窮屈
「まさか三人同じ部屋とは…」
「寝る時までお前らの顔を見る羽目になるとは」
「ああ〜くそ!」
私たちの宿泊先は事故現場近くの宿だった。
てっきりビジネスホテルでの宿泊を予想していたのだが、事故現場からビジネスホテルがある都会までは時間がかかるということで、この宿に泊まることになった。
大きくはないが日本らしい木造建築の建物、部屋も畳に座椅子と日本らしさが伺える。
浴場も完備されており、朝食と夕食付き。
正直、旅行先での宿泊なら十分だろう。
しかし我々はあくまで仕事できている。
仕事中もピリピリとしていて居心地が悪かったのに、仕事が終わってからもこの雰囲気じゃ正直気が休まらない。
このまま何日もここで寝泊まりするのであれば、身がもたないだろう。せめて部屋を別々にしてほしいものだ。
一人になりたいと言いつつも、仲良く三人頭を抱え、三人仲良く大浴場で汚れを洗い流してきた。
「ビール、飲んでもいいっすか?」
「ほどほどにしとけよ、明日も仕事だ」
浴衣姿の二人は拝見したことがなかったが、やはりブレザーを脱いでも刑事らしさは抜けていない。
「もうすぐ夕食ですよ」
「あいつらと一緒だろ。正直あいつらとは会いたくないもんだぜ」
そう、この宿には人口管理班捜索隊の全員が止まっている。というのも事前に赤井警部がこの宿を人数分取っておいてくれたらしい。本当に気が利いて泣けてくる。
「今何時だ、井伊」
「六時五十分過ぎですね」
「夕食は七時からだよな」
「はい。それと、ついさっき本庁の佐竹先輩から連絡が入って今日見つけた行方不明者のうち四人がうちの管轄だったそうで、遺体が届き次第死亡確認に向かうと」
「そうか。んじゃあ残りは八人だな」
「はい。あとは近畿地方から五人、中国・四国地方から二人、それと九州地方から一人の計十六人です」
「そうか。明日明後日には全員見つかるといいが…」
「んま、今日の仕事は終わりでっさ、ご飯にしましょう」
私たち三人は夕食が用意されている小さな宴会場へ向かった。
すでに料理が縦二列、互いに向かい合うように用意されていて、席にはすでに九州地方の島津警部と近畿地方の赤井警部と籾井警部補、それに東北地方の片倉警部がいた。
「どうも、お疲れ様です」
二人は無言で席につく中、私はしっかりと挨拶をして、小島警部補の隣の席に座った。
料理は味噌汁のお椀に、空のお茶碗。これはきっと後で従業員さんがよそってくれるのだろう。他には山菜の天ぷらや煮物、それに焼き魚だった。加えて小さな鍋も用意されていた。
皆終始無言だった。いやそれ以上にほとんどの人が目も合わせない。気まずい。
「あ、待たせちゃってすいません。警部を連れてくるのに手間取っちゃって」
そう言って入ってきたのは長宗我部警部だった。場を和ませようと必死なのが伺える。
彼に連れられて、いやいやそうに十河警部も入ってきて、私たちの正面に座った。
少ししてからまるでどこかのヤクザ一家のようにガタイのいい男三人が入ってきて、私の隣に座った。
「あんたが井伊巡査か。よろしくな」
「あ、はあ」
「俺は森だ。隣は佐久間さんと柴田警部だ」
一体どこのヤクザもんかと見間違えるような風貌のこの三人は中部地方から派遣された人たちだろう。
柴田警部は人口管理班本部で話しているのを見た。
小島さんや十河警部並みの巨漢だと思っていたが、彼の部下も同様だった。
佐久間という人は柴田警部よりは背が小さいため、横に広いように見え、関取のような印象だ。
私に話しかけけきた森さんは人当たりは他の二人より良さそうだが、筋肉は原警部並みで、頭は短髪、それにサングラスとアニメに出てくる借金取りのような人で、正直あまり接したくない。
「さて、全員揃ったところでいただくとするか」
島津警部の一言で、全員いただきますも言わず、静かに今日の夕食を嗜んだ。これほど胃が引き締まる食事会は初めてだった。




