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ピースメイカー  作者: 蒼蕣
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佐竹義和巡査部長

午前十時二十三分のはやぶさ五号に乗って私と佐竹巡査部長は函館に向かった。

人口管理班は全国に六箇所存在する。我々は関東地方が主な管轄区域なのだが、実は北海道も我々の直轄区域なのである。

なので、北海道に在住する国民が選ばれれば、我々が赴かなくてはならない。

宮城県にも人口管理班は存在するのだが、彼らの管轄は東北地方限定である。

ほかの四箇所も中部地方、中国と四国地方、九州地方、近畿地方と地方別に分かれている。

もし選ばれた人の所在地が書類上とは違い、地方をまたいでいれば、その地域の人口管理班と連携を取らなければいけない。

今日審査するのは埼玉県に一人、神奈川県に一人、東京都に二人、そして北海道に一人だ。

我々は北海道に在住する一人を審査するため、わざわざ新幹線で四時間かけて北海道まで向かうのだ。

もちろん交通費は経費で落とすが、それでも時間と労力を異様に消耗している気がする。

明日は明日で任務があるのでもちろん日帰りだ。

だが、もし仮に明日も北海道の人が選ばれれば、一日の滞在は認められている。

しかし北海道の人が選ばれる割合は関東地方と北海道の人口に比例して、よくて三日に一回なので、日帰りがほとんどである。

もし我々、人口管理班に人がもっと入れば、北海道に人を送り続けず、その場に駐在してもらえるのだが、我々はわずか五人、人材を割くことは難しい。

隣を見ると、佐竹巡査部長が本を読んでいた。

その本には『人と話すのが苦手な人にオススメ、話し上手になれる方法』と書かれていた。

彼にとっては非常に興味をそそられる本だろう。

佐竹義和巡査部長、きちっとネクタイを締め、ワイシャツはシワひとつない。

警部に見習ってほしい格好と言える。

大きな丸メガネがトレードマーク、髪はマッシュルームに近いと言えるだろう。

彼の特徴はその性格だ。

彼は非常に臆病な性格で、どこか引っ込み思案なところがある。

積極的で直情的なものが多い人口管理班ではより一層存在感が薄れている。

他人から見ればいつもおどおどしていて優柔不断に感じれるだろう。

しかしその性格ゆえか、いつも真っ正直で仕事も言われればなんでもこなそうと努力する。

しかしその努力の成果もあまり実らない。

警察には学生のように成績はつけられないが、彼に成績をつけるとしたら、いつも六十点というところだろう。

正直言うと後輩である私もあまり頼ろうとはしない。

もちろん彼が努力していることは知ってるし、なんとか成績を伸ばそうと日々精進しているのは知ってるが、なぜだか全然上がらない。不憫に思う。

もしかしたら他に彼に見合った職業があるのかもしれないが、どうやらそうもいかないらしい。

彼はエリート一家に生まれた次男坊だ。

母は財務省で働いていて、父は現在警視庁の警視総監。兄も警視庁の刑事部捜査一課の警視正だ。

そんな家で生まれた彼の期待値は生半可ではなかっただろう。

彼自身も一生懸命頑張った。家族になんとか認められようと努力したはずだ。

しかしそんな期待に応えられず、日々強められるプレッシャーに耐えきれなくなった。

そうして彼は今この人口管理班にいる。

家族とは疎遠になっているらしい。合わす顔がないのだろう。そしてそれ以来あまり人との関わりも閉ざすようになったそうだ。

私もここに来た当初は目も合わせてくれなかった。しかし今では話をする程度なら問題はなくなった。

もし彼の努力を彼の家族が見ていたら、彼の努力を認めてくれていたら、もしかしたらここに来ることもなかっただろう。

そんな彼を見ていると、自分のこれまでの苦労など、雀の涙ほどだろう。

「先輩、もう直ぐ函館駅ですよ」

「ああ、ありがとう」

彼は優しく微笑んだ。

彼の警察官としての実力はまだ一人前とは言えず、他人から貶される毎日だろう。しかし彼のこの暖かい性格はきっと多くの人を惹きつける力を持っているはずだ。

今彼はきっとこの人口管理班で一矢報いろうと努力しているのだろう。


今回の目的地は室蘭だ。

北海道新幹線で札幌まで行って、室蘭に向かう方が時間的には短いのだが、函館駅で降りて、特急の北斗七号に乗った方が交通費が浮く。

本当に北海道は土地が広くて困る。

人間一人を見つけるために片道七時間近くかけてやってこなければいけないのだ。

もう少し効率のいい方法はないのだろうかといつも思う。

新幹線ではなく飛行機で向かえばいいじゃないかと思うかもしれないが、警察内部でこの第零課が使用できるお金が一番限られていて、できるだけ節約しないといけないらしい。

さらに言うと警部が飛行機嫌いで部下にも飛行機は避けるよう布教しているのだ。

そんなこんなで、目的地の蠣崎宗矩氏の住宅に着いたときにはもう十九時を回っていた。

蠣崎氏は一人暮らしで、我々が到着したときにはすでにその家を出る準備ができていた。

ほんの二、三分で彼は用意を済まして、我々に連行された。

七時間かけたのにわずかに数分で北海道を去らなければならない。仕事とはいえ、なんともやるせない気持ちになる。

班の人たちにお土産を頼まれたのを夜ご飯に室蘭ラーメンを食べているときに思い出した。

室蘭のお土産といえばなんなのだろう。北海道土産として定番の『白い恋人』でいいだろうか。

室蘭駅で色々見て回ることにした。

クッキーやプリンなど私好みの菓子が並んでいたが、先輩たちはもう少し渋い菓子をご所望だと佐竹先輩が言ったので、まんじゅうを買うことにした。

これが、室蘭の名物なのかと言われたらどうやらそうでもないらしいが、まあ彼らのような大雑把な人間が細かいことを気にすることもないと高を括った。

こうして我々は任務を終えて、東京にとんぼ返りとなった。

明日の任務についてはまだ報告も受けていないが、明日も北海道から人が選ばれ、私が行くよう言われれば私は断固として拒否しようと思う。

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