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Seven Deadly Sinsーその瞳に咲くのは罪の華ー  作者: たまごがゆ
第一章〜焦げたベーコンはパパの味〜
1/11

ー1



とても悲しげな音色が聴こえてくる。


とても懐かしい…


でも何故か思い出せない。

全てがわからない。


冷たい何かが頬を伝う。

水…?

あれ…私泣いてるの…?


それは澄んだ水のように優しく温かく

私の心に沁み渡る




その時、ピタッと音が鳴り止んだ。


コツコツ…と硬い床の上を

こちらに歩いてくる音がする。


そしてギィィーという音と共に

ゆっくりと目の前の大きな扉が開かれるー……





「夢…か…。」

何時もより1時間も早く目覚めてしまった。

まだぼーっとする頭を支えながらゆっくり起き上がる。


久しぶり朝食でも作ろうかと

歩くたびギシギシと音の鳴る賑やかな階段を降りてキッチンに向かう。


「えっと…卵と…ベーコンあったっけ」

散らかった古い木の机の上からまだ食べられそうなものを探す。

そろそろ少し片付けたほうがいいかもしれない。


フライパンにベーコンを乗せその上に卵を割り入れる。

火が弱くなっている暖炉に薪を足し

棚の上からパンとチーズを取り出し

食べやすくナイフでカットする。

お弁当用と朝食用だ。


そうこうしているうちに

ジュージューと音を立て始めたフライパンの上の卵とベーコンが

匂いと共に空腹を誘う。


"グゥゥゥ…"

唐突に開けっ放しだったキッチンのドアの方から音がする。


ーーん…?この音は…私じゃない……とすれば…


「おはよう、キアラ」

そう呼ばれた少女は眠い目を擦りながら私の横の空いていた椅子に腰を下ろす。

生まれつきの黒い天然パーマの髪に褐色の肌

薄いピンク色の寝巻きがどう見ても不釣合いだ。


「おはよーう…今日は朝が早いねぇトオル。朝ご飯なんか作っちゃって、なんかいい夢でも見たの?」

大きな黒い目をぱちりとさせて不思議そうに私を覗き込んでくる。

「その逆。なんか変な夢見ちゃってさぁ…」

「変な夢?」

「そ、なんかよくわからないんだけどね。」

「ふぅん…ていうかトオル…なんか、焦げ臭い。」

「ああああ!しまった!せっかくの卵とベーコンがあ…」

急いで火を止め皿に盛ってはみるもののとてもじゃないが食べられたものじゃない。

がっくりと肩を落とす私に後ろから楽しそうに声をかけてくるキアラ。

「元に戻してあげよっか?」

「………。」

黙っていると彼女は落ち込む私の横で腕のブレスレットに手をかざし目をつむり呪文を唱え始めた。

そしてその瞬間何かが弾けるよなバチッという音と共ににブレスレットに輝く緑色の石が光ったと思うと、

目の前にはあのベーコンと卵が焦げた跡もなく美味しそうな匂いを漂わせて皿に盛ってあった。


「…まぁ、トオルもいつかは使えるようになるって」

そう言いながら少し上がった息を整えるかのように深く深呼吸をして

さぁて、私も学校行く支度しなきゃと

さっさとキッチンを出て行った。


静かになったキッチン。

"グゥゥゥ"

先程よりも近くで腹の虫が鳴いている。

ーー今度は私のか…。

自分という人物にほとほと呆れる。


深いため息をつきながら

先程出来上がったばかりのベーコンとパサパサに乾燥したパンを口に運ぶ。

……ちゃんとしたベーコンだ。美味しい。

「はぁぁ…。」

本日既に二度目のため息。


「そんなにため息ばっかりついてたら幸せ逃げるぞー!」

朝から全くテンションの上がらない私に奥からキアラのやけに元気な声がかかる。

「わかってるよー…。ていうかなんであんたそんなに朝から元気なわけ?」

「トオルみたいに低血糖じゃないんですー。あ、トオル時間大丈夫なの?今日も朝から補習じゃなかったっけ?ゆっくりしてるけど…」

「………!あ!そうだ、忘れてた!のんびり朝ご飯なんか食べてる場合じゃない!」

「私の箒貸そうか?トオル今ボート乗れないでしょ?」

「いい!あってもどうせ上手く飛べないし。歩いていく!」

「歩いてってトオル、そんなことしてたら補習どころか

授業にも間に合わないよ!?」

「いーの!近道知ってるから!」

バタバタと食器を片付け、急いで学校に行く支度。

顔を洗って長い黒髪をとかし、黒いローブを羽織る。最後に顔を隠すように深くフードをかぶったら怖い魔女の出来上がり。


「キアラ、家出るときちゃんと戸締りよろしくね!行ってきまーす!」

「行ってらっしゃーい!また学校でね!」

返事もそこそこに急いで家を出た私は

学校とは逆の方角、つまり河下の方へ走り出した。



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