表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!  作者: 楠ノ木雫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/11

◇第二話 白い騎士団服 ②


 第三騎士団の事務室には大きなテーブルにいくつもの椅子がある。けれど、そのテーブルの上はごっちゃごちゃだ。本が積み上がり書類のタワーまで。部屋は広いはずなのに狭く感じるのはこのせいだ。毎日後輩の私が整理しているはずなのに毎日こうなってしまうのは何故だろうか。


 まぁ、その原因は分かっている。騎士団達は脳筋ばかりだし、そもそもこちらに来るべきでないものが来るのが悪い。


 この中に混ざっている書類は、おかしな苦情ばかり。騎士団は便利屋か使用人かと勘違いをしてる貴族達が多い。お前らの子供達のおもりだなんてごめんだ。


 王城内で始まった子息達の喧嘩を何故未然に防げなかったんだ、お前たちの責任だ。なんて言われた時には……危うくキレかけた。真剣を出していいのであれば止めてあげるが?


 そんな事を思いつつ、事務室の隣にある第三騎士団長執務室に向かいウチの鬼団長ことデカルド団長にお茶を運んだ。


 ……この人、本当に目力が凄すぎてビビるのよね。デスクに座っているだけでも、ビビる。



「どうぞ」


「あぁ、ありがとう」



 団長は綺麗好きだからいつもながらにデスクの上は綺麗だ。隣の事務室と比べちゃいけない。また団長に怒られる前にさっさと片付けよう。まぁ、明日になればまたごちゃごちゃになって心が折れるんだけれど。


 けれど、それよりも今朝の事だ。もしあれが、近衛騎士団の方の制服だったとしたら……恐ろしい。



「マーフィス」


「はっはいっ!?」



 さっさと戻ろうとドアに向かっていたその時。団長に呼ばれてつい声が裏返ってしまった。


 いや、さすがに団長の耳には入ってないか。うん、だ、大丈夫だよね……



「……どうした」


「あ、いえ、何でもありません……!」



 でも、これはさすがに動揺しすぎだ。落ち着け、大丈夫だから。……きっと。



「これを返しておいてくれ。本城の第二倉庫だ」


「かしこまりました……」



 ドキドキと心拍数の早い心臓を落ち着かせ、二日酔いの頭を労りつつ、頼まれた資料の片付けの為何冊もある本を持ち本城に向かった。


 私の職場であるここ王城にはいくつもの建物がある。騎士団が主に使っているこちらの東棟から、今向かっている倉庫まではさして遠くはない。けれど、そこに辿り着くまでに階段などがあるから時間がかかる。


 とはいえ、騎士団で使用する武具の整理や手入れ、備品運びなどの仕事に比べればこんなもの苦ではない。


 さっさとこれを終わらせよう。そう思いつつ辿り着いた倉庫に入り明かりをつけた。部屋は事務室と同じような広さがあり、私の身長よりも高い棚がいくつも並んでいる。棚と棚の間に入り、正しい位置を探した。



「えーっと、これは……」



 けれど、私は気付かなかった。私の後に、誰かが倉庫に入ってきていたことを。


 知らず知らずに、私の背後に並んでいた人物が、私の頭の横から手を伸ばし、目の前の棚に手を付けた。それに気が付き、体が硬直した。


 全く、気が付かなかった。私は一応騎士の端くれだけど、人の気配は一般人よりは感じ取れる。それなのに……気付かなかった。なら、後ろに立つ人物は、一体誰だ。



「朝の鍛錬には間に合ったか?」



 低めのトーンの、それでいてとても綺麗な、何となく聞き覚えのある声が、腕側とは逆の耳元でそう囁いた。


 朝の鍛錬。ギリギリだった事を知っていて、間に合ったかどうかの結果を知らない人物。



「間に合い、ました……」


「そうか、それは良かった。私のせいでお叱りを受けてしまうのは心苦しかったのでね」



 まさか……今朝の、私のベッドにいた方なのでは……?


 今朝、大きな声も出しちゃったし、ベッドからも落ちて大きな音も出していた。例え寝ていたとしても、あれはさすがに起きる。あんな大きな音に気が付かない騎士(・・)がいるわけがないのだから。



「それと、腰は大丈夫か?」



 これは、正解?


 血の気が引いたけれど、必死になってコクコクと小さく何度も頷いた。



「鍛錬に響くのではと心配していたんだ。それならよかった。あぁ、今君の部屋の窓が開いているんだ。流石に女子寮の玄関から堂々と出るのはまずかったのでね。だから後で戸締りをしてくれ」


「か、しこ、まりました……」


「あぁ」



 まごう事なく、私の部屋にいた人物である。でも、まさか、この方って……いやいやいや、まっさかぁ……


 視界に入る、彼の着ている袖。めくられている部分は黒い生地で、腕の部分は白。そして、金色の刺繍が施されている。これはまさしく、近衛騎士団の制服だ。


 そして、袖に付いているこの金色のカフスボタンを見て、寒気を感じた。これは、うちの団長にも付いている。騎士団のトップたる団長様が付けるもの。


 この方は、まさしく……近衛騎士団長。


 これは……ヤバい。非常にヤバい。この状況を打開するにはどうしたら……そう思っていたのに、首に何かふにっと柔らかい感触を感じた。そこは、確かさっき先輩に見つかり虫刺されと誤魔化した部分。ま、さか……



「今夜もそちらに行ってもいいか」


「……」



 こ、今夜も……今夜も、この人来ちゃうの……!? わ、私の部屋に……!?


 近衛騎士団長が、私の部屋に来る。しかも、また、である。これは現実だろうか。まだ私が寝ているのかもしれな……いや、今朝の鍛錬でだいぶしごかれて、朝のベッドからの転落時に受けた衝撃でもう目はぱっちりである。頭もちゃんと起きているはずだ。



「楽しみにしてる」



 と、次はリップ音を鳴らしつつ頬にキスをされ、私の背後から離れていった。


 気が抜けたからか、足の力が抜けてゆっくりとしゃがみ込んでしまった。



「……」



 ……はは、笑えない。


 私、殺される? 殺されるのか?


 とりあえず……早く部屋に行って鍵閉めてこよう、うん、そうしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ