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騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!  作者: 楠ノ木雫


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◇エピローグ


 次の日。ご尊顔を間近で見ての目覚めとなった。……朝から心臓に悪い。



「おはよう、テレシア」


「……おはようございます」



 昨日の婚約宣言パーティーを思い出し、まだ夢の中ではないだろうかと考えてしまった。会場を去った後、もうすでに用意していたらしい婚約届にサインをし、そのまますぐ提出するからテレシアはこのまま休んでいいと女子寮に戻された。


 ……まではよかった。


 その後、気が付けば部屋に団長様がいて……



『ようやく私のものになってくれたな……可愛いテレシア、これからは絶対に私のそばを離れないでくれ』



 と、甘い言葉を囁かれてしまった。そして、今。ベッドの周りに散乱する、私の部屋着と、近衛騎士団長の正装。今はまだ使節団の方達が来訪なさっているというのに……止めるはずが、全く余裕がなくなりこうなってしまった。


 あぁ……申し訳ない。誰に対しての謝罪かは分からないけれど、謝らずにはいられない。この整ったお顔を前に待ったをかけることが出来なかった。



「朝一番でテレシアに名前を呼んでほしいんだが、いいか?」


「……」



 私の気も知らないで、と言いたいところだけれど……頬を撫でて微笑まないでほしい。


 今までは、鍛錬に遅れるからと置いていき、更には仕事だからと置いてかれての二択だった。だから、こうして明るい時間に一緒にベッドにいるとなると……恥ずかしさでどうにかなりそうだ。目のやり場に困る……



「……リアム」


「うん、ありがとうテレシア」



 ……頭がおかしくなりそう。使節団の方々は早朝お帰りとなるのに……早朝……あっ!?


 一気に青ざめ、勢いよく上半身を起こした。やばいやばい遅れるっ! 最後のお帰りの時は並んでなきゃいけないのにっ!! 今何時!?


 時計を見て、血の気が引いた。待って、お帰りになるのって……というところで、腕が引っ張られベッドに倒された。そして、上に団長様が上に乗ってくる。いやいやいや、今それどころじゃないって!!



「テレシアは今日はお休みだ。だから遅刻ではないよ」


「……へ?」



 い、今、何と……?


 私が、今日、休み……?



「だから、この前のように慌ててここを出る必要はないよ」


「……」



 この前、とは……いつぞやの、事件の事では……? ちょうどここで起きた、事件。朝、隣に誰かさんが寝ていて、私はその方を放置して鍛錬場に向かった、あの時の事。


 ……その話は、出さないでほしい。



「私はこの後出るが、テレシアは今日はゆっくり休んでくれ」


「……」


「返事は?」


「……はい」


「うん、いい子だ」



 そう言いつつ微笑みながら頭を撫でてくる。本当に、休んでいいのだろうか……?


 でも相手はこの騎士団を管理する方。となれば、デガルド団長にも伝えてくれるという事で、いい……?


 ……何となく、申し訳ないな。でも、この方を前に断るなんてことが出来るわけがない。それに、昨日の今日だから私が出ていったところでいろいろと混乱を招く可能性がある。第三王女と色々あったし……となれば、私は外に出ないほうがいいという事だろうか?


 もしそうなら、私はここで待機しておいた方がいい。もうお帰りになるだけなのだから、問題なく終わってほしい。


 けれど……どうして陛下のおそばにいるべき人がこんなところでベッドにいるのだろうか。いきなり抱きしめてきたけれど、それよりも時間を見てくださいよ。



「……あの、団長様」


「団長様? 昨日、ここで何と言った?」


「っ……」



 昨日……と言われ余計な記憶が鮮明に映し出され、顔がどんどん熱を持ち始めてしまった。団長様ではなく、リアムと呼べと、だいぶ言われてしまったけれど……だいぶ、うん、だいぶ……



「……リアム、その、時間が……」


「あともう少しある。テレシアとは、例え10秒しかなくても一緒にいたいんだ。だからまだここにいさせてくれ」



 それを言われ、数日前の事を思い出した。10分しかなかったけれど来てしまったこの方の事を。けれど、まさか10秒ですか。たったそれだけしかない時間でも……と言われると、何も言えなくなる。……嬉しいから。


 嬉しくて、顔が火照りそうだから。でも、嬉しいけれど、言ってしまったらもっとこの方が大変になってしまうから言えない。


 はぁ、近衛騎士団長がこんな事でいいのだろうか……


 昨日だってそう。昨日、ガストン先輩と一緒にいた時にリアムに笑顔で迎えに来られてしまったから、きっと先輩、いや、先輩達はだいぶ戸惑っているに違いない。……次出勤した時、絶対質問攻めになる。どうしよう……


 けれど……



「ん?」



 文句を言いたいところではあるけれど、結局言えなくなる事は分かっている。言わせてもらえない、ではなく私が言えない。


 それに昨日、誠意を見せると言ってあそこまでしてしまった。近衛騎士団長で侯爵家当主でもある方があそこまでしてしまうとは……と心配になったけれど、嬉しいのもある。



「テレシア」


「……はい?」


「――愛してる」



 その一言で、その微笑で、どうしようもなく嬉しくなってしまう。恥ずかしいから視線を逸らすけれど、それでもこの嬉しさは隠せない。それに、リアムは例え私が隠したところで全てお見通しだろう。



「本当なら、テレシアからの愛の言葉を聞きたいところではあるけれど……それは、仕事が終わってからのお楽しみにしようか」


「……えっ」


「今日、終わったら迎えに来るよ」



 そう言いつつ、キスをしてきた。待って、迎えにって、じゃあ行き先は……?


 けれど、私に質問させないつもりなのかキスがどんどん甘くなってくる。昨日の事まで思い出してしまい、混乱してしまいそうになる。


 結局、私はリアムに振り回されてばかりだ。


 けれど、彼はいつでも、私に向かって愛の言葉をいくつも囁く。


 騎士でもあり、令嬢である私に、幸せをくれる。


 そんな彼なら振り回されてもいいや、とちょっとだけ思ってしまっている事に気が付き内心驚いている。


 リアムという男性の色に、自分がどんどん染められてしまっているような気もするのは勘違いだろうか?



 END.


ここまでお読みいただきありがとうございました。

エピローグを追加しましたが、いかがだったでしょうか。

これまでお気に入りに評価とありがとうございました。とても励みになりました。

別作品もいくつもあるのでよろしかったら覗いてみてくださると幸いです。

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