5
最後の時
最後の点検が終了したとの報告があった。
これで”箱船”(第二次移民計画)の準備は完了した。
この星に不時着した移民船を強化改造して新たに移住させるための船。
自力で重力の軛から離脱する能力は無いが星見の最後の観測により、この星系は超超新星爆発の衝撃波により崩壊するため、それに耐えきれば外宇宙まで勝手に運ばれる算段である。
全ての乗員は異常なく欠員は多いが予想道理で問題は無い。
待避壕に見せかけた入り口と地下深くの本体までの通路の閉鎖も終わった。
残った俺の仕事はこの世界の終わりを見届けることだけだ。
地下司令部も解散となり、最後に部屋を出ると多くのスタッフや職員達がうちのメイド達に先導されて教皇殿の方へ案内されていった。
最後の晩餐をやっている。もう三日目だそうだ。
ルベルももう息をするのも辛い状態であり、生きているのが不思議なほど衰弱している。
「若、星見の間に医療器具を準備させました。そこなら最後までご一緒できます。」
執事長が声を掛けてくれた。
珍しく疲労の色が見えるが以前よりあかるい声が印象的だった。服から所々覗くのはキスマークか?
「おや、気づかれましたか。いやお恥ずかしい。この歳でここまでもてるとは思ってませんでしたわ。流石に全員いっぺんというわけにはいきませんで、今は休憩中でしてな。もうしばらくしたら次のメンバーが待ってましてな。かっかっかっ・・・」
「同意の上なら多くは語りませんが、中途半端なことはしないでくださいね。まったくうらやましい限りですね。」
胸元からゆっくりと伸びた手が頬に当たる。ほっぺたを抓っているつもりなのですね。
「俺にはキミだけで十分だけどな。」
伸びてきた手を握りほおにキスする。
先日まで食事の度に口移しをしていたがすでに口を塞ぐこと自体危険で、昨夜は口づけ一つで呼吸停止を起こし大騒ぎにしてしまった。
星見の間に着くと数名の看護師と医師が待っており最先端とは言い切れないがしっかりとした機器が用意してあり即座に治療が始まる。
しかし、多臓器不全(老衰)に陥った少女になすすべも無く生命維持のための酸素吸入器と栄養補給の点滴のみを残し残りは撤去された。
いくつかの料理を持って来たメイド達と共に一礼して全員この場を辞する。
夜空の殆ど埋め尽くすオーロラと赤い帯そしてもうじき到達するであろう花ビラの残滓。
「・・・ 」
テラスに敷き詰めたクッションの上で横になって抱きしめて空を見上げているとかすかな声が聞こえた。
「ああ、もうすぐ全てが終わるんだな。」
頭を撫でながら軽く口づけを交わす。
「ありがとう。そして済まなかった。俺のいらないこだわりのためにキミを傷つけてしまった。」
「・・・ ・・・ ・・・ 。 ・・・でも変わらなかった。(ごふっ)はぁ、はぁ・・・」
「そうか。」抱く力を強めつつ背中を擦る。あふれ出る涙をこの胸で受け止めつつ宥める。
「もし奇跡が起きるのなら、そんなことよりもっとすごいことをかなえてもらいましょう。」
その時空が一際明るく光りました。
太陽が衝撃波を浴びて崩壊、飛び散る寸前の状態になったのだ。
その衝撃波が迫るのを見て俺たちは知らずに自らの神に祈りを支えていた。
「「我らが世界を支えし女神様、我と我が身を贄として御願い奉る。我が愛するこの者(方)を救い給え。」」
ヤカン杯の評価はここまでです。
エンディングは対象外としますので平成二十五年の正月に投稿します。




