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騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!  作者: 楠ノ木雫


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◇第二十四話 戸惑いだらけの潜入捜査 ⑤


 任務で向かう事となっている仮面パーティーの会場となるお屋敷は、首都から少し外れたところにある。そのお屋敷の持ち主とは違った人物が主催しているらしい。仮面を付けて身分などは明かさずにただパーティーを楽しむ。それがこのパーティーの趣旨だそうだ。


 そして近衛騎士団員の方に「任務当日の明日は出勤時間にそのままロドリエス団長の執務室に向かってくれ」と一言いただいたはずだった。それなのに……



「テレシアちゃん、起きて!」



 言われた通りいつもの出勤時間に間に合うような時間に起床するはずが、寮母にいきなり叩き起こされプライベート服に着替えさせられた。一体朝からなんだと思っていたら……馬車に乗せられてしまった。


 茶色い馬車に家紋はなく、これがどこの馬車なのかが分からなくて疑ってしまったけれど、寮母は馬車に乗れと言ってきた。だから大丈夫なのかな? と思いつつ乗ったけれど……すでに乗っていた女性、メイド服のようなものを身に着けていらっしゃる方から話を聞けた。



「おはようございます、マーフィス様。ロドリエス侯爵の指示でお迎えに上がりました」



 極秘任務とはいえ馬車の中でのご挨拶となってしまい申し訳ありません、とのことだった。私は近衛騎士団員から近衛騎士団長執務室に向かう事を聞いていたのですが? と、聞きたかったのだが……



「あらまぁ、お顔が少し日焼けなさっていますね。ですがメイクでお隠し出来ると思います。それにしても、ハニーブロンドの髪がとてもお綺麗ですね。騎士の方とお聞きしていますが、簡単に結ってしまうのがとてももったいないですわ」


「……」


「そうねぇ、髪飾りは変更した方がいいかしら。ご用意させていただいたものでお似合いなものがあるといいけれど……」



 ……なるほど、恐らくこれから潜入捜査するためにご令嬢にならないといけないからという準備か。でも、こんな朝から取り掛かるとなるとだいぶ時間が余るような気がするのだが。


 けれど、団長様に派遣団員が意見する事はしないほうがいい。



「……よろしくお願いします」


「えぇ、精一杯、務めさせていただきますね」



 精一杯務める、というところが引っかかったけれど、馬車の中で顔やら手やらを触られてしまいそれどころではなくなってしまった。一体これから何が待っているのかと思っていたけれど、その後到着した大きく豪華なお屋敷に圧倒されてしまい言葉を失った。


 大きな門をくぐれば広く手入れされた綺麗な庭に迎えられ、その先にある噴水を避けるように回ればお屋敷の玄関に辿り着いた。



「おはよう、テレシア」



 馬車を降りようというところで、まさか近衛騎士団長に手を貸していただけるとは思わず一瞬ためらってしまった。けれど、この後の任務も馬車での移動となるので練習させていただこうと手を乗せた。


 けれど、テレシアと呼ばれてしまうのは困る。未婚の女性の名前を呼んでしまうのはいかがなものか。でも、本人は微笑みながらそう呼んでくるから私からは何も言えない。周りの使用人達もにこやかにこちらを見てくるから調子が狂うな。



「あの、近衛騎士団員の方から団長の執務室に向かうよう指示があったのですが……」


「あぁ、このまま連れてきてしまった方が効率がいいと思ったんだ。説明なく連れてきてしまって悪かったな」


「……いえ、問題ございません」


「本当なら私が直接起こしに行きたかったのだが、時間がなくてな。だが朝からテレシアに会えて嬉しいよ」



 以前ブティックにお邪魔した時の事を思い出し、団長様じゃなくてあのメイドさんが来てくれたことに感謝した。朝から心臓に悪い事はやめてほしい。


 初めて近衛騎士団の任務に参加させていただくから緊張で心臓が口から飛び出るんじゃないかと思っていたから、本当に助かった。


 けれど、そんなに微笑んでこんな事を言われたら……本当に勘違いしてしまう。


 ……そう、任務。これから任務だ。そう自分に言い聞かせて団長様と共に屋敷に入った。任務の詳細を聞けるのかと思っていたのに……



「遠慮なくやってくれていい」


「かしこまりました、侯爵様!」



 出てきたメイド達の言いなりとなって広いお風呂に入れられてしまった。団長様はこのまま王城に行くらしく、時間になれば迎えに来るとのこと。いろいろとお聞きしたいことがあったのに、メイド達によって浴室に引きずりこまれてしまった。


 服を勝手に脱がされ全て見られてしまい恥ずかしい思いをしている私を他所に、テキパキと身体を洗われ、そして湯船に入れられてしまった。


 何というメイド達の連係プレーとスマートな流れ作業。そんな彼女達に感服しつつも、とっても広くてすごく気持ちがいいお風呂を堪能させてもらった。はぁ、日頃の疲れが抜ける……


 普段入っている女子寮の大浴場は木の造りだけれど、ここは大理石のような清潔感溢れる豪華なお風呂だからずっと入っていたくなってしまう。


 お湯は乳白色で花びらが浮かんでいるけれど、どんな花だろうか。とってもいい匂いがするけれど、花はあまり知らないから名前を聞いても分からないかもしれない。


 その後のメイド達のマッサージの気持ちよさに危うく寝入りそうになるけれど、これから任務なのだから寝コケていられない。



「紅茶をどうぞ。リラックス効果がございますよ」


「ありがとうございます」



 極楽、とはこのことを言うのだろうか。紅茶の匂いもいいし美味しい。紅茶に詳しくないけれど、リラックス出来そうな気がする。任務なんて忘れてこの極楽気分にずっと浸かっていたい、とは一瞬考えてしまったかもしれない。気を抜かないよう気を付けよう。


 これから仮面パーティーに参加するのだけれど、騎士団員らしさを隠すためにこうして頑張ってくれているのだとしたら、土臭くて申し訳ない。


 生まれてこの方パーティーにはデビュタントに出ただけでずっと剣を握ってきた。縁談にだって団服で行った。


 ご令嬢と違って毎日鍛えているから筋肉も付いてるし、手だって剣ダコがある。となると他人と握手をすればバレてしまう可能性があるし、手袋は用意してもらう事は出来ないだろうか。極力、誰かと握手をしないように気を付けたほうがいいな。


 なんて思いつつ、何とも極楽な時間を過ごさせてもらってしまった。あの後結局転寝をして爆睡したのは団長様に秘密にしてもらったけれど、クスクス笑われてしまった事にはちょっと恥ずかしかった。昨日は緊張で寝られなかったから仕方ない、うん、仕方ない。


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