派閥
新年明けましておめでとうございます。いつもご拝読くださりありがとうございます。今年も変わらず粉骨砕身して執筆を行って参りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。(まあ今年投稿する分の執筆は終わっているんですけどね…)
不穏な空気漂う、居心地の悪い晩餐会は一時間足らずで御開きとなった。
島津警部が明日は八時にロビーで集合と言い残したため、それ以上そこに居座る意味がなくなったのだ。
最後まで残っていたのは我々関東の三人と近畿の赤井警部の計四人だけだった。
私はこの人口管理班に配属されてまだ日が浅いので知らないのだが、もしかして警部たちは過去にも同じような共同操作を行ってその時にこんな疎遠の仲になってしまったのだろうかと、赤井警部に相談しようと思ったのだが、なんとなく過去の詮索はよくないと思い、踏みとどまった。
結局赤井警部よりも先に我々三人は退室した。
別れる時も原警部と赤井警部は一言も話さなかった。
鍵の管理は下っ端の自分の役目だ。
私は二人が部屋の前で立ち止まる前に素早く二人を抜き、先に部屋の扉を開けた。
開けると、すでに部屋には布団が敷かれていた。
部屋が広いため、三人の布団は等間隔に隙間が空いていたが、それでも同じ部屋で三人仲良く寝ることに変わりはなかった。
きっと馬場警部補ならこの状況を喜ぶかもしれないが、私は全く気が休まらない。
「はぁ、さっさと寝るか」
「明日は八時集合、まだ十時過ぎっすよ」
「寝れる時に寝るんだよ。警察官は体力が肝心だからな」
原警部は入り口側の布団に入り込んだ。
「そういうもんですか。小島さんは?」
「俺はもう少し起きて、飲み直す。井伊お前もどうだ?」
「付き合います」
私と小島さんは窓辺に置かれている椅子に座り、晩酌を交わした。
「あ、電気消しましょうか」
「構わん。お前らもほどほどにしとけよ。二日酔いで頭痛えとかほざいたら承知しねえからな」
「はい」
小島さんは冷蔵庫からさっきコンビニで買ったビールの缶二つを取り出し、一本は私に手渡してくれた。
いつも怒鳴っていて怖い先輩と思っていたのだが、なんだか今は優しさがあった。悪態をついているのは仕事の時だけ。これがプライベートの姿なのかもしれないと思った。普通逆じゃないかと思ってしまうのは無粋か。
「慣れねえだろ」
「はい。なんかみんなピリピリしてませんか」
「そうだな。俺も新人の頃はなんでこんな警部たちがピリピリしてるのかわからなかった」
「やっぱり各地方の警部たちの仲が悪いってことですか」
「そうだな、んで、それに影響されて俺たち部下もあまり互いに仲良くしないようにしてるってわけだ。特に意味もなくな」
「一体警部たちの間で何があったんでしょうか?」
私は小さく一口ビールを飲んだ。
小島警部補は大きな一杯を飲み終えた。
「教えておこう」
「知ってるんですか」
私はビール缶を口元に持っていくのをやめて、真剣に小島警部補の話に耳を傾けた。
「ああ。実はな、俺たち人口管理班の中には派閥が二つあるんだ」
「派閥…ですか」
「ああ。一つは他の警察官とある一定の関わりを持つ主義。もう一つは共同捜査などに駆り出されない限り、一切の関わりを拒絶する主義だ」
「私たちは関わりを持つ主義ですか」
「ああ、俺たちは一定の情報を警察内部と共有しているが、関わりを閉ざしている側は情報を他の部署から求めないし、共有もしない。警察官の一員でありながら、完全に他とは独立した組織ってことだな」
「我々も隔離された組織みたいなもんですが、それ以上ということですか。それで、その…割合は」
「閉ざしている側の方が若干多い。まずそのリーダーが人口管理班のトップの九州地区。それと近畿地方と中部地方だ」
「そして警察官との共存を認めているのが、関東、東北、中国・四国の人たちですか」
「ああ。人数的には五分五分だが、何しろあっちには人口管理班のトップがいるからな。あっちが本家で、こっちが分家みたいなもんだ」
「それでそのなんで相手側の方はそんなに排他的なんですか」
「恨みがあるから、だろ」
「でも、それは…」
「ま、それ以上はわかんねえ」
私の言葉を遮って小島警部補はそう言って、一気に残りを飲み干した。
「悪いな…お前らにとっては傍迷惑な話だような」
「え…」
話がひと段落したと思い、缶ビールを飲もうとした手を思わず止めた。
傍若無人な小島警部補から一番似つかわしくない言葉が発せられた。
「無理に俺たちに合わせなくてもいいんだぞ。一蓮托生なんて嫌だろう」
小島警部補はそれ以上言わなかったが、何となく言いたいことはわかった気がした。




