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ピースメイカー  作者: 蒼蕣
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捜索完了

その後、四日かけてようやく行方不明者全員が発見された。

その間、馬が合わない警部たちは一言も言葉を交わさなかった。殺伐とした雰囲気は結局改善することはなかった。

私自身は長宗我部警部補や森巡査部長とそれなりに話す機会があり、彼らとは親睦を深められた気がする。我々が仲よさそうにしていても先輩たちから疎まれることも叱責を受けることもなかった。やはり部下たちに自分達と同じ価値観を持たせてしまったことに少なからず負い目を感じているということか。

最後の一人が発見されたのはその日の午後三時すぎだったので、その日はいつもの宿に止まって明日朝一番で帰ることになった。

行方不明者のうち生存が確認されたのは私たちが初日に来て発見されたただ一人だけだった。

遺族への説明は人口管理班の仕事ではないが、正直我々にも遺族から責任を追求される気がした。

しかし柴田警部ら、中部地方の人口管理班と島津警部は顔色ひとつ変えずに遺体と乗客リストを照らし合わせ、その日見つかった人の身分を確認し、それが自分の管轄外と知るとそそくさと宿に戻った。

人情というものが欠けている気がする。死に慣れすぎている。自分も将来こうなってしまうのかと思うと背筋が凍った。

発見された人に対してもだが、一緒に捜査に協力した警察官に対してなんの挨拶もせず退散するなんて。

警部は本庁ではあんなに明るく、間抜けなのに、ここでは無言で表情にも変化を見せなかった。

あとでわかったことなのだが、うちの原警部は共同派のリーダーであることがわかった。

そして彼は度々離別派の人たちと対立していたそうだ。

離別派のトップは立花警視だが、実際他の離別派を指揮していたのは中部地方の班長である柴田警部だそうだ。

立花警視の命で人口管理班内での対立を止めるよう言われ、あからさまないざこざや敵対心を持つことはなくなったが、どうやら内心では対立が続いているようだ。

一体彼らの間で何があったのか。なぜ、そんな敵対心を持つようになったのか。聞いてみてもいいのだろうか。好奇心は時に凶器にもなる。取り扱いには慎重を要する。

小島警部補からいろいろ聞いたが、核のところまでは話してくれなかった。

なら、馬場警部補に聞いてみてはどうだろうか。


部屋に戻ってから、本庁の馬場警部補から今日分の通常業務は全て終わったと連絡が入った。

行方不明者の死亡審査は私たちが現地で行ったため、ただ本庁に死亡を確認したと連絡するだけで、馬場警部らが人選機のリストから消去する。

これでようやく人選機が正常に戻ったと言えるだろう。そして私も通常業務に戻れる。

それはすなわち、またあの生活に戻るということ。

仕事自体は別になんの楽しみもない。正直毎日毎日同じ作業の繰り返しで、仕事に自分の身が囚われている気がするが、仕事が終わればあとは自由時間。その自由時間をあれに費やすのは何より楽しみだ。

一週間ぶりだが、正直それ以上に感じた。失って初めてその恋しさを感じるとはまさにこのことだ。

前は一週間に一回の英会話教室に通うだけだったのだが、最近では教室がない日でも早めに上がれば、自習室に行っていた。

まちまちだが、週によっては三、四回自習室に行って彼女に英語を教えていた。

「おい、何考え込んでる?」

「え」

突然話しかけられて驚いた。

原警部が缶ビール片手に私の顔を覗き込んでいた。

「あ、いえ。ただ明日からまたいつもの日常が始まるんだなと思って」

なぜ自分は今彼女のことを考えていたのか不思議に思った。いつから彼女が会心の友に昇格したのだ。あれほど煙たがっていたのに。

「もう限界か」

「いえ、まだ弱音なんて吐いてられません。警部たちは自分より長い時間人口管理班にいるんですからね」

「なんの面白みもない毎日なんてみんな味わってるだろ。社会に出て来たものは毎日ほぼ決まったルーティンを繰り返してる。それと変わらねえとだろ。仕事ってのは楽しくなんかねえ、ただ自分が生きるためにやってる、それ以外に何を期待する?」

「そうですよね。警部も同じ気持ちですか」

「まあな」

警部の目はなぜか悲しい目をしていた。

酒の入った今なら派閥のことを聞けると思ったが止めた。自分が傷口をほじくり返そうとしているのがわかったからだ。

「警部、今日ぐらいゆっくりしませんか。大きな仕事が片付いた祝いで」

「そうだな」

私はそう言って冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

「おい、小島。お前も付き合え」

「はいよ」

「今日はとことん飲むぞ」

私たちは互いの缶を酌み交わした。

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