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魔導士たちの非日常譚  作者: 抹茶ミルク
カキブ編1 街並と竜人
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ギルドとクエスト 4

 

 

 ちょうどリリカが少年トトのストーキングにイラついてきた頃。

 ジンの方でも一騒動があった。



「へい! 一丁上がりっ!」


 ジンは三人と別れてから、順調に核を集めていたところだった。


「お、次はあっちか」


 大した消耗もなく、ジンは何体目かのトゥレントに狙いを付ける。創造した短刀を逆手に持ち、ツルを切り裂きながらトゥレントに接近する。

 そして、難なくトゥレントを倒したとき。


「っお!?」


 突然何かが飛んできた。

 明らかにジンを狙ったものだ。


「鉄球!?」

「へへへ……」

「なかなかいい反射神経してんじゃねぇか」


 鉄球が飛んできた方から現れたのは、三人の男。


「あん? てめぇらが投げたのか?」

「撃ったんだよ。一発で落とすつもりだったんだけどなぁ」

「下手すりゃ死ぬがな! へへへ」


 リーダーと思われる男がジンを威圧するように前に出る。


「なかなか集めてんなぁ? 兄ちゃんよぉ」

「あぁ? これのことか?」

「そうだ」


 残りの二人もジンを囲むように立つ。


「どうでもいいがてめぇら、何のつもりだ」

「威勢がいいなぁ、兄ちゃん」

「状況分かってんのかコラ」

「いきがってられるのもここまでだぜ。兄ちゃん、集めた核全部置いてきな」

「そうすりゃ痛めつけたりしないでやるぜ」

「へへへへ」


 三人の目的は他人が集めた核を横取りすること。

 そのために単独行動をする「獲物」を探していたところに、ジンをみつけたのだった。


「やなこった」

「へっへっへ。なら力ずくで言うこと聞いてもらうぜぇ」

「さっきので大人しく気絶してたほうが幸せだったなぁ」

「言っとくが俺達は対人専用の……」

「ぐちぐちうるせぇ!!」

「がぁ!?」


 だが、彼らは相手の強さを見誤っている。


「誰がてめぇらごときにやるか! ボケェ!」

「ぐぁっ!」

「んげほぉぉっ!」

「ああああ! わ、悪かった!」

「誰が許すかよ! こらぁ!」

「ぎゃぁぁぁあ!!」


 その凶暴さも。

 ジンは三人を存分に痛めつけたあと、彼らが奪った核を逆に奪っていった。


 ◇◇◇




「おいおい、どんどんみんなから遠ざかっているぞ!」

「うっさい! アンタだけそっちに行けばいいじゃない!」

「んな! だから僕は君を心配して付いてきてるんだ!」

「余計なお世話!」


 どうやら自分は面倒な子供に目を付けられたらしい。

 そう気がついたのはトトのストーキングが続いて五分経ったときだった。そろそろ我慢の限界、イライラは募るばかりで今にも噴火しそうだ。

 もうはっきり突き放そうと、リリカは足を止めてトトと向き合った。


「もう、いい加減にして!」

「な、なにをだよ……」

「ついてこないでよ!」

「この僕が心配し……」

「だから! それがいらないって! 一人でも大丈夫なんでしょ!? だったら一人で戻ればいいじゃない!」

「え、え……」


 目に見えてトトが凹んでいく。

 しかし、頭の沸騰したリリカには彼を気遣う余裕などなく。


「じゃあね!」

「あ、ま……」


 吐き捨てるように言い残して、リリカは走りはじめた。

 後ろから追いかける足音が聞こえたが、やがて聞こえなくなった。





「お、全員そろったか。三人くらいは迷子になるんじゃないかと思ってたんだけど」

「全員じゃねーか!」

「舐めんな!」


 リリカが集合場所に着いたとき、他の三人は既に集まっていた。


「なあなあ、ソリューニャはいくつだ?」

「アタシは19本。あんまり遭わなかったよ」

「へっへーん! オレは27本だ!」

「へぇ。リリカは?」


 ソリューニャが夜営の用意をしながら、少し元気のないリリカに話を振る。


「ん。15、かな」


 年齢の話ではない。


「え。どうしたんだ?」

「あたしもあんまり遭わなかっただけ」


 トトを振り切って頭が冷えたリリカは、今度は少し心配していた。

 トゥレント一体に苦戦し、上位種には立ち向かおうとすらしなかった少年だ。人気のない場所に彼一人を置いてきたのはミスだったかもしれない。

 その場の感情で動くのはリリカの短所だったが、一旦冷静になれば己の行為を反省できる素直さはリリカの長所である。


(ま、きっと無事だよね。次会ったら一言謝ろう)


 そして、その切り替えの早さもリリカの大きな長所だった。


「ほら、ジン。みんな言ったんだからそろそろお前も教えろよ」

「ふっふっふっ……」


 勿体ぶるジン。

 彼はソリューニャが合流する前からレンにもリリカにも自分の成果を発表していなかった。


「聞いて驚くなよー?」

「いいから早く教えろって!」

「じゃじゃーーん!」

「す、すごーい!」

「え、えええ!?」

「ありえねーー!」


 あるわあるわで約50本。

 得意げに胸を張るジン。

 目を丸くする他三人。

 この謎にいち早くたどり着いたのはレンだった。


「分かった! てめ、人から盗んだな!?」

「ち、ちげーし!」

「嘘だ! オレの倍とかあり得ねぇ!」


 自信満々に言い切るレン。

 その根底にある考えは子供の意地のようなものであるが、今回ばかりは的を射ていた。

 レンの強気な追及に、だんだん反論が弱々しくなっていくジン。

 そしてとうとう、


「いや、俺の集めた分を奪おうとしてきたから、返り討ちにしてやっただけだって……」


 自白。

 それに対してレンは、


「あー。ならしょうがねぇか」


 何が「しょうがない」のかは謎だが、とりあえず肯定的だった。



 本日の成果。

 並みのトゥレントの核

 ……105本(一本950V)

 上位種のトゥレントの核

 ……3本(一本9000V)

 総計126750V


 確かに、通常と比べて破格の効率である。

 尚、換金は後日行われることとなるようだ。


「あ、本当に十倍だったんだ」

「上位種は存在そのものが貴重だからね」

「大して強くもなかったけどなー」

「普通は十人がかりだよ」


 焚き火を囲む四人の影が長く伸びている。

 満点の星をちりばめた夜が更けていった。


 ◇◇◇





 翌日のギルドの一画にて。

 トゥレント狩りから帰ってきた四人は冷たい飲み物を飲みながら休んでいた。


「よお、ソニアに嬢ちゃん」

「ん、ああ。ガル」

「あっ、おかしらだー。久しぶりー」


 そこに、ガルがソニアに話しかけてきた。


「トゥレント討伐行ってたんだか?」

「そうだけど、それが何か?」

「いや、あの依頼を提出したのは俺なんだよ」

「は?」


 先日リリカの道案内をしたときのことだ。

 基本的に臆病なトゥレントが人里に、それも二体も同時にいるのはおかしい。

 そう思い、国に調査を推奨したのだそうだ。


「で、案の定大量発生でな。群れで生活する魔物でもないし、それが大量に発生してしかも群れてるなんて異常だろ?」

「確かに、ね……」

「なんかあるぜ。これは」

「ああ、気をつけとくよ……」


 それだけ言って、去っていくガル。


「へぇー。あの後そんなことしてたんだねー」

「ガルはあれでなかなかの実力者だよ。頭も回る。古株でしかもしょっちゅう顔出してるみたいだし、こういうのは得意なのさ」

「ふーん。あんな髭もじゃなおっさんがねぇー」


 ギルド内最強と噂されるソリューニャですら「珍しいこともあるものだ」としか思わなかったのに、ガルはそれを「異常事態だ」と判断したのだ。そしてそれはおおむね正しかった。


 この異常事態が何なのか、それは分からないが、警戒するに越したことはない。

 一見関係ないように見えてもそれが自分のピンチに繋がるかもしれない。正体を隠すため、彼女は一層の注意を払うのだった。

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