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祖父はとても強力な魔力を持った魔法使いだったと母から聞いた事がある。
本当に魔法なんて物がこの世に存在するかなんて誰も信じてはいなかった。
だが実際祖父が生きていた頃は強力な武器や兵力こそなかったが一度もこの国が負けた事はなかった。
というより争いが起こる前にいつの間にかそれが跡形も無く消えている…と言った方が妥当かもしれない。
僕が覚えている祖父は本当に優しくて病気がちで部屋に篭りっきりだった僕に暇をみつけてはいつも色んな話を聞かせてくれた。羽の生えた馬の話や手のひらほどの小さな小人が住む森の話、大昔に海に沈んだ大帝国の話……。
谷の向こうのそのまた向こうの大きな海を渡ったその先の国の事まで祖父はよく知っていた。
そして異世界、魔法がまだ存在している世界の事も……。
そんな祖父が亡くなる前に僕に残してくれた物がある。それは瑠璃色の宝石がはめ込まれたくすんだ色の鍵と……地下の楽園。
母と別れたあと、一人また長い廊下を渡る。
一人になるとどうしても思い出してしまう僕を見ることはないあの冷たく鋭い父の瞳。
兄様に薬を渡しに行こうとも思ったが母のいない時に一人きりで会う勇気はない。
かといって部屋に戻る気にもなれず夕食まで時間をつぶす事にした。