリカと共にガウスと戦う。圧倒的な力の前に二人とも殺されそうになったが、隙を見て幻影と入れ替わりリリカの命を救った。
その後エリーンを送り届けたレンたちと計画を共有し、最終決戦へと臨む。ワイバーン二頭を全開の幻覚能力で倒し、驟雨から命がけでミュウを守った。また最後には投影能力で船の位置を偽装することでフィアードの砲撃から船を守っており、要所で英傑の名に恥じぬ活躍を見せている。キャングらを失いながらも妻と共に生還した。
テレサ=ダリオ
グラモールの妻。家事は万能で医学の心得もあり非の打ちどころがない。魔力を使うこともでき、大柄な体型もあってそれなりに丈夫だが基本は裏方である。能力で夫の精神汚染に耐性があり、彼女だけが眠る夫の近くで世話を焼くことができる。
作中で迷い込んだリリカを夫と共に匿う。しかし第三小隊の襲撃で倒壊した屋敷の下敷きとなり負傷してしまう。幸いそれほど大きなケガではなかったため、最終決戦では船で負傷者の手当てに奔走しそのまま地上へと生還している。
キャング
オーガ族の表のリーダーを務める男。普段は男衆と共に船の整備に駆り出されており、その間の居住区のことをグラモールに任せている。かつては獣人グリーディアとも共闘した仲だったが、彼が折れてガウスについてからは決別した。
作中では整備が終わり、一度居住区に帰還したところでリリカのことを知る。当初は彼女を招くことがただでさえ困難な脱出計画をさらに危険なものにするとして反対していた。それは仲間の命を最優先に考えるリーダーとしての責任からだったが、本心ではリリカら人間を嫌っているわけではない。第三小隊に襲撃されたところに我が身を顧みず飛び込んだリリカに心動かされ、人間もチュピの民たちもすべてを救う作戦を受け入れた。
最終決戦では翼竜隊や第一小隊、驟雨など巨大な兵力から船を守るための防衛戦線を指揮していた。そしてグラモールに後を託し、自らは獣人部隊の生き残りと共に最後まで残り戦死した。
クロノス組
地上最大の魔道士ギルド、クロノスのメンバーたち。雲の上の戦いを勝利に導くことに大きく貢献した。
ミツキ
金髪イケメン剣士。爽やかな性格で非の打ち所のない青年だが、女性の好みは評判が悪い。
マオを追って雲の上の戦いに身を投じる。ジン、カルキと共に仲間の救出のため進軍し、絶えず戦いを続けていた。剣の腕は地上トップクラスで、思考力も極めて優秀な個である。一方で彼我の戦力差から無茶な戦いと割り切っており、しかしその上で無茶を通すべく抗うことを決める。
最終決戦では進軍する敵を単身足止めした後、驟雨と対峙する。純粋な剣技で戦える自分だけが驟雨の能力を受けながら足止めできると理解し、犠牲になる決断を下し妖刀を抜く。なんとか時間を稼ぎ船の発艦を見届けるが、とどめを刺される直前で師に守られた。
巻雲……業物。薄く軽いため切れ味よく扱いやすいが脆い。鞘には雲の装飾がある。
天津霧切海燕……軽い巻雲の特性を利用した超速の居合い。本来は実戦用ではない。名前の由来はかつて達人が朝霧の中披露したが、あまりの速さに霧も揺れず、ただ燕の鳴くような鋭い音だけが残ったという逸話から。
秤厄双……大業物。敵味方すべてに不運を及ぼし、さらにこれを握った者たちは勝った試しがないという曰く付きの妖刀である。格上との実力差はこの不運で誤魔化せる。最後は驟雨に折られた。
マオ
眠たげな瞳の少女。明るい性格で肝も据わっている。
バリアを張る魔導を使う。能力は特別強力というわけではないが、敵の攻撃を読みタイミングと座標をピンポイントで合わせる戦闘勘と度胸により凄まじい防御力へと昇華している。
前章にてソリューニャの近くにいたため双尾に捕まり空の上の陰謀に巻き込まれる。その後ミツキたちが起こした騒ぎに乗じてリーグより脱出し、追手の攻撃から仲間たちを守り負傷した。最終決戦では船を守るための戦いに参加し、グラモールたちと共に驟雨を足止めする。ミツキが驟雨の相手を代わってからは、ガウスに支配された聖域の魔力を解放しようと戦うエリーンを守る。フィアードらを相手に神がかり的な読みで船を守り抜き、船を失い全滅するという最悪の結末を回避した。
バリア……面積を絞るほど、魔力をつぎ込むほど強度が上がる性質を持つ。強度を維持できる時間は短いが複数枚重ねて展開できる。
ヒバリ
仲間が雲に消えて後、捜索の人手を確保する目的でクロノス本部へと帰還していた。結果として少数精鋭の捜索隊が編成され、窮地の仲間を救い出した。
前章に登場した4羽を含む、8羽の鳥たちと暮らす。生身での飛行をアシストしたり鳥たちに指示を送る魔導を使う。鳥たちの名前はぽっぽ、アイ、グレイ、キャップ、グラス、レモン、フルート、シルク。
クロード=クロス
色付き眼鏡を掛けた天然パーマの男。物質の結合を破壊する侵蝕の魔力であらゆるものを風化させる。魔神を知っていたり目に呪いを受けていたりと謎多きギルドマスター。
ロールマリン=ルノアール
ピンク髪の長身女史。情報を支配するハイパー・アーカイヴスという能力を持つ。
ウェンリル
左頬から首にかけて爪痕のような痣のある男。鎖を武器とする。
ヴェルヴェット
顔に大きな刀傷のある最強の女剣士でミツキの師匠。
ヨルテア
とんがり帽子と黒衣がトレードマークの天才女医。先生と呼ばれている。
ジハイド
激しくが口癖の濃ゆい男。鉄を変形させる能力でアクセサリを鎧状に展開しヒーロー「アイアンマスク」に変身する。
ルーカス
臆病でフードを深く被っているエルフ族の少年。潤沢な魔力を無数の球体にして放つ。




