表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

3初めての助け

 「うわぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」


 今、僕は空中にいる。というか、落ちているのだ。


 イノセンスさんの合図により、地面がすり抜け、スキルが目に映ったところまでは良かったが。

 次の瞬間、自分の体が空中に放り出されていた。


 僕はどうすることもできず、流れに身を任せることに。徐々に地面が近づき、もう目の前に。


 体が地面と衝突――する事はなく、寸前で止まっていた。


 体の大勢を整えると、頭の中に聞き覚えのある声が聞こえてくる。


 『すみません。事前に説明しておいた方がよかったですね』

 

 この声は、間違いない! 

 今まで毎日聞いていたのだ、聞き間違えるはずもない。


 「イノセントさん!? でも、なんで声だけ聞こえるんだ?」

 『フフ、それはですね。天啓の力を使っているからです』

 

 イノセントさんの話によると、この世界でなら、天啓と言う力を行使できるらしい。

 しかし、デメリットとして神々しい光が降り注ぐので、人前では気軽に使えないそうだ。


 それとは別に、僕が地面に当たらなかったのは、イノセントさんが準備をしていてくれたおかげらしい。


 『という事で、これからもよろしくお願いしますね』


 僕は安心していた。

 常識とかけ離れた異世界に、声をかけてくれる知り合いが居るだけで、心が軽くなる。

 

 「こちらこそ、よろしくお願いします。イノセントさんが、見ていてくれるだけでも心強いです」


 僕はイノセントさんに感謝しつつ、周りを確認した。

 木々が生い茂り、見たことのない花や虫、蠢く植物など、改めて自分が違う世界に来てしまったことを実感する。


 「さて、これからどうしたものか……」


 そう考えているとイノセントさんが助言をしてくれる事に。


 『まずは、家を用意しましょう。雨風を防ぐ必要があります』

 「え? 街とかには行かないんですか?」

 『はい。貴方はまだこの世界に体が慣れていませんので、話しかけても意味が通じません。逆もまた然り。話しかけられても言葉の意味を理解できないでしょう』


 つまり、数日が経ったら話せるようにはなるが、しばらくの間は、この世界の人に話が通じないということらしい。


 話を戻すが、家を作ろうにも作り方も知らないし、人手も足りない。


 どうしようものか悩んでいたところ、後ろから突然、爆音が轟く。


 そこには、見慣れた屋敷があった。

 そう、最近まで暮らしていたあの屋敷だ。

 

 『これで、暮らす場所には困りませんよね!』

 「いや、これは流石にやり過ぎだーーっ!? そこまでしなくても良いですよ! それに危ない!」


 僕は、目を白黒させながら叫んだ。


 イノセントさんの思い切りの良さは、今までの生活で分かってはいたが、ここまでするとは。


 『そうですか? 次から気をつけますね。それじゃ次は、水や食べ物ですね』


 次は、どんな事を始めるのかと、そわそわしていたのだが――

 

 『なんとか自分で集めてみましょう。この世界の食材に慣れる必要もありますし。これから先、役に立つ可能性もあるので』


 ――そこは普通なのか……。


――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 あの後、イノセントさんの手助けがありながらも、順調に水や食べれる物を見つける事ができた。

 

 「ふぅ、食べれる野草が沢山あってよかった。水が湧いている場所も見つけられたし」


 でも、ほとんど女神様の指示通りの場所に向かっていただけなんだが。

 食べ物は毒が無いものを選んでくれたので、安心して食べる事ができる。


 『よし、それじゃあ、食事の時間にしましょうか!』


 僕はキッチンで野草を使った料理を始めた。

 もちろん、料理をしたことも無いので、イノセントさんに教わりながら作る。


 「――できたぞ! 初めてだから心配したけど、なんとかなって良かった」


 食事の準備を済ませて、早速食べ始める。

 僕は、自分で作った初めての料理を口の中に入れる。それは、自分の想像もしていない味だった。


 「――あれ、味を感じない?」


 一口また一口と料理を口に運ぶが、味を感じることは無く、気付くと料理がなくなっていた。


 イノセントさんが心配そうな声で話しかけてきた。


 『大丈夫ですよ。多分ですけど、まだ体がこの世界に慣れきっていないからだと。しばらくすれば、味を感じられるようになれますよ』

 「そうですか……。しばらく、このままですか……」


 初めて作った料理が何の味もしない事に肩を落としていると。遠くの方から声が聞こえてきた。

 

 「――誰か、――助け――ださい」

 

 途切れ途切れに聞こえてくる声は、明らかに助けを求めている。


 僕の足は、勝手に動いていた。

 イノセントさんが、『行ってはダメです』と言ってくるが、僕は悲鳴が聞こえた場所に急いで向かう。


 山を落ちるように走ると、すぐに到着した。

 そこには、悲鳴を上げたであろう女性が座り込んでいた。

 その目の前には、狼のような魔物が今にも飛びかかりそうな大勢になっていた。


 僕は、下り坂での助走を使い飛びかかり、魔物を羽交締めにして動けないようにガッチリ掴み、女性に逃げるように言う。


 「早く逃げろ! 僕が押さえている内に!」


 一向に逃げようとせず、不思議な顔をしてポカンとしている。


  『貴方の言葉は、まだこの世界の住人には通じないんですよ』


 そうだった、完全に忘れていた。

 もう、これ以上押さえきれない。


 そう考えていると、目の前に神々しい光が降り注ぐ。すると、座り込んでいた女性が立ち上がり逃げ始めた。

 

 『私が天啓の力を使い、あの人に逃げるように伝えました』

 「流石です! イノセントさん!」


 僕は、女性が十分離れたら、魔物を遠くに放り投げる。すると、魔物は怒って追ってきた。


 『朔至くん屋敷まで何とか逃げてください』


 イノセントさんに言われるがままに逃げると、魔物は、屋敷から少し離れた辺りで追ってこなくなった。


 「はぁはぁ、あれ何で?」

 『この屋敷には、魔物除けの魔法がかかっています。なので、強力な魔物意外は近付くことできないのです』


 イノセントさんの説明を聞き、安心して座り込んでしまった僕に。


 『それより、なぜ、あんな危険な事をしたんですか! 自分の命を大切にして下さい!』

 「――すみません。体が勝手に動いちゃって……」

 『スキルの説明もまだなのに。無茶しすぎです! この際ですから、スキル名を言っておいてください』


 スキル? そういえば最初にこの世界に来た時、手に入れたな。


 今日は、色々あったからな――完全に忘れてしまっていた。


 「確か【不老不死】って言うスキル名だった気がします。なんだか、長生きできそうなスキルですね」

 『――【不老不死】ですって!』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ