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ー7

それからまた幾つもの月日が流れ

二人の間には三人の子が産まれた。

銀色の髪に母と同じ紅い目を持った長男、漆黒の髪に青い目をした次男、そして一番下は小さな可愛らしい女の子だった。

しかしこれを城の者は良くは思わなかった。

何しろ王家の血を引きいずれは国の頂点に立つ者が魔女と噂をされる女が産んだ子だ、なんていう事を国民が認めるはずが無い。


それを知った祖父は王の座を実弟に譲り自分は妻である

ラグジュリアと子ども達を連れ誰にも気づかれぬようまだ日も明けぬうちに静かに城を後にした。


静かな森の中で

豪華な食事も無ければ使用人もいない自給自足の生活。

けして裕福ではなかったがそれでも愛する家族と一緒にいられる、祖父はとても幸せだった。

家にはいつも笑顔が溢れ、争いもなく穏やかに時が過ぎていった。


そんな生活が4年ほど続き、長男の8回目の誕生日を豪勢ではなかったが家族皆で楽しく過ごしていたある日末の子が病に倒れた。

しかし都から遠く離れた森の中では満足な治療も受けさせることが出来ず5歳の誕生日を来週に控えた寒い冬の日、半年以上の闘病生活の末彼女はその短過ぎる人生に幕を閉じた。


ラグジュリアは自分を責めた。こんな生活を送る事になったのも治療を受けさせてやる事ができなかったのも全て自分のせいだと。

自分がいなければ今頃は皆城で病気もせず穏やかな暮らしができている、たとえ病気をしたとしても城には優れた医者も沢山いる……そう彼女は死なずにすんだのだと。

自分が彼女を殺したのだと……。


そんな日が続き、ラグジュリアは食事を取ることもままならなくなっていた。顔は痩せこけ艶やかだった銀色の髪は抜け落ち、あの誰をも魅了した紅い瞳は黒く濁っていった。

それでも祖父の妻への愛が冷める事はなく、優しく彼女を支え続けた。


しかしまだ肌寒さの残るある月の綺麗な晩、何かの物音に祖父が目を覚ますと隣で眠っていたはずの愛する妻はもうそこにはいなかった。

「さようなら、大好きな貴方。」という悲しい置き手紙と共に彼女がいつも身につけていた瑠璃色の宝石のついたネックレスを残して……。


ーGreensleeves was all my joy

Greensleeves was my delight

Greensleeves was my heart of gold

And who but my lady greensleeves…ー



ガタンっという何かの物音に僕は我に帰る。

音は扉の向こうから聞こえた。


そんな事があるはずがない。

だってここは僕と祖父だけが知っている秘密の場所。


鼓動が早くなる。

ドクドクという耳障りな音が僕の鼓膜を揺らす。


もしも母様や姉様なら…

まだ何とか言って父様には黙っていていただけるかもしれない。でもこれが兄様や父様だったら……。

想像するだけで身体の中心から血の気が引いていくのがわかる。

何処かに隠れようにもすぐに見つかってしまうだろう。何しろ出口はあの扉一つだけだ。

覚悟を決めてその石の扉に手をかける。


先程から手の震えが止まらない。

汗ばんだ手で扉のとってを掴み恐る恐るこちら側引いていく……。



「あなたは…誰……?」


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