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7女神の条件

 『無事生還……という事で、これから先、生涯の伴侶として頑張ってください』


 「くッ……なんでこんな奴と!」


 王女と呼ばれる女性は、心底嫌そうな顔でこっちを睨んできた。


 裸のまま睨まれているため、目のやり場に困る。

僕は目を隠しながら――。


 「一旦、屋敷に戻りましょう。ここじゃ話しにくいですし、服も着て欲しいので」

 

 彼女は気付いたように体を隠し、顔を赤くしながら、こくんと頷いた。


 『――今更、隠しても遅いと思いますけどね? しかも、婚約するんですから……』

 

 女神様の言葉にさらに顔を赤くさせる彼女は、足早に屋敷に戻って行く。


 僕は彼女の姿を見ないように、目を隠しながら後に続いた。


――――――――――――――――――――――――――――


 僕はあれから屋敷に着き、彼女が着替え終わるのを待っている。


 ソファに体を預け、待っている間、殴られた事を思い出していた。


 あれは、本当に痛かったなぁ〜〜。


 昔よく怪我をしていて、骨が折れたりした事もよくあり。


 そのため、痛みには慣れているつもりだったのだが。


 彼女に殴られた瞬間。

 今までの痛みとは比べられない激痛が走った。

 

 これは僕の予想にはなるが、この異常なほどの激痛は【不老不死】のスキルが関係しているのではないかと思っている。


 ただ、体が無事な点に関しては、確実にこのスキルが関わっているのは確かだろう。


 取り敢えず、この話は置いておいて、彼女の着替えが終わったようだ。


 「……失礼します」


 部屋に入って来た女性は、顔を赤くしながら、もじもじした感じで入ってくる。


 流石に裸をみられたので恥ずかしいのだろう。


 彼女は向かい側のソファに座ると、恥ずかしそうな声で話しかけてくる。


 「……あの、お名前は何と言いますの?」


 こうして誰かと向かい合って話すのは、久しぶりだ。昔から友達が一人もいなかったからなぁ。

 

 そんな事を思いながら、彼女の顔を見つめる。


 今まで目を隠しながら、身の回りの世話をしていたので気が付かなかったが。


 彼女は想像以上に美しく、あの怪力を待っている人とは思えないほど綺麗だった。


 彼女の姿は金色の派手な髪、整った顔、スタイルも抜群に良く、俗に言う美少女なのだろう。


 ついさっき殴られていなければ、彼女の事を可憐な少女だと思い込んでいただろう。


 「あの……」


 しまった。

 答えるのをすっかり忘れてしまっていた。

 

 「すみません、僕の名前は朔至(さくし)と言います。少し考え事をしていて」


 この世界に来てしばらく経ち、ようやく喋れるようになったが。未だに味覚は戻っていない。


 それぞれの感覚が戻るのに時間差があるのか? そんな事を考えていると、ふと、まだ彼女の名前を知らないのを思い出す。

 

 「あ、まだ名前聞いてなかったですよね。教えてくれませんか?」


 彼女は少し驚いていたが、すぐに答えてくれた。


 「――(わたくし)の名は、ジーニアスと申します。以後お見知りおきを」


 「よろしくお願いします……」


 この話し方とこの名前は、やっぱり王女様で確定ぽいなぁ。

 

 この前、女神様も王女だとか言っていたのは覚えている。


 ただ、どう接するか悩みどころだ。


 裸を見てしまって好感度低いだろうしなぁ。絶対嫌われた。

 

 そう悩んでいると女神様が話を始める。


 『さて、お互いの名前を知ったことですし。早速、話を始めましょう』


 「何も話すことはありません。(わたくし)は勝手にやらせてもらいます」


 『そんなこと言っても、――自分の今いる場所さえ分からないでしょう』


 「それは! そうですけれど……」


 『そこで、あなたに条件があります。この条件さえ飲んでくれれば、あなたを王国に案内してあげます』


 「条件?」


 『はい。朔至くんを一緒に連れていってくれたら、掟の事を黙っていてあげます。私達も用があるんです』


 「本当ですか! その話!」


 『ええ、女神は嘘をつきません』


 まだ覚えててくれたのか、僕のわがままを。


 しかも、行ってもいい事になっている。


 「あの、いいんですか。王国に行っても?」


 あの時は、頑なに行かせないようにしていたが、何なんだ、この変わり身の早さは……。


 まさか! 狙ってたのか、この展開を。

 一体いつから、もしかして会った時にはもう思いついていたのか。

 

 『えぇ、彼女は戦闘のスペシャリストなので、貴方を安心して任せられます。旅の途中で剣技や魔法を教えてもらってもいいですしね。それに……貴方のスキルの交渉材料として使えますしね』

 

 「交渉材料? 何のです。イノセントさん」


 『貴方のスキル【不老不死】を返すのでしょう。元の持ち主に、スキルの譲渡で命を失わないようにしないといけないですから』

 

 「な!? 【不老不死】!? ですって、なぜあなたがそのスキルを持っているんですか!?」


 王女ってことは、王族ってことだ。

 知らない訳ないか、王族に代々受け継がれているスキル【不老不死】のことを。


 『ジーニアスさんあなたには、交渉材料になってもらいます。これがあなたを王国まで連れて行くことと掟を黙っているための条件です』


 『一つ目、朔至くんを一緒に連れて行く』


 『二つ目、魔法や剣技を教えること』


 『三つ目、【不老不死】を無事譲渡させるために、現国王に交渉をしてもらう』


 『あなたにならできるはずですよ、王女様』


 女神様がそう言うと、あからさまに嫌そうな顔をした彼女。

 

 「めちゃくちゃです! いくらなんでも! 流石の(わたくし)でも父上にそんな交渉なんてできません!」


 『――無理でもやるしかありません。掟を黙るには、それほどの対価が必要です。あなたには特に』


 「くッ、少し考える時間をもらいますわ」

 

 顔をしかめ、ドアを開け、彼女は自分の部屋に……何だ戻ってきたぞ。


 「……私の部屋はどこですの」


 





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