表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!  作者: 楠ノ木雫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/39

◇第三十六話 侯爵家当主と男爵令嬢 ①


 隣国使節団が来訪され、国際会議や親睦会などが行われ残すところ最終日のナイトパーティーのみとなった。


 昨夜は恐ろしい事になり、そのせいで朝から第二王子に会わないようにという危機感と、昨日の嬉しさが顔に出ないようにという緊張感、そして第三王女殿下との国際結婚の件は一体どうするのだろうという不安でいっぱいだった。


 もし、私と団長様が一緒にいたことが周りに知られたら……と思うと恐ろしくて仕方ない。誰の助けもなければ男爵令嬢の私は潰されてしまう。


 とはいえ、私はただの一端の騎士団員で男爵令嬢だ。国同士の話は誰かに聞かなければ知ることが出来ない。私がここで悩んだところで何も出来ないに決まってる。



「テレシア、聞いたか?」


「何です?」



 そして夜のナイトパーティー。今日は先輩と二人、会場の端での警備となった。いつもガストン先輩と一緒になるが、まぁもうペアのようなものか。


 先輩はいつも噂をいち早く察知して私に話してくれるから、見た目と違ってお友達が多いのだろうな。筋肉ムキムキで普段無精ひげを生やしているのに。



「第二王子、ついさっき帰ったんだとよ。自国からのお呼び出しだってさ」


「……マジですか」



 第二王子が、もう帰ったですって?


 団長様が隣国の国王陛下に文書を送ったと言っていたけれど、その件でお呼び出しがかかったという事だろうか。お帰りが翌朝なのだから第三王女と共に帰ってきてから、ではなくいち早く帰国させた。


 という事は、それほど重要な要件でお呼び出しをかけたという事になる。


 昨日は商人を捕えている事も会話の中に出ていた。きっとあれは、私達が極秘任務で捕えた外国人商人の事なのかもしれない。団長様は、その外国人商人の裏に誰かがいるせいで第一騎士団が中々とらえる事が出来なかったと言っていた。


 極秘任務で潜入した屋敷に第二王子もいらっしゃった事と、こちらへの来訪が遅れた事、そして最後は団長様の、この国での〝旅行を満喫〟していた、という言葉。


 それを考えると、その裏にいらっしゃる方って……そういう事だろうか。


 いや、一端の騎士団員がそこまで首を突っ込んでいい案件ではない。これは国同士の問題だ。それにこれは憶測でしかないのだから。


 第二王子と手を組んでいた外国人商人が友好関係を築いていた我が国の令息に売ってはいけないものを売り、それのせいで事件を起こした。そんな事があったとしても、私はただの派遣された女性騎士団員。なら団長様の言いつけ通りその第二王子を視界に入れないように努めなくては。


 ……あとが怖いから。



「一日遅れての到着で一日早いお帰りだなんてさぁ~、やっぱり王族って大変だよな~」


「……」



 この返答には困るな。この遅刻と急なお呼び出しの理由が何となく分かってしまった私は、一体どう返したらいいのだろうか。極秘任務の事も関わってくるだろうし。



「王族って言えば、第三王女殿下も大変だよな。だって近衛騎士団長との婚約だぜ? 絶対に……」


「テレシア」



 そんな時だった。ガストン先輩が言い切る前に、左側からそんな私を呼ぶ声がした。それと同時に、私の左肩に何かが置かれる。ガストン先輩は右側に並んで立っていたから、二人声を合わせて「え?」と左側を振り向くと、血の気が引いた。


 何故、こんなところに満面の笑みを向ける近衛騎士団長様がいらっしゃるのだろうか。しかも、ガストン先輩の目の前で、しっかりと「テレシア」と呼んだ。いつもと全く違う表情に、きっと先輩は目の前で一体何が起こっているのか混乱している事だろう。


 かくいう私も、今のこの状況をどう乗り切ったほうが一番いいのか考えている最中ではあるけれど、その糸口が全く見つからず焦ってしまう。



「テレシア、迎えに来たよ。行こうか」



 そう言いつつ私の手を取った団長様。私はこの手を離した方がいいのだろうか。いや、昨日のお仕置きを思い出せば、離してしまったらあとが怖い事は分かりきっている。



「あ、の、私、警備が……」


「君に任せよう。いいか?」


「しょっ承知しましたっ!!」



 隣で青ざめるガストン先輩は、さも恐ろしいものでも見たかのように返事をした。いや、返事ではなく助けてほしい。……とは思ったけれどこの団長様に勝てる事なんて奇跡でも起きなければ無理だ。


 じゃあ行こうか、と手をしっかりと握られ引かれてしまった。


 ちらり、とガストン先輩を見れば口をポカーンとして私達を見つめていた。あぁ、これは帰った後に質問攻めだな。帰った時にはもう第三騎士団員達のほぼ全員の耳に入っているんだろうなぁ……


 戻るまでに、言い訳か何かを考えておいた方が身のためだな……はは。


 歩き始める団長様の手を引っ張り足を止める。振り返る団長様は、とてもにこやかだ。私が何度も見たことのある表情。けれど、きっとガストン先輩達は見たことがないかもしれない。



「あ、あの、一体どこに……」


「……想う女性には誠意を見せてこそ信頼してもらえる男性になれると私は思うんだ。なら、テレシアにはしっかりと誠意を見せよう」



 こんなところで誠意を見せるだなんて一体何をするつもりなのか、逆に恐ろしくなってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ