◇第十九話 ねぎらいとは? ②
美味しいお肉を好きなだけ食べて、お腹いっぱいで幸せな気分で私の部屋のある女子寮へ戻った。帰ってから大浴場に行く準備をして、お風呂でゆっくりしよう。明日は休みだから、今日と明日はゆっくりしようかな。
そう思いながら寮母にお休みの挨拶をして部屋に入った……のだが。
「……あ、の、団長様は、ウチのスペアキーを、お持ちで?」
「団長様?」
「……リアム」
恥ずかしさで溶けてなくなってしまいそうだ。けれど、自室のベッドに組み敷かれた状態で無理ですだなんて言えるわけがない。命の危険すら感じているのだから。
先輩達がせっかく夕飯を奢ってくれたのに……帰った途端に近衛騎士団長が待ち構えていて捕まったなんて笑えない。今思えば、お酒を飲まなくてよかった。あんなに勧められても頑なに断った私を褒めてほしい。
「ど、どいていただいても……」
「ん? 今回の狩猟大会で騎士団一の功労者を褒めてあげようと思っているのに、嫌なのか」
それには、だいぶ、色々とツッコミどころがある。騎士団一の功労者とは、一体どこの誰の事を言っていらっしゃるのでしょうか。で、しかも褒めるのが、これ?
「可愛い可愛いテレシアを甘やかさないと、私の気が済まないんだ。だから、付き合ってくれるか?」
これ、私を褒めるの内に入っていないのでは……?
そう訴えたかったが、彼のキスで口を塞がれてしまった。なかなか離してくれないそのキスで酸欠になりかけたが……
「甘いな……何を食べてきたんだ?」
「……」
「そうだな……もしや、ケーキかな。テレシアは本当に可愛らしいな」
この方にそれを言われると、何故かだいぶ恥ずかしくなる。ケーキを食べるのが可愛らしいだなんて、そしたら一緒に食べた副団長はどうなる。それに、私なんかより別の令嬢の方がずっと可愛らしいのに。
でも……いくつ食べたのかは知られたくないと思ってしまう。
「お酒の味がしなかったことには安心したよ」
「……」
お酒は自重すると心に決めましたのでご安心ください。と、言いたかったけれどそんな余裕は簡単にこの方に潰された。
その日の近衛騎士団長は、甘々でありつつも意地悪だった。それ以上の言葉では言い表せられないほどに。
次の日が休みだったことが幸いだった。恐らく、仕事中に余計なことが頭によぎって顔が火照り出すはずだから。
そして、次に目が覚めた時には太陽はだいぶ上に昇っていた。
「……うわぁ、なにこれ」
隣には彼がいなかった。その代わりに、とあるものがその場に置いてあった。それは、懐中時計。銀色で、ふたはとても繊細に描かれている綺麗な絵柄。描かれているものは……――花。
青色の、綺麗な花だ。
「……すごい」
これって、団長様の所持品? こんなお花の懐中時計を使っているだなんて意外だな。
でも、これはわざと置いていったのだろうか。さすがに近衛騎士団長が忘れ物をするとは思えない。これは、また来るというサインだろうか。こんなに高級そうなものを置いて行ったのだから。
「はぁ……」
まずは、女子寮にある大浴場にでも入ってすっきりしよう。そこからだ。
あと、お腹空いた……昨日あんなにいっぱい食べたのに、消化が早いな……
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