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ルベル
「おはようございます、おじさま。」
「・・・おはよう、ルベル。」
まだ日が昇る前、朝のお勤めの準備、その前に軽い運動と沐浴を済ませるのが私の朝の日課だ。
朝起こしに来るのは新米侍女のルベル。
今月から私の乳母の孫、親友の娘が私付き侍女に抜擢され、任に着いている。
予め言っておくがあくまでも自身の努力と持ち合わせている力量による抜擢であり、逆に厳しくさせた審査を軽く突破した結果でもある。
本来ならいまだ学業に従事しているべき年齢だがすでに規定の試験を終了している、そこらにもどれだけ優秀かは見て取れる。
なのでラーナ教総本山、教皇の住居に勤める侍女というのも選択肢の一つではあるが、尚のこと以前からの使用人の子弟には過剰なまでの能力を要求される。ひいき目を防ぐためとはいえそれはとても狭い門である。
実力的には、この世界で最も優秀な1000人を選抜したらここの使用人の中から数十人入るだろう。
だから公私混同など・・・
「ところで、侍女であるあなたがなぜ半裸で私のベットに潜り込んでいるのですか?」
小悪魔的なほほえみを浮かべつつ胸の上にしなだれかかり耳元に口を近づけて囁く。
「何度も言っているでしょう?おじさまの女にして欲しいの・・・何なら性欲処理のおもちゃでも良い・・・おじさまのそばに居られるなら。だから好きにして。ふふ。まずはこの純潔の証を”ごすっ!”あいた!」
「やれやれ。誰がそんな品の無い話を吹き込んだのやら・・・」
痛む拳を撫でながら、
「そんなことしたらあいつに何をされるか、それにあなたは私にとっても可愛い娘なんですからね。」
「ぶぅぅぅ・・・...。」「何か言いましたか?(怒)」
「ひぃ!申し訳ありませんでした。(ごそごそ)では、お召し物を・・・”げし!”きゃん!」
「ベットの中で脱がしてどうするつもりですか!」
蹴り出されて尻餅をついた少女を見下ろし、ため息混じりに苦言を呈す。
「毎朝毎朝、同じ事を繰り返して、いい加減諦めてください。ほら大事なところをむき出しにしてないで、さっさと仕事に戻り・・・」
「枢機卿そろそろお時間です。本日もよろしくお願いします。本日の予定ですが、定時の朝会までは日課の鍛錬でよろしいですか?」
「はあ・・・」
話の途中ですっくと立ち上がると一瞬で身繕いも済まし、どこからか取り出した予定帳を閉じたまま内容の確認をしてくる。
すでに有能な副官モードに入っている。
本来ならこのやりとりは自分の補佐役かお付きの司祭の役目だが効率重視の執事長が変に気を回したためこの子の仕事となってしまった。
彼女曰く本来なら副官としていつも一緒に居たかったのだが、それにはながく下積みが必要なことと、他に何人もの上司が付くため仕事以外一緒に居られなくなるが、お付きの侍女なら執事長と侍女頭の許しさえあれば、おはようからおやすみまでどころかおやすみ中ですら一緒に居られるからだそうだ。
なんだこのストーカーは。
さらに私が一言言えば誰の許しもいらなくなるのでこの職に就いたのだそうだ。自身の発言力はいらない、私が聞いてくれればそれで良いのだからと。確かに必要なことは私の権限で指示すれば良いのだから。
まあ娘同然の少女であるから悪い虫も付かないしまあ良いかと思っていたときもありました。
使えない人間なら実子であっても放逐するべき立場であるが、できすぎる人間では手放すことも出来なくなる。
いまではこの屋敷をほぼ掌握している。中にはもう女主人として認めている者も居るとか。
もうすぐ四十路のじじいに十三の旗日前の娘が熱を上げるのも異常だが、それに答えるのもどうかと思う。
もしあと五つ上なら・・・いや何を考えているのか、彼女は私の大切な人と無二の親友の娘で・・・
「おじさま何かお悩みでも?ここは趣向を変えて私と(この体を使って)大人の運動を”ぎりぎり!”あたたた、うめぼしはいやー!」
いつの間にか腰にしなだれかかってきて、私の下半身に手を伸ばしてきた。
まったく隙も見せられない。
全寮制の女学校時代の三年間で何があったのか、飛び級で卒業して帰ってきたらこうなっていた。
見た目は幼いながらもこの都のミスコンを総なめした女性の娘、普通なら可憐で弱々しく幼い容姿に皆腫れ物に触るように扱うが、騙されてはいけない。
父親はこの国で武術大会を総なめしたバリバリの武闘派、現神聖騎士団団長である。見た目ごついし他人の目のあるところでは威厳のある態度を取っているが、私や死んだ妻の前ではくよくよと悩み事を言ってはよくはたかれていた。
そういえば結構気は強かったな、あの人は。
そういう素材で出来た娘は推して知るべし。
赤ん坊の頃から狼犬や牛、馬、など大型の家畜を相手にじゃれ合いその体には傷一つ残らないという頑丈な体と美しい瑠璃色の肌、もっと小さな頃はよく一緒に入浴したり一緒に寝てやったりしていた。
本当にもう少し大きくなれば守備範囲に・・・いやいや彼女は俺たちの娘だ。手を出すなんてあり得ない。
雑念を払いのけるため体術の修行に打ち込む。無心に打ち込むことで雑念を純粋な思考に欲望を体の活力に。
「ルベル、そろそろそれをくれないか。」
明らかに私に見とれて惚けていた侍女にタオルを要求する。まあこの年の割には引き締まっているのは自慢だが、見とれるほどでは無いと思う。キミの親父はもっとすごいぞ?
「申し訳ありません、どうぞ。」
本来なら彼女の無刀空手術の教授を受けたいとこだが、女性それもいまだ成長期まっただ中の娘に教わるにはプライドが邪魔をする。これで自分より強そうなんだからなおさらだ。
沐浴もさっさと済ませる。さっさと汗を流し清水で締める。聖水で清める。
沐浴所は神官以外立ち入り禁止なので安心できる。あんなのをそばに置いて裸になるなど恐いから。
昔は大人しく・・・は無かったか。そういえば何かと触ってきたりすり寄ってきたり抱きついてきたり・・・
もしかして昔から狙われていたのでしょうか?




