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ベツレヘムの星

作者: 浅川太郎

季節がら、ということで投稿いたします。

クリスマスも近づいた。


クリスマスを控えた頃に起きたことを書く。


何年か前の夏、ある騒音問題が起きた。


近くの家に、小学生の娘が二人いて、早朝の6時から窓を開けたままピアノの練習を始め、また夜は夜で10時過ぎまで練習することもあったらしい。


その苦情が、いろいろな背景もあり、僕に伝えられ、伝えに行くハメになった。

気は重かったが、かの家に出向き、奥さんに、そのような心当たりがありますかと丁寧に問い、あると答えたので、苦情も聞きましたので、ご注意願います、とだけ伝えて帰った。


それでも聞き届けられなかった様子で、苦情申し立て側から、まだ早朝、深夜に聞こえると言われた。


乗りかかった船とも言うが、またまた仕方なく出向き、苦情側がA4一枚に書いた現状と対策みたいなメモを渡して、ひとつ穏便に願いますと頭を下げて帰った。


結局、どのような決着になったかと言うと、ピアノの部屋に防音工事を施したようだ。


一件落着と思ってたら、ある噂を聞いた。


その奥さんが親しい奥さん達に、「あそこの浅川さん、私の家に来て、ピアノの練習はするなと言った。私の娘は、もう練習できないのかと泣いた。発表会のスケジュールもこなせなくて困ってる」と、言いふらしているらしい。

ひどい脚色である。当時、モンスター・ペアレントていう言葉が流行ったが、こんなのを言うんだなあと得心した。

そしてそのまま放っておいた。苦情申し立て側も、特に何も言って来なかったし、朝、晩の挨拶の折、どうですか?と聞くと治まってると、言う。


だが、当の奥さんと挨拶を交わすことはなくなり、すれ違う時は、睨み付けられたりもした。


やがて冬になり、奥さんの家の玄関に、大人の腰より、やや高いくらいのクリスマスツリーが置かれるようになった。


見ると、てっぺんの星がない。


あの星はベツレヘムの星と言って、キリストの生誕を、羊飼い達が『ベツレヘムの星』で知るという、クリスマスツリーでも重要なパーツのはずである。


和風(中国流?)に言うと画竜点睛か‥‥


思えば、ピーターソンやモンクが練習のため近所迷惑であったとか考えられない。


ピアノの練習はもうできなくなるのかと泣いた娘たちは、画竜点睛を欠くツリーに何を思うのか‥‥



今年も、その家の、外から窺える物置に、星のないツリーが待機してる。

無教養だけなら、僕も無教養に近い。だが、無教養なモンスター・ペアレントには困ってしまいます。サンタは多分、あの家には‥‥

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