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赤い星  作者: lassh-leyline
9/9

エンデイング 下

蛇足 下

生きのこった人たちの話

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 この星を覆った白き光は、この星を襲う全ての物を絡め取り、かき集めて新たな(衛星)を生み出した。

 それはさながら小さな太陽、吹き飛んでしまった本来の太陽の代わりに優しく大地を照らします。以後、陽月とよばれることになった


 人々が奇跡に気づいたのは空を覆う白き覆いが取り払われた時でした。

 即座に星見の学者や主だった者たちが現状の確認に奔走し、出された結論は人知を越えたものだった。

 

 現在この星は何処の星系にも属さず、高速で外宇宙を移動中である。

 何らかの力で守られたこの星の重力圏内では常に安定した状態に保たれていた。

 もう本来の所から数光年離れていて、この場所ではいまだ花ビラの残ったあの星が小さく瞬いていた。

 

 彼の星の影響が消え、電波が通る様になり遠距離の通話も出来るようになったため情報交換が飛躍的に効率化した。

 現状がいつまで続くか分からないが、教皇庁から神の手による奇跡であると公式発表されたため、一時は熱狂的に受け入れられたが、日が経つにつれ徐々に平静を取り戻した。

 最も世界の危機は消え去り気候も安定化しつつある今、いかに生きていくかに悩む者たちが出てきた。


 そしてそれらの問題は意外なところから解決することになる。




 

 始まりの日より一月後、全世界に向け神からのメッセージが届けられた。当の神達によって。

 事前に教皇庁より通達があったとはいえ、世界中の空に現れた十柱の神の姿を見て全ての人間がひれ伏したと言われる。

 

 その時のお言葉に従い、この星に新たに『旅人と船』の神殿が建てられることになりました。

 新たに作られた神殿は、地下深くに隠されていた『箱船』を地上に設置してそのまま使用することになった。

 その内部も神族のおわす座として改装し、この惑星(遊星)の気象や航行、行政の管制制御のための施設とした。

 また敷地内に神の戦船の常設の駐機場を兼ねた宇宙港の管制所も兼ねる。次代の異星との交易のための港は新たに適した場所に開くことになっている。

 

 乗員として集められていた人々は、二,三次選考の殆どが職員として招聘され(以前拒否した人たちも殆どそれに応じた)、一次に集められたのは健康な上級学校(高校)の生徒と言う括りであったため一端親元に返されることになり、孤児や希望者はこの地に新たに作られる学舎に収容されることになった。


 



「報告は以上です。引き続き次のステップに移行します。」

「「ご苦労様」」「養成施設の方も順調のようねえ」「早く免状を用意しないといけませんねえ。」

「ありがとうございます、師匠。・・・では失礼します。」

 家政、執事部門の長となった、元メイド長が場を辞する。


「なあ、メル(No.Ⅰ)エル(NO.Ⅱ)。」

「「どうなされましたか?マスターアレフ。」」

 不満顔の主神にシンメトリーで首をかしげながら答えるメイド姿の従属神、二柱。

「まあ『メイド道』のなんたるかは君たちの方が分かりやすく説明できるから良いんだけど、これでも知識と技術の神である私の所に誰も教えを請いに来ないのはどうしてなんだろう?」

 しばらく無言で見つめ合った後・・・

「マスターアレフ様の」「説明は神族ぐらいの」「理解力と知能がないと」「理解も実践も出来ません。」「「人には高度すぎてついて行けないのです。マスターには人にものを教える能力がまだ確立されていません。」」「諦めたら?」「あなたには向いてません。」

「・・・言葉が痛い・・・」


 神の領域の知識はともかく遺失文明の帝国の知識や現代の技術などを持つ従属神達に触発され、技術者や知識の探求者が教えを請うために押しかけるようになった。

 そこで得意分野を持つ神族がそのサポートをするようになり、やがて専用の学舎と研究の場が作られた。


 後に他の星との国交が始まると『星神の学舎』として全世界に認知され、ここの免許皆伝の証を持つ者は『星神の神子』として誰からも一目置かれる存在となった。

 さまよえる星の学舎と高度の技術力に裏付けされた、誰もがあこがれるステータスである。


 


「おはようございます。あ・な・た。うふっ。」

「・・・おはようルベル。」

 ああ・・・いつの間に寝たのだろう。そのまま抱きしめ口づけを。

「ん~ん!ぷはぁー!・・・そろそろ、んぁ、お起きにならないと、あふっ、あ、ああ、あぐっ・・・・」

「はぁ、はあ、い、言ってるそばから馬乗りで搾り取られるのか・・・・」

 神様の加護なのかお互い絶倫になり子作りによる疲労はそれほど残らない。

「・・・は!いかん!遅れる。」

「あふぅん・・・ん?きゃ!」

 余韻に浸るまもなく、妻を抱えたまま沐浴所に駆け込む。


 互いに身支度をして何とか時間までに朝議の間に控える。

『船の巫女様と風の法王様、ご出座にございます。』

 早一月、いまだに慣れないが今の肩書きは、巫女と法王。

 聞こえは良いが神に統治をを全部丸投げされただけの雑用係だ。


 スライドドアを潜り抜け最上段にしつらえられた玉座に着く。ルベルは隣の席に。

 議長がおもむろに立ち上がると口を開く。

「会議を始める前に。先ほど医療部の方から報告がありました。ルベル様ご懐妊おめでとうございます。」

 とたんに会場を埋める拍手と歓声。一応女神に課せられた試練は報告してある。

「そして、爆発しろ!ベ〇野郎!」

 元政治局長の音頭のもと、吹き荒れるブーイングの嵐。最も抱き合う俺たちの耳に入っては居なかったが。



 二月前、星見の間で正気に戻った俺は傍らでうずくまるルベルを抱え上げた。

 下腹部の痛みを訴える彼女と下半身をぬらす物を見て即座に原因を推測するが、彼女は泣き崩れる。最初のチャンスを無駄にしたと。

 まだ混乱していたから気が付かなかったが、いまだ命の灯火が消えそうになっていると思っていたのだ。

 実際は二人ともリセットされたらしく肉体は赤ん坊並にリフレッシュしていたらしい。

 それから数日後、落ち着いたところで改めて愛を語り、確かめ合いそして・・・



 

 最初の数年は未曾有のベビーラッシュにより大騒ぎになったが、やがて静まっていった。

 まだこの星には開発できる場所も多く残っており、新たな科学技術の再生発展で人口爆発でもなんとか乗り切ることが出来た。

 



 法王と巫女の仕事自体は複数のスタッフに割り振ることにより実質的に解放され、出産、子育てに没頭することが出来るようになった。

 肉体的にはルベルが子供を作れなくなるまで老化もせずやがてゆっくりと老いていった。

 

 そして・・・


 ねえあなたもうじき百五十年ですって。

 あれからいろんな事がありましたねえ。いつもあなたが私を庇ってそれを私が過保護だって怒って・・・

 子供達にも厳しく鍛えては嫌われたくないって落ち込んで。

 本当の苦しいお役目でしたわねえ。でもこれほど幸せなお仕事もなかったのよ。

 大好きな人といつも一緒に居られてその方の子を身ごもり、その子や孫達に囲まれて平凡だけど楽しい一時を過ごせるのですから。

 あなたはどうでした?

 私のようなめんどくさい女に一生を捧げることになってしまったけど、幸せでした?

 ・・・きっと幸せだったって言ってくださいますよねえ。わたしの旦那様だもの。

 ・・・ああ、だんだんあなたの体が冷たくなっていきます。

 わたしももうじきですわ。すぐに追いつきますからね。

 もう抱きしめては貰えないけどこのまま・・・・・・









これにて赤い星は終了です。


わたしにとって初めての完結作品となります。


この話はわたしの別シリーズ”神のいる世界”の一編として組み込みました。

小ネタぐらいはどこかで書くかもしれませんがこの話はここで幕を閉じさせてもらいます。


閲覧ありがとうございます。




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