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騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!  作者: 楠ノ木雫


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◇第三十一話  恋のゆくえ


「ねぇねぇ、恋バナしましょ! あなたの話を聞かせて!」



 どうして、私は今……私は東屋で、第三王女殿下と席に座り恋バナを始めようとしているのだろうか……


 始まりは、朝。先輩達と持ち場を交代し遅めの朝ご飯を摂り持ち場に戻る時だった。向かう途中でデカルド団長に声をかけられ、第三王女殿下がお呼びだと東屋に行くよう指示された。


 一体何事かと身構えていたが……何故かニコニコした殿下が迎えてくださり、目の前の席に座るよう促された。流石に王族の座る席に同席するのは、警備中の騎士としてアウトだろうと伝えたが……



「私が言ってるんだからいいの! もし誰かに言われたら私の名前を出してくれて構わないわ。ほら、いっぱいケーキを用意したの。食べてみて!」



 隣国で流行っているらしいケーキを、用意されてしまった。


 私は一体、どうしたら……? あの、デカルド団長、さっき「殿下の指示に従うように」と言っていたけれど、もう一言欲しかったです。


 だいぶ上機嫌でケーキを食べ出す殿下に、ただ愛想笑いしか出来なかった。どうぞお召し上がりください、とそちらのメイドにお茶まで出される始末。


 ……どうしたものか。



「それでそれで、あなたは好きな人はいるの?」



 ……危うく、紅茶を吹き出すところだった。危ない危ない。


 それを言われてしまうと、昨日のことを思い出してしまう。愛想笑いは得意だけれど、目の前にいらっしゃるのは団長様のご婚約者様。そして、この国と友好関係を築いている隣国の王女様でもある。


 何かしでかしたら、大問題にまで発展してしまう。


 それだけは、絶対にダメだ。



「……その、そういった事には経験がないので……」


「あら、ご令嬢でもあるのよね? 婚約者とかはいないの?」


「……いらっしゃったのですが、つい先日諸事情で破談となりました……」



 この話は出したくはなかったけれど、流石に王族の前で嘘はいけない。はぁ、誰か助けてくれ……



「そうなの……あなたも大変なのね。でも、あなたが所属している騎士団には男性が何人もいるでしょう? そういった方はいないの?」


「……その、私は王城騎士団に入団してまだ3年ですので、周りの方は先輩ばかりですから……騎士として尊敬している、と言いますか……」


「あら、そういった目で見たことがない、という事? そう、でも一度考えてみたらどう? 尊敬から発展する恋なんてものもあるだろうし……」



 ……ないな。申し訳ないけれど、それは絶対にない。


 面倒くさがりで仕事を押し付ける人はいるわ、賭け事に巻き込まれるわ、冗談で済まされない冗談を言われるわ、酒を飲まされるわで全く、そう、全く思った事はない。


 けれど、相手は王族である前に17歳の女の子。流石に夢は壊したくない。



「どう、でしょうね……ですが、今は剣に向き合う事を決めています。尊敬する方々や、目指す目標もありますから。いずれは令嬢として政略結婚をするでしょうが、それまでは、騎士として精進していこうと思っております」


「そう……強いのね。騎士としての志がある事は、とてもかっこいい事だと思うわ。でも、あなたは女性でしょ? 22歳となると、私の国では少し遅いかしら? この国ではどうなのか分からないけれど、結婚したら剣を手放す事になるだろうし……」



 あぁ、この方も同じだ。


 女性騎士をあんなに褒めてくださったのに。それでも、結局は女性なのだからと当然のように話してくる。


 今までだったら、ただ聞き流すだけで済んだ。それなのに……恐らく、褒められ慣れていなかったから、なんだと思う。


 ……何期待してるんだろう、私は。そう自分に呆れつつも愛想笑いをしていたその時だった。



「あっ……リアム様っ!」



 殿下が、ふと右側を向いた時。私もつられて視線を向け、彼の姿を見てしまった。そして、目が合う。


 その瞬間、無意識に視線を外し前を向けば、殿下がもう立ちあがり団長様の方へ駆け寄っていったところが見えた。


 無意識に、私も席を立ち、数歩下がった。ここにいては駄目だ。そう思うと、ここから走り去ってしまいそうになる。


 けれど、その時だった。


 心地良く流れる風を、勢いよく裂く音が、した。


 そして、金属同士がぶつかるような、そんな音が響く。


 その先を向くと、殿下と、剣を抜いていた団長様、そして下に落ちる長い棒のようなもの。


 団長様の視線の先は、この後宮を囲む林。それに目を向け、そして私は走り出した。


 暗殺だ。それも、第三王女を狙った、暗殺。団長様が、第三王女に飛んできた矢を剣で防いだところだ。


 一体何故? いや、王族は常に狙われるもの。王太子しかいらっしゃらないこの国と違って、隣国は王子に王女が何人もいらっしゃるから、自然と王位継承権争いも起きる。


 なら、この王城に潜入した暗殺者がいる? この王城の、後宮に入り込めるだなんて、余程の手練れだ。


 陽の光で、何かが光る。その場所に、きっと殿下に向けて矢を放った犯人がいる。林の中に入ると、私に気が付いたのかもうその場所にはおらず、けれど足音が聞こえてくる。……いたっ。


 デガルド団長から、唯一褒められたもの。それは、足の速さ。障害物がなければぶっちぎりで先輩達に勝てるほど。昔から足は速かったけれど、王城騎士団に入団してより一層速くなった。


 木々の間から差す光で中は明るい。見つけると、木に登り木伝いに飛び移りすぐに距離を縮めた。ここは木が多いから下を走るには障害物が多い。そして、犯人の前に飛び降り剣を抜く。相手は後ずさると脇に差していたらしい剣を抜いた。


 黒いマスクに小さなフードを被る犯人は、まるで暗殺ギルドのような黒い格好。背丈的に男性だ。けれど、先ほど追っている時に聞いた足音から、焦っているような気もする。追いつくとは思っていなかったのか。


 そして、切りかかってくる。それを剣で受けるけれど、相手はだいぶ力が強い。だから受け流せばいいだけなんだけど……何となく、違和感がある。それはきっと、この人の太刀筋がとても綺麗だからだと思う。


 洗礼された、とても綺麗な太刀筋。まるで、長年騎士として経験を積んだ方のように見える。ガストン先輩のような力の強い男性と違って、まるで副団長と剣を交えているような気分だ。長年王城騎士団として勤め上げた方のよう。


 けれど、おかしい。この剣捌き、何となく知っているような……どこかで、受けたことがあるような……ほら、ここで……――右。



「っ!?」



 やっぱりそうだ。どこだ、どこでこれを覚えたんだっけ……


 記憶を引っ張り出し探しつつも受け続け……ようやく背中を取った。そして、手刀を入れ気絶させると懐から金属の手錠を取り出し嵌めた。


 どこ、だったかなぁ……どこかで、これを受けたはず……王城騎士の時? 地方騎士の時? それとも……と思い出しつつも寝そべる彼の顔を覗いた。マスクを外したが、見覚えのない顔だ。けれど……これは、日焼け?


 我が国の首都は日差しが強い。けれどこの日焼け……この日焼けの痕は何かに似てる……というところだった。複数の足音がし、それがすぐに第一騎士団のものだと確認が取れた。



「何だ、お前でも捕らえられる雑魚だったか」


「……」


「じゃ、こちらで引き取る。お前はそのまま持ち場に戻れ」



 聞き捨てならない一言はあったけれど……あっ、と思い出した。


 それは、私が地方騎士団に入団した頃。確か、休暇をいただき実家に顔を見せに帰った時、ちょうどお父様の友人である男性が遊びに来ていた。剣を扱う方で、一度手合わせをしていただいたことがあった。それだ。その男性と似てたんだ。


 その男性は、この国ではなく隣国の方だったらしい。……ちょうど今、ご来訪なさっている国の。


 それを思えば、先ほど捕まえた方の顔の日焼け。第三王女と第二王子の護衛として共に来訪なさった騎士団の方が武装していらっしゃる鎧。あのヘルメットを思い出せ。日焼けしていない部分に、ちょうどよく嵌るのでは……?


 ……さて、これはご報告した方がいいのだろうか。


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