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騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!  作者: 楠ノ木雫


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◇第三話 白い騎士団服 ③


 近衛騎士団員だったらどうしよう、と思っていたのに……あろうことか近衛騎士団長。まさか、朝あのベッドにいたのはその方だったとは……私は悪夢でも見ているのだろうか。いや、悪夢で済むんだったらどれだけよかっただろうか。


 近衛騎士団長、リアム・ロドリエス侯爵はとても腕の立つこの国一番の騎士だ。けれど、冷血無慈悲で視線だけで人を殺せると言われている。私は騎士団に入団した時に近くで見たけれど、無表情な人だなというだけだった。


 後から先輩達に彼の噂を教えてもらいそんな人だったんだと近づかないようにしていた。まぁ、そもそも顔を合わせる事なんてあまりない。


 けれど……さっきの方が、その近衛騎士団長、ですって? 顔は見ていないから、騎士団長に団服を貸してもらった別人……いや、さすがにそれはないか。


 曖昧な昨日の記憶。途切れ途切れでしか覚えてない。先輩達と飲んで、べろんべろんに酔っぱらって、自分一人で女子寮が見える辺りまで帰ってきて……



『君、そんな所で寝たら風邪を引くぞ』



 って、言われたような……そこからは曖昧で……



『ど~せ私は女っ気のない男女(おとこおんな)ですよ~……』


『……』


『何よ、アンタもそう思ってるんでしょ!』



 ……やばいな。私、何て事言ってんだ。しかも……誰かの上に、乗っていたような光景も、ある……


 土下座、するべきか。さすがに騎士団をクビだけは……勘弁してほしい。



「どうした、テレシア。そんなげっそりして」


「……二日酔いちょっと辛いです」


「あ~分かる分かる。無理すんなよ」


「ありがとうございます、先輩」



 うん。色々と悪夢がきてもう私どうしたらいいか分からない。助けて、誰か。


 と、誰かに助けを求めていた時だった。



「ではよろしく頼むよ、第〝三〟騎士団員の皆さん」



 そんな、大きめの声が事務室に響きこちらにまで聞こえてきた。そちらに視線を向けると、青い制服を着た騎士団員が帰っていったところが見えた。


 青い制服、というと第二騎士団員だ。いやな予感が、するのだが。



「はぁ!?」


「はぁ、あの野郎……さっさと持ってくればいいものを……わざとか」


「やってくれるな。第二も第三も一緒だろーが!」



 あの人が何かを持ってきたらしい。テーブルに見覚えのないタワーがあるんだけれど、恐らく資料か何か。一体何cmのタワーになってるのよ。そう思いつつ、先輩達の間から覗くと……絶句してしまった。今日終わる? これ、数字の羅列? はぁ、数字の計算なんて私苦手なんですけど……


 騎士団の中で、第二騎士団とウチの第三騎士団の仲の悪さはどうしたものかと思ってはいる。この王城での騎士団は4つ。第一、第二、第三騎士団があり、その上に近衛騎士団がある。


 近衛騎士団はだいぶ格上で、その他は団員一人一人の実力をバランス良く配置されている。数字の上下は実力に関係ないのだ。それは向こうも分かってるはずなのに、こうして見下してくる。はぁ、本当にやめてほしい。


 しかも、これを持ってきたのはうちの団長が会議とかで執務室にいない時。いつもそうだ。



「これ、いつ終わるんだ?」


「今日は帰れないよな」


「はぁ、何してくれてるんだよ」



 第三騎士団にも、班がある。私は1班で今日は雑務係。だから1班のメンバーでこれを終わらせなくてはいけないのだけれど、もう夕方だから全て終わらせるとなると徹夜になる。まぁ、それはざらにあるけれど……思い出した。



『今夜もそちらに行ってもいいか』



 という言葉を。


 ……いや、私はただの下っ端。相手はお偉いエリート騎士団の騎士団長。どうせ私がいなかったら何も思わず帰るに決まってる。それに、そもそも来ること自体が間違っているんだから。



「ほらテレシア、お前はこっちな」


「はいっ!」



 とりあえず、目の前の仕事を何とかしよう。……私はこの数字の羅列と戦わねば。



 カチ、カチ、という時間の過ぎていく音は私達の耳には入らないくらい、部屋の中は騒がしかった。気付けばもう外は真っ暗闇。そして、最後の作業に差し掛かり……



「これで終わり?」


「だな」


「よっしゃあ! 終わったぁ!」



 よっしゃあ! という先輩方の声を聞き、ホッと息を吐いた。


 1班の班長である第三騎士団副団長が、私達がこなした資料に必要なデカルド団長のハンコをもらいに行ってくれると言ってくれた時にはもう先輩たちは大喜びだ。もちろん私もである。


 後片付けをしつつ、んじゃ帰るか~という声でぞろぞろと部屋を出ていく先輩達を見送りつつ後片付けを。


 けれど、何となく、急いでしまう。早く帰らなくてはと思ってしまう。


 私の頭の中にあるのは、あの言葉。でも、果たして来ているだろうか。もう深夜のこの時間で、部屋には鍵がかかってる。窓だって閉めてある。


 一応彼は来ると言っていたけれど……私がいなかったら帰ってしまうかもしれない。うん、きっとそうだ。どうせ私の事なんて興味本位だったんだから、いなかったらいなかったで帰っていったに違いない。


 内心焦りつつも、事務室を出た。そして、東棟を出て王城敷地内にある女子寮へ急いだ。


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