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ピースメイカー  作者: 蒼蕣
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苦悩

結局その日は警部の一存で広島から直で帰宅することが許された。

死亡報告は電話一本で済ませ、長宗我部警部補との待望の遅めの昼食を済ませると、早々に分かれた。

長宗我部警部補もやはり忙しかったようだった。

警部たちへのお土産を買って乗った新幹線は四時二十八分発。到着は九時を回ったところだった。

そして今私は結衣と遅めの夕食をとっている。

場所は彼女の家で。

新幹線の中でショートメッセージが届き、夕食をどこかで取ろうということになった。

私が東京に到着するのが九時ごろだと伝えると、そんな遅い時間ならうちに来なよということになった。

確かに夕食を取るにしては遅い時間だが、それで彼女の家で食事をする理由にはならないと思ったのだが、彼女は一度思ったことはよっぽどのことがない限り曲げない。

本当は家に帰って着替えてから、向かおうと思ったが、着替えてから行くのでは十時を回ってしまうと思い、駅から直行で彼女の家を訪ねた。

お土産片手にスーツ姿での訪問は普通に家庭を持っていると他人から思われそうだなと思っていた矢先、彼女が出迎えた。

一体何をそんなに焦っているのかわからないが、あれから結衣と会うたびに冷や汗が出てくる。

結衣は私の正体を知っても距離を置くことはなかった。

嬉しい気持ちがある反面、今後どう接していいかわからなかった。肩身が狭い。心の底から彼女を愛すことに躊躇いがある。彼女はそれでも私の面倒を見てくれる。

彼女は私がどんな仕事をしているかも知っている、それを承知の上で私とのこれまで通りの関係を続けてくれている。懐が広いなどと軽い言葉では言い表せない。

彼女が私のことを怪訝な目で見ることはなかった。私の思い過ごしに終わった。いや、そんなことを思っていたのは彼女を信じきれていなかった何よりの証だ。

しかし私は彼女の告白になんの返事も返さなかった。それはつまり、恋人同士ではないということだ。

口下手な私とは違い、彼女は毎日私に一報を入れてくる。

私はそんな彼女にいつも曖昧な返事をする。後で自分の打ったメールを見て彼女と自分の温度差を感じる。よそよそしすぎる。しかしこんな経験は初めてでどう接していいのかわからないのが本音だ。

ふと、彼女のリビングの窓から外を見た。

まだ秋だというのに、外の木々は葉を落とし始めていた。

今年は例年より寒波の襲来が早いとニュースで見た。

つい何年か前まで暖冬だと騒いでいたのが、嘘のようだ。

私の服装はいつも通りだが、歩いていて、やはり厚着をしている人が目立った。

彼女が夕食の準備をしている間、私はリビングでずっと窓の外を見ていた。

自分の本当の気持ちを彼女に伝えたい。しかし自分の中での葛藤に終止符が打てない現状、この一線を画した関係を続けていく他ないと思った。男として情けない。

そもそも自分と彼女が付き合ってはダメなのはなぜだろう。

屍人と生きている人が恋人同士はダメという法律は存在しないのだから誰にも咎められることはない。

それなのに私は何を怯えているんだ。

もし私がこの仕事から解放されたら、戸籍のない私はどう生きていけばいい。彼女を養うことなんてできるのか。散々人を殺めたこの手で。彼女に苦労ばかりかけてしまうどころか悲しませてしまうのではないだろうか。

仕事一筋で人との関わりを最低限に控えるよう言われているにもかかわらず、その掟を破ったら警部たちに申し訳ないと負い目を感じているからか。恩を仇で返すことになるかもしれないからか。我々のような咎人が道楽に手を出していいのか。たとえ警部たちが許しても他の人口管理班は問屋が卸さないだろう。

考えが一向にまとまらない。自問自答を繰り返してしまう。

気づけば彼女に本音を話した直後から暇さえあればこんなことを考えてしまっている。しかし仕事を疎かにしている訳ではないが、仕事中にうわの空になることが多くなった。

もし、彼女と出会ったのがまだこの世に未練があった頃ならと、今更自殺したことを悔いた。

窓の外では強い風が吹き、窓がカタカタとなった。

前々から思っていたのですが、この主人公は葛藤が多いですね。慎重と言えば聞こえはいいですが臆病なんでしょうね。焦ったい、イライラすると感じている方も多くいるかと思います。私も自分で書いておきながら、めんどくさい人だと感じています。まあただ実際に自分が彼と同じ立場だったらこれぐらい苦悩の日々を送るだろうと思います。その深層心理を事細かに文字に起こしているからつまらないと感じてしまうのでしょう。心理は最小限にとどめ、あとは読者の皆様の想像にお任せする形も取りたいのですが、なにぶん頭からぽんぽんと絶え間なく言葉が出てしまい、なかなか取捨選択ができない事態です。もう少し辛抱してください。もうしばらくすると彼の消極的な態度が覆る転機が訪れますから。

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