人口管理班の仕事
今日の私は警察署に残って事務作業だ。
人口管理班の仕事は何も選ばれた人を回収するだけが仕事ではない。
例えば、人選機による選別を公平にするため、出生した者を常に人選機に登録する。
病院で出産すれば、直ぐにでもこちらに連絡が来るが、中には病院に行かず自宅などで出産したりすることもある。
その自宅で出産した中で、出生届を申告しなかったものが一番厄介だ。
我々が知らなければ当然、人選機に登録もできず、一生選ばれることはない。
それは公平とは呼べない。
国民からの信頼を得るため、そして保つためには何としてもそういったことは防がなければならない。
そのため取りこぼしているものがいないか、必ず確認する。
我々は全国にある産婦人科と締結している。
産婦人科に行った者たちのカルテはすべて我々も把握している。
たとえ出産が病院で行われていなくとも、定期検診のため病院に名簿が残っている。
たった一回の定期検診でもその人の名前や所在はわかるし、その人の出産予定日がいつかもある程度はわかる。
それでもし、その出産予定日から一ヶ月過ぎても病院や役所からなんの連絡もない場合は、我々が直々にその人の元へ向かう。
もしそのカルテに記された住所にいなければ、我々は刑事らしくその足取りを追う。
役所に出生届を出さなかったり、そもそも病院で出産しないのには、彼らが身分を隠さなければいけない理由がある場合がほとんどだ。
資産家の隠し子、犯罪者の子供、様々な理由がある。
彼らは産婦人科の医師や助産師が同行していないことが多いため、死産や最悪の場合母子ともに死んでいたといったケースも過去にあった。
仮に母子ともに生き延びたとしてもろくに病院も通えず、数日後にその子供が死んでしまうことも多々ある。
たとえその親が極悪人だとしてもその子供に罪はないのだから、病院に通い、長く生きて欲しいと思うが、どうやら彼らにも譲れないプライドのようなものがあるらしい。なんとも理不尽なプライドだ。命よりも重みのあるものなどないと言うのに。
人選機によって選ばれた者たち以外の死体を確認しに行くのも我々の仕事だ。
こういった者たちは人選機から排除されなければならない。
しかし、病院や警察からの書類だけでは信用ならないため、我々自ら確認しに行く。
死んでいると思われていた者が実は生きていましたとあっては我々の信用に関わる。
そこで人選機から名前を排除する前に遺体が本当に死んでいるか、身元の確認、そして司法解剖などによってわかった死因が適切か細かく確認するのだ。
毎日関東地方だけでも数人の死者が出る。そのたびに死体があるところまで行かなくてはならない。
我々人口管理班用に死体が数箇所に集められてはいるので、色々な死体置き場をたらい回しにされずに済むのが幸いといえる。
そうでなければ、死体を確認するためだけに北海道まで行かなくてはならなくなってしまう。それだけはごめんだ。
北海道の死体も数日後には必ず指定された場所まで届くようになっている。
死体確認というのは意外と時間がかかるもので、この前の大きな客船の沈没事故で多数の死者が出たときなんかは死体確認に三日かかった時もあった。
我々が直に赴かなくてもカメラで死体確認ができるようになった時があった。それにより死体確認の時間が大幅に短縮され、作業効率が格段に向上した時があったのだが、一回医者が多額の賄賂を受け取って、死体を偽装したことがあって以来、やはり我々が直々に行くようになった。
やはり未だに信頼できるのは自分自身と言うことだろう。
と言いながらも我々は人を公平に選別するあの人選機に絶大の信頼を置いている。なんとも皮肉な話だ。